2025年10月13日

「五輪、国連、ノーベル賞」



2025年10月5日午後5時59分 NHKニュース
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014941411000

>ことしのノーベル賞受賞者の発表が、6日から始まります。去年は日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が平和賞を受賞していて、日本から2年連続の受賞となるか注目されます。

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2024年10月5日 7時06分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241005/k10014601311000.html

>ことしのノーベル賞受賞者の発表が、週明けの7日から始まります。日本人の受賞はアメリカ国籍を取得した人を含めこれまで28人で、3年ぶりの受賞となるか、注目されます。

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2023年10月2日 6時04分 NHKニュース

ことしのノーベル賞受賞者の発表が2日から始まります。日本人の受賞はアメリカ国籍を取得した人を含めこれまで28人で、2年ぶりの受賞となるか、注目されます。

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

ことしの受賞者の発表は
▽2日が生理学・医学賞
▽3日が物理学賞
▽4日が化学賞
▽5日が文学賞
▽6日が平和賞
▽9日が経済学賞となっています。

日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち2000年以降に受賞した20人はすべて、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞で、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

おととし、物理学賞に輝いた真鍋淑郎さん以来、2年ぶりに日本人の受賞があるのか注目されます。

ノーベル賞の授賞式や晩さん会はことし12月にスウェーデンのストックホルムで開かれる見通しです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014212651000.html



https://www3.nhk.or.jp/news/word/0002502.html




(書きかけ)





(№614 2023年10月2日)

78 件のコメント:

  1. 研究費配分は「広く浅く」 ノーベル級「選択と集中」より成果…筑波・弘前大チーム
    2023/09/23 05:00

     ノーベル賞級の研究成果を上げるには、少額の研究費を多くの研究者に配る方がいい――。そんな分析結果を、筑波大と弘前大のチームがまとめた。研究費の配分で「選択と集中」が進むなか、広く浅く支援する重要性を指摘している。

     チームは、政府が1991年以降、生命科学・医学分野に配分した科学研究費助成事業(科研費)約18万件を対象に、研究費と論文数などとの関係を調べた。

     その結果、500万円以下の少額研究費を多くの研究者に配る方が、高額な研究費を限られた研究者に配分するよりも、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製などノーベル賞級の研究成果を効率良く出せていた。一方、5000万円以上の高額になると、画期的な成果の論文数は科研費の受給前よりも減ったという。

     筑波大の大庭良介准教授(科学計量学)は「過去の実績にとらわれず、様々な研究者に資金を与えることが望ましい」と話している。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20230923-OYT1T50071/

    https://koibito2.blogspot.com/2018/03/impact.html?showComment=1695416988481#c7588819343099689186

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  2. ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら2人 ワクチン開発に貢献
    2023年10月2日 18時54分

    ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をした、ハンガリー出身でアメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。

    2023年のノーベル生理学・医学賞の受賞者は、日本時間の2日にスウェーデンの首都・ストックホルムで発表されました。

    受賞者の発表会見の内容について随時更新でお伝えします。

    【ライブ配信】受賞者 発表会見のようす

    ノーベル賞2023 関連サイト

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は
    ▽2日が生理学・医学賞
    ▽3日が物理学賞
    ▽4日が化学賞
    ▽5日が文学賞
    ▽6日が平和賞
    ▽9日が経済学賞となっています。

    日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち2000年以降に受賞した20人はすべて、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞で、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    生理学・医学賞 注目の研究者は

    坂口志文さん(左) 岸本忠三さん(右)

    毎年、注目されているのは、日本に有力な研究者が多い免疫学の分野で、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文さんや、免疫の働きを強める「インターロイキン6」というたんぱく質を発見した大阪大学特任教授の岸本忠三さんがこれまでに国際的な賞を受賞するなどしています。

    遠藤章さん(左)  満屋裕明さん(右)

    また、病気の治療に貢献している研究者の中では、青カビが作り出す「スタチン」という物質が動脈硬化の原因となる血液の中のコレステロールを下げることを発見し、治療薬の開発に貢献した東京農工大学特別栄誉教授の遠藤章さんや、HIVの増殖を抑える化合物を発見し、後天性免疫不全症候群の世界初の治療薬を開発した国立国際医療研究センター研究所所長の満屋裕明さんが注目されています。

    竹市雅俊さん(左) 森和俊さん(中央) 柳沢正史さん(右)

    このほかの分野では、細胞どうしを結び付けて臓器などを形づくる分子、「カドヘリン」を発見した理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊さんや、「小胞体」と呼ばれる細胞の器官が、不良品のたんぱく質を修復したり分解したりする仕組みを解明した京都大学教授の森和俊さんも国際的な学術賞を受賞していて注目されています。

    このほか、脳で分泌される「オレキシン」という神経からの信号を伝える物質が睡眠の制御に関わっていることを発見した筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構機構長の柳沢正史さんは、2023年9月にイギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として発表しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.html

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    1. ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら…mRNA研究で新型コロナワクチン開発に貢献
      2023/10/02 18:53

      ノーベル生理学・医学賞に決まったカタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏(昨年4月、日本国際賞の授賞式で)

       スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を「メッセンジャーRNA」(mRNA)ワクチンの基盤技術を開発した米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈ると発表した。新型コロナウイルス禍で普及したmRNAワクチンで、多くの人命が救われたことが評価された。

       mRNAをワクチンや難病の治療薬として応用しようとする研究は約30年前からあったが、mRNAを人体に投与すると免疫が攻撃して強い炎症が起きるため、安全性で難点があった。これを解決したのがカリコ氏とワイスマン氏で、2人がペンシルベニア大で研究していた2005年、mRNAの一部の化学物質(ウリジン)を別の化学物質(シュードウリジン)に置き換えると、免疫の攻撃が抑えられることを発見した。

       この研究がmRNAを医薬品化する最初の足がかりとなって独製薬企業ビオンテックや米モデルナなどのバイオ企業が注目し、がんやインフルエンザなどに対するmRNAを使った次世代の創薬研究が盛んになった。

       20年初頭、新型コロナの感染が世界に拡大すると、米ファイザー、モデルナがmRNAワクチンの開発を進め、同年12月に世界で初めて実用化した。

       授賞式は、アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日にストックホルムで開かれる。

      mRNA  細胞が合成するたんぱく質の設計図にあたる分子。塩基という4種類の化合物がひものように連なった構造で、たんぱく質の組み立てに必要な情報を細胞内の小器官に運ぶ伝令役(メッセンジャー)を果たす。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20220928-OYT1T50177/

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    2. ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発貢献
      2023年10月2日 21時14分

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をしたハンガリー出身で、アメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。

      スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしのノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした
      ▽ハンガリー出身で、アメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と
      ▽同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人を選んだと発表しました。

      カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発しました。mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。

      これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすればワクチンとして使うことができると期待されていましたが、mRNAは、ヒトに投与すると体内で炎症が引き起こされるため、医薬品に使うのは難しいのが課題でした。

      カリコ氏らはmRNAを構成する物質を別の物質に置き換えることで炎症反応が抑えられることを発見し、2005年に発表しました。

      さらに、置き換えられたmRNAを使うと目的とするたんぱく質が劇的に効率よく作られることを発見し、医薬品として扱う上での大きな壁を取り除きました。この技術をもとに製薬会社がワクチンの開発に乗り出し、新型コロナのパンデミックでは記録的な速さでワクチンの開発に成功しました。この技術の柔軟性はほかの感染症のワクチンの開発にも道を開き、今後、ガンの治療などへの応用が期待されています。

      選考委員会「新型コロナワクチン開発に不可欠だった」

      ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について「2人の発見は、2020年初頭に始まったパンデミックで新型コロナウイルスに対して効果的なmRNAワクチンの開発に不可欠だった」としています。

      その上で「mRNAが免疫システムにどう相互に作用するかについて私たちの理解を根本から変えた画期的な発見を通じて、2人は、現代における人類の健康に対する最大の脅威の1つだったパンデミックで前例のないスピードのワクチン開発に貢献した」と評価しています。

      また、授賞が決まったことを伝えた際のカリコ氏とワイスマン氏の様子について「2人はとても喜んでいた」と明らかにしました。

      このうちカリコ氏は「とても感激した」と話したということです。

      ワイスマン氏には選考委員会が公式発表する数分前に連絡が取れたということで「彼は感激していて、非常に感謝していた」と述べました。

      安全性についての質問も

      記者会見では、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの安全性についての質問も出されました。

      これに対してノーベル賞の選考委員会は「mRNAワクチンの接種は始まってまだまもないが、すでにのべ130億人が接種を受けている。副反応も限定的で大きな懸念とは考えていない。有害事象として特に若い男性で心筋炎が出ることがあるが、ほとんどの場合は軽度で、特に長期的な影響なく解消するということだ。コロナに感染する方が長期的な健康への影響がある」と述べました。

      また、ワクチンに反対する動きがあるなかで、科学界や医療界はどう対応し、どう説明すべきか問われたのに対しては「このワクチンがどのように機能するのか、引き続き仕組みを説明していく必要がある。新型コロナの場合、mRNAワクチンの開発が大きなニーズを受けて、加速したのは事実だが、臨床試験が短い期間で行われたからといって安全性の確認が省略されたわけではない。臨床試験がどのように行われたのかや、数十年に及ぶ基礎研究が行われてきたことについて伝えていくべきだと思う。ノーベル賞の受賞によってこうした事実に光が当たることを願う」と説明しました。

      所属するペンシルベニア大「画期的な発見」

      カリコ氏とワイスマン氏が所属するペンシルベニア大学は、授賞発表の直後にSNSにコメントを投稿し「2人を誇りに思う。画期的な発見は世界的なパンデミックという難題を克服しただけでなく、今後、数十年にわたり他の多くの病気の治療と予防に大きな影響を与えるだろう」と祝福しました。

      SNSには事前に撮影されたとみられる2人のインタビュー動画も投稿されていて、カリコ氏は「母が、『毎年10月にはあなたがノーベル賞をとるのではないかと思ってラジオを聞いているの。ずっと努力しているから』と言うので、わたしは『たくさんの科学者が大変な努力を続けているのよ』と説明したものです」と笑顔で語っています。

