ラピュータ人の科学みたいにならなきゃよいが…
2025年9月7日 5時09分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250907/k10014915391000.html
温暖化対策の一環として、二酸化炭素を資源に転換するなどして燃料などを生成する「人工光合成」を早期に実用化しようと、環境省は2040年には人工光合成による原料の量産化を目指すとする工程表を公表しました。
「人工光合成」は、太陽の光をエネルギーとして利用し、水や二酸化炭素から燃料などを生成する技術です。
化石燃料を使わないことや、温室効果ガスである二酸化炭素を資源に転換することから、温暖化対策につながると期待されています。
国内でも研究や開発が進められる中、環境省は早期に実用化し産業として普及させる道筋を示した工程表をまとめました。
工程表では、2030年に一部の技術の先行利用を始め、2040年には燃料などの原料を量産化させるとしています。
環境省によりますと、「人工光合成」によって最終製品として二酸化炭素の排出が少ない航空機の代替燃料の「SAF」や、肥料などを作ることが想定されています。
一方、実用化に向けては、コストがかかることが課題で、環境省は、来年度予算の概算要求で、設備導入にかかる費用の補助などとしておよそ8億円を計上しました。
浅尾環境大臣は「人工光合成は脱炭素社会を築く強力な柱であり、日本の技術力を生かした新産業の創出や国際競争力の強化にも直結する。目標の前倒しも視野に環境省が先頭に立って、施策を進めていきたい」と話していました。
【Q&A】「人工光合成」とは?
Q.「人工光合成」とはそもそも何?
A.植物の光合成は「太陽光」をエネルギーとして「二酸化炭素」と「水」からデンプンなどの有機物を作ります。
「人工光合成」は植物の光合成をまねて太陽光をエネルギーとして利用し、二酸化炭素や水から燃料などを生成する技術です。
さらに工業的なプロセスを加えることで、別の最終製品を作ることができるとされています。
Q.「人工光合成」は何が期待されている?
A.地球温暖化対策です。
「人工光合成」では、例えば工場や発電所から排出される二酸化炭素などを「資源」として活用することも想定されています。
二酸化炭素は温室効果ガスのひとつなので、資源として活用することで大気中の二酸化炭素が削減されれば、温暖化対策につながると期待されています。
Q.現状はどのような段階にあるのか?
A.環境省によりますと、まだ研究や開発段階の技術が多いといいます。
環境省は、今回の工程表を元に普及を後押しするとしています。
コスト面の課題などがある中で、日本がどれだけ早く実用化できるか世界的に注目されているとしています。
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(関連記事)
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(№669 2025年9月7日)
「光合成」水分子から酸素分子が作り出されるプロセス観測成功
返信削除2024年2月1日 6時45分
植物などが行う「光合成」で、水の分子から酸素の分子が作り出されるときのプロセスの一部を特殊なX線を使って捉えることに成功したと岡山大学などの研究グループが発表しました。光合成の反応の詳しいメカニズムの解明につながり、クリーンなエネルギー源として注目が集まる「人工光合成」の研究への応用が期待されるとしています。
これは岡山大学の沈建仁教授らの研究グループが国際的な科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。
光合成で水から酸素が作り出される反応が起きる際にはマンガンなどの原子が「ゆがんだイス」のような形に結合した物質が触媒となって水を取り込むことが知られていますが、今回、研究グループは特殊なX線を使ってこの触媒に水の分子が取り込まれる様子を1億分の2秒から1000分の5秒までという極めて短時間で観測しました。
その結果、光を当ててから100万分の1秒後に触媒の構造が変化し始め、徐々に水の分子を取り込んでいく様子を立体的に捉えることに成功したということです。
太陽光を利用して水と二酸化炭素から水素や酸素を作り出す「人工光合成」の研究開発はクリーンなエネルギー源として世界で注目されていますが、研究グループでは今回の成果は「人工光合成」の触媒の開発に貢献することが期待されるとしています。