      ワイスマン氏は「ノーベル賞は科学者にとって最も重要な賞で、大変な名誉です。私たち2人が力を合わせなければ、この研究は達成しえなかったと思います。これがとても重要なことだと思います」と話しています。

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    3. 《研究者から喜びの声》

      審良特任教授「20年かけて結実させた」

      mRNAの研究には日本人の研究者も関わっていて、大阪大学の審良静男特任教授は、カリコ氏らが2008年に発表した論文に共著者のひとりとして名を連ねています。

      mRNAは体内に入ると、炎症が引き起こされますが、その理由は病原体が体内に侵入したときに最初に働く「自然免疫」が活性化するためだと考えられています。

      自然免疫の研究の第一人者として知られる審良特任教授はカリコ氏らとともにmRNAを構成する物質の1つ、「ウリジン」を、別の物質「シュードウリジン」に置き換えた場合の炎症の程度を調べた論文を発表しました。

      この中で、マウスを使った実験で、特定の「シュードウリジン」に置き換えたmRNAを投与した場合、炎症反応が抑えられ、目的とするたんぱく質が作られる効率も通常のmRNAを投与した場合の10倍以上になることを明らかにしました。

      かつて関わった研究が、カリコ氏らの受賞につながったことについて、審良特任教授は「カリコ氏の生理学・医学賞の受賞を喜ばしく思います。mRNAをワクチンに使うという発想は免疫学の立場からあったものですが、さまざまな事情から容易には開発困難と思われていました。多くの研究者が挫折する中で、カリコ氏は地道に基礎データを積み上げて、20年をかけて新型コロナウイルスワクチンという形に結実させました。カリコ氏と共同研究者の信念と粘り強い姿勢は、多くの基礎生命科学者に勇気を与えました。ともに喜びたいと思います」とコメントしています。

      位高教授「非常に勇気のある人」

      カリコ氏が選ばれたことについて、mRNAを使った薬の開発の研究者で、15年にわたって交流を深めてきた東京医科歯科大学の位高啓史教授は「mRNAが薬になると本気で考える人が世界中でほとんどいなかったときから、その可能性を信じて研究を手探りで進めてこられたので、非常に勇気のある方だと思っています」と話し、喜びをあらわにしていました。

      また、カリコ氏の人柄については「どなたとも先入観なく接することができる気さくな方です。学会の会場でお会いしたときに、実験のノウハウなどを快くオープンに教えていただいたことをよく覚えています。そうした姿勢が最終的にはカリコ先生の仕事の成果につながったのだと思います」と話していました。

      そして、今後、与える影響については、「mRNAは感染症のワクチンとして非常に広く知られる存在になりましたが、今後はほかの治療薬としても応用が大きく広がると思います。さらに多くの研究者や企業がこの分野に入ってくることを期待したい」と話していました。

      山中伸弥さん「多くの人が救われた」

      カリコ氏らが受賞したことについて京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥名誉所長はSNSで「カタリン・カリコ先生、ご受賞おめでとうございます。対談の機会をいただきました際に、非常に謙虚な姿勢で粘り強く研究を進めてこられたことをお聞きし、心から尊敬の念を抱きました。コロナ禍という世の中が危機感に覆われた中、mRNAワクチン技術という画期的な発明により多くの人が救われました。そのご業績に心から敬意を表します」とコメントしています。

      《研究内容は》

      mRNAワクチンとは

      mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報を伝達する物質で、体内でたんぱく質を作るための設計図にあたる情報を含むmRNAを使ったワクチンです。

      新型コロナの感染拡大以降、広く接種されているファイザーやモデルナの新型コロナワクチンはmRNAワクチンで、スパイクたんぱく質と呼ばれる、ウイルスの表面にある突起を合成するmRNAが含まれています。

      mRNAの情報をもとに体内で新型コロナと同じスパイクたんぱく質が作られ、このたんぱく質に対して免疫が働き、抗体が作られます。

      mRNAワクチンはウイルスの遺伝情報があれば製造できるため素早い対応が可能で、新型コロナのパンデミックでは1年足らずで開発に成功し、変異ウイルスに対応したワクチンも開発され、パンデミック対策の最も重要な要素の1つとなりました。

      すでにほかの感染症に対応したmRNAワクチンの開発も進んでいるほか、がんワクチンなど新たな医薬品としての活用も進むと期待されています。

      源流の研究に日本人も

      mRNAワクチンは、基礎的な研究が積み重なって開発されていて、源流となる研究には日本人も名前を連ねています。

      古市泰宏さん

      去年亡くなった古市泰宏さんは1970年代にmRNAに特徴的に見られる「キャップ」という構造を発見しました。

      古市さんは蚕に感染するウイルスの研究を行う中で、mRNAの端に特殊な構造があることに気づき、帽子をかぶっているような形をしているように見えることから1975年に発表した論文で「キャップ構造」と名付けました。

      キャップ構造はmRNAに含まれる遺伝情報をもとに、たんぱく質が作られるのに欠かせないもので、mRNAワクチンにつながる源流の研究として位置づけられています。

      生前、古市さんは「目先の利益や応用を考えずに、物事のことわりを知りたいと研究していたことが、ワクチンに応用された。新型コロナのワクチンを接種したときには『この中にキャップが入っているんだ。みんなキャップのついたmRNAを打つんだ』と不思議な縁を感じました。効果が高いワクチンだということなので誇らしい気がしました」と話していました。

      《発表日程》

      ノーベル賞 ことしの発表日程は

      ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

      ことしの受賞者の発表は
      ▽2日が生理学・医学賞
      ▽3日が物理学賞
      ▽4日が化学賞
      ▽5日が文学賞
      ▽6日が平和賞
      ▽9日が経済学賞となっています。

      日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち2000年以降に受賞した20人はすべて、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞で、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

      一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.html

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    4. ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発貢献
      2023年10月2日 22時10分

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をしたハンガリー出身で、アメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。

      スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしのノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした
      ▽ハンガリー出身で、アメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と
      ▽同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人を選んだと発表しました。

      カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発しました。mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。

      これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすればワクチンとして使うことができると期待されていましたが、mRNAは、ヒトに投与すると体内で炎症が引き起こされるため、医薬品に使うのは難しいのが課題でした。

      カリコ氏らはmRNAを構成する物質を別の物質に置き換えることで炎症反応が抑えられることを発見し、2005年に発表しました。

      さらに、置き換えられたmRNAを使うと目的とするたんぱく質が劇的に効率よく作られることを発見し、医薬品として扱う上での大きな壁を取り除きました。この技術をもとに製薬会社がワクチンの開発に乗り出し、新型コロナのパンデミックでは記録的な速さでワクチンの開発に成功しました。この技術の柔軟性はほかの感染症のワクチンの開発にも道を開き、今後、ガンの治療などへの応用が期待されています。

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    5. カリコ氏「冗談かと思った」

      受賞が決まったカタリン・カリコ氏は、ノーベル財団との電話インタビューで「私は電話がかかってきたときに寝ていて、受賞が決まったという連絡を夫が受けました。誰かが冗談を言っているのかと思いました」と話していました。

      選考委員会「新型コロナワクチン開発に不可欠だった」

      ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について「2人の発見は、2020年初頭に始まったパンデミックで新型コロナウイルスに対して効果的なmRNAワクチンの開発に不可欠だった」としています。

      その上で「mRNAが免疫システムにどう相互に作用するかについて私たちの理解を根本から変えた画期的な発見を通じて、2人は、現代における人類の健康に対する最大の脅威の1つだったパンデミックで前例のないスピードのワクチン開発に貢献した」と評価しています。

      また、授賞が決まったことを伝えた際のカリコ氏とワイスマン氏の様子について「2人はとても喜んでいた」と明らかにしました。

      このうちカリコ氏は「とても感激した」と話したということです。

      ワイスマン氏には選考委員会が公式発表する数分前に連絡が取れたということで「彼は感激していて、非常に感謝していた」と述べました。

      安全性についての質問も

      記者会見では、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの安全性についての質問も出されました。

      これに対してノーベル賞の選考委員会は「mRNAワクチンの接種は始まってまだまもないが、すでにのべ130億人が接種を受けている。副反応も限定的で大きな懸念とは考えていない。有害事象として特に若い男性で心筋炎が出ることがあるが、ほとんどの場合は軽度で、特に長期的な影響なく解消するということだ。コロナに感染する方が長期的な健康への影響がある」と述べました。

      また、ワクチンに反対する動きがあるなかで、科学界や医療界はどう対応し、どう説明すべきか問われたのに対しては「このワクチンがどのように機能するのか、引き続き仕組みを説明していく必要がある。新型コロナの場合、mRNAワクチンの開発が大きなニーズを受けて、加速したのは事実だが、臨床試験が短い期間で行われたからといって安全性の確認が省略されたわけではない。臨床試験がどのように行われたのかや、数十年に及ぶ基礎研究が行われてきたことについて伝えていくべきだと思う。ノーベル賞の受賞によってこうした事実に光が当たることを願う」と説明しました。

      所属するペンシルベニア大「画期的な発見」

      カリコ氏とワイスマン氏が所属するペンシルベニア大学は、授賞発表の直後にSNSにコメントを投稿し「2人を誇りに思う。画期的な発見は世界的なパンデミックという難題を克服しただけでなく、今後、数十年にわたり他の多くの病気の治療と予防に大きな影響を与えるだろう」と祝福しました。

      SNSには事前に撮影されたとみられる2人のインタビュー動画も投稿されていて、カリコ氏は「母が、『毎年10月にはあなたがノーベル賞をとるのではないかと思ってラジオを聞いているの。ずっと努力しているから』と言うので、わたしは『たくさんの科学者が大変な努力を続けているのよ』と説明したものです」と笑顔で語っています。

      ワイスマン氏は「ノーベル賞は科学者にとって最も重要な賞で、大変な名誉です。私たち2人が力を合わせなければ、この研究は達成しえなかったと思います。これがとても重要なことだと思います」と話しています。