沈教授は「5年間かけてやっとたどりついた研究成果だ。今後は最後のステップである酸素が生成されるメカニズムを解明していきたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240201/k10014342461000.html
光合成にまつわる100年以上の「謎」、水から酸素ができる瞬間の観察に成功…岡山大など研究チーム
削除2024/02/01 01:00
植物の光合成のうち解明が最も難しかった、水から酸素ができる反応の一端を捉えることに成功したと、岡山大などの研究チームが発表した。X線自由電子レーザー施設「 SACLAサクラ 」(兵庫県佐用町)の強力なX線をごく短時間照射し、分子の動きを連続的に観察した。人工光合成の実現に向けた一歩となる成果で、論文は1日、科学誌ネイチャーに掲載される。
研究内容について発表する沈教授(岡山市北区で)
光合成は植物が光のエネルギーを利用し、水と二酸化炭素から酸素と炭水化物を作る化学反応。100年以上研究されているが、水が分解されて酸素ができるメカニズムは不明だった。
岡山大の 沈建仁しんけんじん 教授(生化学)らは、植物の葉にある「PS2」というたんぱく質の複合体が、水を分解する反応の触媒となっていることに着目。PS2の結晶を作って解析し、複合体の内部にあるマンガンとカルシウム、酸素の原子からできた「ゆがんだイス」のような形の分子が反応の中心となっていることを突き止め、2011年に発表していた。
今回はPS2の結晶に光を当てて光合成の反応を開始させた後、100兆分の1秒という極めて短い時間、X線を照射して分子の動きをコマ送りで観察した。
すると光を当てた100万分の1秒後、イスの角の部分にあるカルシウムに水分子が結合。5000分の1秒後に水分子が消えて酸素原子が出現し、200分の1秒後には酸素原子がイスの内側へ移動していた。この間、イスと周囲を取り巻くたんぱく質は柔軟に形を変え、反応を支えていることもわかった。
沈教授は「今後は酸素が分子となって外へ出て行く過程を突き止めたい」と話す。
天尾豊・大阪公立大教授(生体触媒化学)の話 「水が分解されて酸素ができる機構の解明に向けた大きな前進だ。今後、水分解機構の全容が解明できることを期待したい」
https://www.yomiuri.co.jp/science/20240131-OYT1T50233/
https://koibito2.blogspot.com/2014/07/blog-post.html?showComment=1706738375343#c3307615202349390443
藻を培養 世界最大規模の施設がマレーシアに完成 日本企業運営
返信削除2023年4月4日 18時49分
気候変動や食料問題などの解決に向けて、資源として活用できる藻を培養する世界最大規模の施設が、日本企業の運営のもと、マレーシアで完成しました。今後、藻を使った燃料やプラスチックなどの生産の商業化を目指し、研究を進めることになりました。
藻の培養施設はマレーシアのボルネオ島につくられ、経済産業省が所管するNEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託を受けて、日本のバイオ企業が運営します。
4日、現地に関係者およそ70人が集まり、テープカットを行って施設の開所を祝いました。
藻は光合成の際に二酸化炭素を吸収するため、脱炭素化への貢献が期待されていて、この施設では、隣にある石炭火力発電所から排出される二酸化炭素をパイプを通して運び、藻に供給します。
施設では、年間およそ350トンの藻を生産することで、年間およそ700トンの二酸化炭素を吸収できるとしています。
その上で、藻を使って食料や飼料、それに燃料やプラスチックなどもつくる計画です。
バイオ企業は今後の商業化を目指して研究を進めることにしていて、生産コストを下げられるかが今後の課題となります。
バイオ企業の藤田朋宏CEO=最高経営責任者は「2030年までに2000ヘクタールの施設を完成させ、世界で初めて藻で燃料などをつくるビジネスを成立させたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230404/k10014028841000.html
https://koibito2.blogspot.com/2014/07/blog-post.html?showComment=1680622548923#c8430837148160826854
藻を活用したバイオ燃料の開発で連携
返信削除2019年2月20日 20時48分
ミドリムシの培養技術を手がける東京のベンチャー企業、ユーグレナと、自動車部品大手のデンソーは、藻を活用したバイオ燃料の開発などで提携すると発表しました。