      ワイスマン氏とは

      ドリュー・ワイスマン氏はアメリカ東部マサチューセッツ州生まれです。1987年にボストン大学で免疫学と微生物学の博士号を取得したあと、アメリカのNIH=国立衛生研究所に所属し、感染症研究の第一人者、アンソニー・ファウチ博士のもとでHIV=ヒト免疫不全ウイルスの研究を行いました。

      その後、1997年からペンシルベニア大学に移り、ワクチンや免疫関連の研究を続けていたころにカリコ氏と出会い、2005年、ワクチン開発に道をひらく研究成果を共同で発表しました。

      所属するペンシルベニア大学によりますとワイスマン氏は現在、次のコロナウイルスの流行に備えたワクチンの開発のほか、同僚とともにmRNAの技術を使ったがんの治療薬の開発にも取り組んでいるということです。

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    6. WHOがSNS投稿「彼らの科学への貢献が人命を救った」

      WHO=世界保健機関のテドロス事務局長はカリコ氏とワイスマン氏の受賞が発表されると自身のSNSに「本当におめでとう」と投稿して祝福しました。

      そのうえで「彼らの発見が新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発を可能にした。彼らの科学への貢献が人命を救った」として、2人の功績をたたえました。

      《研究者から喜びの声》

      審良特任教授「地道に追究する姿勢が印象的」
      カリコ氏らが2008年に発表した論文に共著者のひとりとして名を連ねていた大阪大学の審良静男特任教授は、「受賞は当然だと思う。新型コロナのワクチンが開発できたことは人類にとっての大きな貢献だ」と述べました。

      審良特任教授は、当時の論文について「基礎研究としては画期的な成果だと思ったが、その後も長い期間研究を続けワクチンの実用化につながったことはすばらしい。ワクチンの開発は難しく、研究費がかかることなどから途中で頓挫するケースも多い。mRNAワクチンが開発されたというニュースの中で彼女の名前が出て驚いたが、必死になって医療への応用を目指した結果だと思う」と評価しました。

      カリコ氏の研究への姿勢については「彼女は派手なところがなく、自分の知りたいことを地道に追究していく姿勢が印象的だった。今回の発表を機にほかの病気の治療にもmRNAが応用されるなど、研究がさらに進むことを期待している」と話していました。

      位高教授「非常に勇気のある人」

      カリコ氏が選ばれたことについて、mRNAを使った薬の開発の研究者で、15年にわたって交流を深めてきた東京医科歯科大学の位高啓史教授は「mRNAが薬になると本気で考える人が世界中でほとんどいなかったときから、その可能性を信じて研究を手探りで進めてこられたので、非常に勇気のある方だと思っています」と話し、喜びをあらわにしていました。

      また、カリコ氏の人柄については「どなたとも先入観なく接することができる気さくな方です。学会の会場でお会いしたときに、実験のノウハウなどを快くオープンに教えていただいたことをよく覚えています。そうした姿勢が最終的にはカリコ先生の仕事の成果につながったのだと思います」と話していました。

      そして、今後、与える影響については、「mRNAは感染症のワクチンとして非常に広く知られる存在になりましたが、今後はほかの治療薬としても応用が大きく広がると思います。さらに多くの研究者や企業がこの分野に入ってくることを期待したい」と話していました。

      山中伸弥さん「多くの人が救われた」

      京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥名誉所長はSNSで「カタリン・カリコ先生、ご受賞おめでとうございます。対談の機会をいただきました際に、非常に謙虚な姿勢で粘り強く研究を進めてこられたことをお聞きし、心から尊敬の念を抱きました。コロナ禍という世の中が危機感に覆われた中、mRNAワクチン技術という画期的な発明により多くの人が救われました。そのご業績に心から敬意を表します」とコメントしています。

      《研究内容は》

      mRNA 医薬品として使う基礎開発

      カタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏は、人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAを医薬品として使うための基礎となる方法を開発しました。

      mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。

      これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすれば医薬品として使うことができると期待されていましたが、mRNAは、ヒトに投与すると体内で炎症が引き起こされるため、医薬品に使うのは難しいのが課題でした。

      この課題に対応するため、カリコ氏らは2005年の論文で、mRNAをヒトに投与したときの炎症反応を抑える方法を発表しました。

      それが、mRNAを構成する物質の1つ、「ウリジン」を「シュードウリジン」という似た物質に置き換える方法で、医薬品として使うための基礎の確立につながりました。

      mRNAワクチンとは

      mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報を伝達する物質で、体内でたんぱく質を作るための設計図にあたる情報を含むmRNAを使ったワクチンです。

      新型コロナの感染拡大以降、広く接種されているファイザーやモデルナの新型コロナワクチンはmRNAワクチンで、スパイクたんぱく質と呼ばれる、ウイルスの表面にある突起を合成するmRNAが含まれています。

      mRNAの情報をもとに体内で新型コロナと同じスパイクたんぱく質が作られ、このたんぱく質に対して免疫が働き、抗体が作られます。

      mRNAワクチンはウイルスの遺伝情報があれば製造できるため素早い対応が可能で、新型コロナのパンデミックでは1年足らずで開発に成功し、変異ウイルスに対応したワクチンも開発され、パンデミック対策の最も重要な要素の1つとなりました。

      すでにほかの感染症に対応したmRNAワクチンの開発も進んでいるほか、がんワクチンなど新たな医薬品としての活用も進むと期待されています。

      源流の研究に日本人も

      mRNAワクチンは、基礎的な研究が積み重なって開発されていて、源流となる研究には日本人も名前を連ねています。

      古市泰宏さん

      去年亡くなった古市泰宏さんは1970年代にmRNAに特徴的に見られる「キャップ」という構造を発見しました。

      古市さんは蚕に感染するウイルスの研究を行う中で、mRNAの端に特殊な構造があることに気づき、帽子をかぶっているような形をしているように見えることから1975年に発表した論文で「キャップ構造」と名付けました。

      キャップ構造はmRNAに含まれる遺伝情報をもとに、たんぱく質が作られるのに欠かせないもので、mRNAワクチンにつながる源流の研究として位置づけられています。

      生前、古市さんは「目先の利益や応用を考えずに、物事のことわりを知りたいと研究していたことが、ワクチンに応用された。新型コロナのワクチンを接種したときには『この中にキャップが入っているんだ。みんなキャップのついたmRNAを打つんだ』と不思議な縁を感じました。効果が高いワクチンだということなので誇らしい気がしました」と話していました。
      (以下略)
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.html

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    7. カリコ氏「家庭を持つことと科学者でいること 選ぶ必要はない」

      受賞が決まったカタリン・カリコ氏は、ノーベル財団との電話インタビューで「私は電話がかかってきたときに寝ていて、受賞が決まったという連絡は夫が受けました。誰かが冗談を言っているのかと思いました」と話していました。

      また、これまでの研究の道のりを振り返り、「10年ほど前、ペンシルベニア大学から追い出されましたが、夫が私を支えてくれました。私の母は2018年に亡くなりましたが、『あなたがとるかもしれない』とノーベル賞の発表をいつも確認していました。母は『あなたは一生懸命頑張っている』と言ってくれていました。家族は私を信じてくれていて、娘たちも私が懸命に働く姿を見てくれていました」と述べ、周りの支えがあったことを話していました。

      そのうえで「私は女性として、母として、同僚の女性の科学者たちに対し『家庭を持つことと科学者でいることのどちらかを選ぶ必要はない』と伝えています。子どもはあなたをみて、見習います。あなたが子どもの模範になることが重要なのです」と女性の科学者たちを激励しました。

      また「多くの若い人たちは、友人や同僚がどんどん昇進していくのを見て、あきらめてしまいます。しかし、自分をあわれに思っている時間はありません。次に自分に何ができるのかを探すのにエネルギーや時間を費やすべきなのです」と、科学者たちを鼓舞することばを述べました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.html

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    8. ノーベル生理学・医学賞 カリコ氏とワイスマン氏 大学で会見
      2023年10月3日 6時45分

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれた、アメリカの大学の研究者、カタリン・カリコ氏ら2人が記者会見し、「選ばれるとは思っていなかった」などと心境を語りました。

      スウェーデンにあるノーベル賞の選考委員会は2日、ことしのノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした、
      ▽ハンガリー出身で、アメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と、
      ▽同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の、
      2人を選びました。

      これを受け、ペンシルベニア大学では2日、2人が出席して記者会見が行われました。

      この中でカリコ氏は、「1997年、わたしたちはコピー機の前で出会いました。建物も部署も違いましたが、私たちはともに協力し、戦ってきました」と振り返りました。

      ワイスマン氏は「研究資金も得られず、興味を持ってくれる人もいないなか、いつも一緒に研究をしてきました。新型コロナウイルスワクチンの有効性が認められたのは大きな転換点でした。決して諦めずに取り組み続け、いまがあると思います」と話していました。

      2人は、mRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発し、新型コロナのパンデミックでは、記録的な速さでワクチンの開発が行われました。

      ワクチンの開発から短い期間で受賞が決まったことについて、カリコ氏は「私たちは賞のために仕事をしているわけではありません。大切なのは人に役立つものを作り出すことです。だから選ばれるとは思っていませんでした」と述べました。

      また、若い世代が科学を学ぶことの意味について問われると、ワイスマン氏は「社会が前に進むためには科学が必要です。わたしたちは子どもや孫、すべての人たちに、科学こそが世界を進展させるものだと伝える必要がある」と強調していました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231003/k10014213691000.html

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    9. 人体を「薬の工場」にする斬新な手法、がん治療など幅広く応用が広がる…ノーベル生理学・医学賞
      2023/10/03 07:10

       今年のノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスワクチンの主成分となった遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」の研究者が選ばれた。人間の体を「薬の工場」にするという斬新な手法は、がんなど幅広い病気の治療にも応用が広がりつつある。(鬼頭朋子)