発表によりますと、両社は、ミドリムシなど藻に関する研究の成果を持ち寄って、藻を活用したバイオ燃料の事業化などを目指し、提携することで合意しました。
ユーグレナは、藻の一種のミドリムシを絞った油と使用済みの食用油を原料に、航空機や車で使用できるバイオ燃料を生産しています。
今後、藻を使ったバイオ燃料を事業化するには、大規模な生産設備と効率的な工場の運営といったノウハウが必要となることから、すでにバイオ燃料の研究開発に取り組んでいるデンソーと提携することになったということです。
藻を使ったバイオ燃料は、藻の生育のスピードが速いため、ほかの植物由来のバイオ燃料と比べると生産効率が高く、次世代の燃料として注目を集めています。
両社は、2025年に年間25万キロリットルの量産化を実現させ、現在1リットル当たり1万円もかかるコストを100円程度にまで引き下げたいとしています。
ユーグレナの出雲充社長は「最高のパートナーと組むことができたので、環境にやさしいバイオ燃料を必ず実用化したい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190220/k10011821931000.html
https://koibito2.blogspot.com/2014/07/blog-post.html?showComment=1550678332213#c7411085836734662947
[リサーチフロント]今月は「人工光合成」…水に太陽光 水素を生産
返信削除2017年4月6日15時0分
光触媒で夢のエネルギー
成果が次々と生まれている最先端の研究領域は「リサーチフロント」と呼ばれる。新シリーズでは、世界の研究動向の分析データなどを手がかりに、注目される研究領域の現状と展望を探っていく。今月は、燃料電池などの次世代エネルギー源として期待される水素を、水から作り出す「人工光合成」の挑戦に目を向ける。
夢
植物は太陽光のエネルギーを使い、水と二酸化炭素から有機物を作る「光合成」を行っている。科学者らは「同じように太陽光を使って、水や二酸化炭素から水素や有機物を作ろう」と挑んできた。エネルギー・資源問題の解決につながる「人工光合成」の夢だ。
その実現に向け、光触媒の開発が進んでいる。光触媒は、光のエネルギーを化学的なエネルギーに変える働きをもった物質だ。汚れがつきにくいタイルなどに使われている光触媒は、この化学エネルギーで汚れ物質を分解する。人工光合成では、汚れ物質の代わりに水を分解する。
壁
光触媒が光を吸収すると、内部の電子が、通常の低エネルギー状態から、高エネルギー状態へ持ち上げられる。すると、近くにある別の物質との間で電子がやり取りされて、化学反応が起きる。これが、光エネルギーが化学エネルギーに変わるということだ。水の分解では、高エネルギーの電子が水素イオンに渡されて水素が発生する。光触媒は、失った分の電子を水分子から奪って補充し、その時に酸素ができる。
この反応が起きるためには、電子が持ち上げられる前後のエネルギーに条件がある。井戸に例えると「少なくとも深さ2メートルから地上1メートルまでくみ上げる」といった条件だ。始めが浅すぎても、終わりが低すぎてもいけない。多くの光触媒は、いわば地下深くに水面があり、十分な高さまでくみ上げるには大きなパワーが要る。このため、エネルギーの高い紫外線が必要だった。実用化には、紫外線よりも太陽光に多く含まれるがエネルギーの低い、可視光の利用が欠かせない。
突破口
首都大学東京の井上晴夫特任教授は「日本勢が主導し、21世紀に入り急進展した。浴びた太陽光のうち何%が化学エネルギーになったかを示す『変換効率』は、植物(1%以下)を超えた」と語る。有力な方法の一つは、2段階で電子を持ち上げる仕組み。持ち上げる前後のエネルギーの高さが部分的に重なる2種類の光触媒を、連動させる。
堂免どうめん一成・東京大教授らは、2種類の光触媒材料を導線で結んだ「光電極」というシステムで、変換効率を約3%に伸ばした。2種類の光触媒の粒子をシートに固定したものも開発し、変換効率は1・1%だが、光電極より低コストで実用化が見込まれる。堂免教授らが進める経済産業省などのプロジェクトは、変換効率を2021年度に10%まで高める目標を掲げる。
展望
光電極やシート以外にも、太陽電池を組み合わせるなど、様々な技術が模索されている。単独の光触媒でも可視光で水を分解できるよう、電子のエネルギーの高さを巧みに制御する研究も進められている。