       「この大学で素晴らしい出会いがあり、私たちの協力が始まった」

       米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)は、同大のドリュー・ワイスマン教授(64)と受賞決定後の記者会見に出席し、笑顔を見せながら2人の共同研究の始まりを振り返った。

       mRNAは細胞内にある小さな分子で、たんぱく質の「設計図」だ。細胞はmRNAの情報通りにたんぱく質を組み立てる。

       mRNAは1990年代に人工的に合成できるようになった。その時に新しい製薬の発想が生まれた。薬を化学的に合成するのではなく、人工的に作ったmRNAを投与し、細胞に薬になるたんぱく質を作らせるというものだ。ただ、mRNAを人体に投与すると、強い免疫反応が起きるなど課題があった。これを克服したのが2人だった。

       mRNAで薬を作る研究をしていたカリコ氏と、免疫学の専門家だったワイスマン氏。議論や実験を共にする中で、mRNAワクチンのアイデアが自然に生まれたという。

       mRNAの利点は、体に作らせるたんぱく質の設計図がわかれば短期間で作れることだ。新型コロナでは2020年1月、ウイルスの全遺伝情報が公表されると、米モデルナは2日後にワクチンの基本設計を終え、同年12月には実用化。変異株に対応した改良型ワクチンも次々と開発された。

       「心から祝福する。彼らの科学への献身により多くの命を救った」。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は2日、X(旧ツイッター)でコメントを出した。

       ノーベル賞選考委員会によると、新型コロナワクチンはmRNA以外の手法で作ったものも含めて全世界で130億回以上接種され、数百万人の命が救われたとしている。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20231003-OYT1T50041/

      がん 患者に合わせワクチン

       簡単に設計し、合成できる「mRNA医薬」の利点をがんなどの治療に役立てる研究が世界中で進む。

       米モデルナ社などは、mRNAを使ったがんワクチンの開発を目指し、皮膚がん患者を対象とした最終段階の臨床試験中だ。

       がん細胞で起きている遺伝子変異は、患者ごとに微妙に異なる。そこで、モデルナ社は、個々の変異に合わせてmRNAを作って投与することを目指す。

       国内では、東京医科歯科大の 位高いたか 啓史教授(mRNA創薬)らが、「変形性関節症」の進行を抑える治療法の開発に取り組む。

       変形性関節症は、加齢などで軟骨が破壊され、関節の痛みや腫れを引き起こす病気だ。これまで病気を完全に治せる薬はなかった。

       位高教授らは、軟骨を作る際に必要なたんぱく質を設計するmRNAを関節に注入する手法を目指し、実用化に向けた治験の準備を進めている。脳の病気や脊髄損傷を治療する新薬の開発も目指している。位高教授は、2008年頃から学会でカリコ氏と意見交換をしてきたといい、「mRNAを薬として使うことによりこれまで治すことが難しかった病気への新しい治療法が生まれるだろう」と話す。

       新型コロナ以外の感染症のワクチンについても、日本の製薬大手・第一三共が鳥インフルエンザワクチンの開発を進め、長崎大などのグループはマラリアワクチンを研究中だ。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20231003-OYT1T50041/2/

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    10. コロナから世界救った…ノーベル生理学・医学賞、医療現場はワクチンに感謝
      2023/10/03 07:15

       新型コロナウイルス感染症の猛威から世界を救ったワクチン。その早期開発に遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」の研究で大きく貢献したカタリン・カリコ米ペンシルベニア大特任教授(68)らのノーベル生理学・医学賞受賞が2日、決まった。国内の医療機関の現場や研究者らからは、祝福の声が上がった。

      不遇時代をともに乗り越えたカリコさん(右)とワイスマンさん=米ペンシルベニア大提供

       新型コロナウイルスワクチンの接種は、日本国内でも4億回を超えた。東京曳舟病院(東京都墨田区)の三浦邦久副院長は、「ワクチンがなければ、医療 逼迫ひっぱく はより深刻な状況になっていたはずだ」と振り返る。オミクロン株が主流になってからも、ワクチン未接種の患者の方が重症化リスクは高い。三浦さんは「ワクチン接種の効果を日々実感している」と感謝する。

       ワクチンは、感染抑制と社会経済活動の両立にも不可欠だった。岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は、「マスクや手洗いといった対策だけでは社会経済活動を再開できなかっただろう。ワクチンという武器があったからこそ『ウィズコロナ』の道へと歩き出し、普通の生活に戻れた」と述べた。

       カリコさんとゆかりのある研究者からも称賛の声が寄せられた。2012年の同賞受賞者で、対談したことがあるという山中伸弥・京都大教授はX(旧ツイッター)で、「非常に謙虚な姿勢で粘り強く研究を進めてこられたことをお聞きし、心から尊敬の念を抱きました」などと投稿した。

       今回の受賞対象となった05年の論文を審査した経験がある東京大医科学研究所の石井健教授(ワクチン科学)は「当時は、論文を読んでもmRNAワクチンができると予言できた人はいなかった。基礎的に素晴らしい論文は、いつか世の中を変える結果を生むということを見させてもらった」とたたえた。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20231003-OYT1T50009/

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  3. 医科様ワクチンにノベル大賞のハクをつける作業…

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    1. 医科様生物学ノベル大賞、ここに極まれり。

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    2. ウイルスと、免疫と、ワクチン、三大医科様案件の集大成。

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    3. プラス「核酸」「遺伝子」案件もか。

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  4. ことしのノーベル物理学賞 アメリカの大学の研究者ら3人
    2023年10月3日 19時10分