水素より付加価値の高い物質を作る挑戦も進む。産業技術総合研究所(茨城県)は、化学薬品となる過酸化水素を水から作る光触媒を開発した。民間の豊田中央研究所(愛知県)は、二酸化炭素と水から有機物のギ酸を作り、変換効率4・6%を達成。森川健志シニアフェローは「メタノールなど燃料となる物質の合成へ発展させたい」と意気込む。
人工光合成の実用化には、変換効率だけでなく、経済性、装置を作る際のエネルギー消費なども大きな要因となる。井上特任教授は「人工光合成がエネルギーの基盤になるのは2050年が目標だ。それに向かって、今は多様な基礎研究を展開し、人材を育てる時期。技術を絞り込んで推進するには、まだ早い」と話す。
研究盛んな注目分野
光触媒や人工光合成の研究の活発さは、文部科学省科学技術・学術政策研究所の「サイエンスマップ」からうかがえる。
マップは、様々な研究の活発さや、研究テーマ同士のつながりなどを「見える化」したもので、米科学情報大手クラリベイト・アナリティクス社の論文データを基に、まとまりのある「研究領域」を特定。関連の強い領域同士が近くなるように描いている。左上の方に生命科学、右下の方に物理学の研究が並ぶ。
引用される頻度が高い重要論文の数で色分けされ、特に多い領域が赤。光触媒を含む「ナノ科学(化学系)」や「遺伝子制御・幹細胞」などの分野で、論文の多い活発な領域が目立つ。昨年公表された最新版マップは2009~14年の論文が分析対象だが、人工光合成の研究について、工藤昭彦・東京理科大教授は「ここ数年、活気はさらに増し、国際会議も多い」と話す。
水を分解して水素を作る光触媒は、もともと藤嶋昭・東京理科大学長らが1967年に発見。世界的には70~80年代に研究ブームが起きた後、低迷期に入ったが、日本では地道な挑戦が続けられてきた。いま盛んに研究されている光触媒は、工藤教授らが見つけた物質が多い。工藤教授は「今後の発展には、実験だけでなく、電子の動きの計測や理論計算など、様々な研究の連携が重要。力のある若手に入ってきてほしい」と話す。
最先端研究は今
「どんな研究が注目されているか」を探る政策研やクラリベイト社の分析データは、行政や研究機関で活用されていますが、進路選択に臨む理系の若者などにとっても興味深い情報ではないかと思います。わくわくするような最先端研究の姿を伝える新シリーズ。来週は、次世代を担う若者へ堂免教授のメッセージをお届けする予定です。(増満浩志、小林史)
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170406-118-OYTPT50188
[リサーチフロント 研究者から]人工光合成…興味ある分野へ進もう 堂免一成さん 63 東京大教授
削除2017年4月13日15時0分
水を分解して水素を作る「人工光合成」の研究を始めたのは、東大大学院の博士課程の時。今でこそ社会に求められる分野ですが、その頃はまだ地球温暖化などが問題になる前で、「単純に面白そう」という理由でこの道に入りました。
水がうまく分解してくれず、同僚や先生たちから「まだやってるの?」と言われた時代が20年ぐらい続きました。でも「絶対にできるはず」と確信していました。同じ思いで研究室に来てくれた仲間や学生がいたのも心強かったですね。
研究の道への入り方は、「宇宙の神秘を探りたい」「社会で必要だから」など、いろんなタイプがあります。化石資源はいつか必ず尽きるので、人工光合成は将来的に間違いなく必要ですが、今後も浮き沈みはあるでしょう。研究者になって後悔したくないなら、自分が一番興味のある分野に進むべきだと思います。
若い人たちには、大学入試を一生懸命やるのと同じくらい、大学の4年間も頑張って、基礎をしっかり身につけてほしい。後で研究する時に役立ちます。そういう学生が増えれば、日本の科学技術力はぐっと上がるはずです。私は、学生時代にもう少し勉強しておけば良かったと、今まで何度も思ってきました。空手ばかりやっていて、あまり講義を聴かなかったので。
研究室は今、私を含めて30人弱。学生には、自分で新しいことを考えさせます。皆、意外と粘り強い。教授の言うことをすぐには聞かないくらい頑固な学生の方が、将来的には大きく飛躍する可能性を秘めていると思います。(聞き手 小林史)
次回は東京理科大の工藤昭彦さんの予定です。
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170413-118-OYTPT50191
https://koibito2.blogspot.com/2014/07/blog-post.html?showComment=1492106093560#c8708853831740207039