    ことしのノーベル物理学賞に「アト秒」と呼ばれるきわめて短い時間だけ光を出す実験的な手法を開発し、物質を構成する細かな粒子の1つ、「電子」の動きを観測する新たな研究を可能にしたアメリカの大学の研究者など3人が選ばれました。

    受賞者の発表会見の内容について随時更新でお伝えします。

    スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の3日午後7時前、ことしのノーベル物理学賞の受賞者を発表しました。

    ▼アメリカのオハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ教授、
    ▼ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学のフェレンツ・クラウス教授、
    ▼スウェーデンのルンド大学のアンヌ・ルイエ教授の3人を選んだと発表しました。

    3人は「アト秒」と呼ばれるきわめて短い時間だけ光を出す実験的な手法を開発し、物質を構成する細かな粒子の1つ、「電子」の動きを観測する新たな研究を可能にしたことが評価されました。

    【ライブ配信】受賞者 発表会見のようす

    ノーベル賞2023 関連サイト

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は
    ▽2日が生理学・医学賞
    ▽3日が物理学賞
    ▽4日が化学賞
    ▽5日が文学賞
    ▽6日が平和賞
    ▽9日が経済学賞となっています。

    日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち2000年以降に受賞した20人はすべて、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞で、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    おととし、物理学賞に輝いた真鍋淑郎さん以来、2年ぶりに日本人の受賞があるのか注目されます。

    物理学賞 注目の研究者は

    物理学賞はアメリカ国籍を取得した人を含め、これまで日本から12人が受賞しています。2021年は、愛媛県出身でアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎さんが受賞。気候をシミュレーションするモデルの基礎を開発し、地球温暖化の研究を切り開いた功績が評価されました。

    十倉好紀さん(左) 細野秀雄さん(中央) 香取秀俊さん(右)

    注目されている研究者としては、

    ▽消費電力が極めて少ないコンピューター用の記憶媒体の実現につながる金属の化合物「マルチフェロイック物質」の特徴を解き明かした理化学研究所センター長の十倉好紀さん、
    ▽電力ロスが少ない次世代の送電線などへの応用も期待される「鉄系超電導物質」を発見した東京工業大学栄誉教授の細野秀雄さん、
    ▽100億年で1秒も狂わない極めて正確な「光格子時計」と呼ばれる時計を開発した、東京大学教授の香取秀俊さんなどが挙げられています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231003/k10014213781000.html

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  5. 社説
    ノーベル賞 コロナ抑えたワクチンの功績
    2023/10/04 05:00

     新型コロナウイルスの流行抑止に大きな役割を果たしたワクチンの研究者にノーベル生理学・医学賞が贈られることになった。世界中で多くの命を救った功績は計り知れない。

     受賞するのは、米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ特任教授と、ドリュー・ワイスマン教授だ。2人は共同で、人工的に合成した遺伝物質メッセンジャーRNA(mRNA)の研究を進め、ワクチンの開発に道を開いた。

     mRNAを体に投与した場合、過剰な免疫反応が起きるため、ワクチンや治療薬に使うのは難しいとみられていた。しかし、激しい反応を引き起こす物質を改変し、反応を抑えることに成功した。

     コロナ流行の20年以上前から、このテーマに取り組んできた。常識にとらわれず、粘り強く研究を続けた努力を 称たた えたい。

     mRNAを使うことで、ワクチンを素早く製造できるようになった。2人の研究成果は、コロナの感染拡大から1年足らずで、米ファイザーやモデルナがワクチンを実用化する原動力となった。

     旧来の方法ではワクチン開発に数年かかるのが当たり前だった。コロナの世界的大流行に対応できず、感染の収束が遅れていたら、被害はどれほど広がっていたか、想像に難くない。

     カリコ氏の経歴にも注目が集まっている。母国のハンガリーから、幼い娘を連れて米国に移住した。ペンシルベニア大では、思うように研究費が獲得できず、降格の憂き目にも遭っている。

     論文を複写するため、大学のコピー機の前に並んでいる際、出会ったのが、共同研究者のワイスマン氏だった。mRNAを活用する方策を2人で色々と試すようになり、やがてドイツのベンチャー企業がワクチン開発につなげた。

     国籍や性別を問わずに才能を発掘し、他の研究者と交流しながら発想を広げることの大切さがわかる。閉鎖的で国際共同研究も少ないと言われる日本の大学も、学ぶべき点が多いのではないか。

     この分野では、日本人研究者もmRNAを安定化する構造を発見するなどの貢献をしている。ただ、日本はコロナ禍で、自前のワクチン開発に取り組んだものの、早期の実用化に至らず、欧米からの輸入に頼らざるを得なかった。

     その原因を探り、今後に生かすことが重要だ。

     mRNAの技術は、がん治療薬の開発などにも応用できる。医療の可能性をさらに広げる革新的な創薬にも期待したい。
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20231003-OYT1T50250/

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  6. ノーベル文学賞にノルウェーの劇作家 ヨン・フォッセ氏
    2023年10月5日 20時07分

    ことしのノーベル文学賞にノルウェーの劇作家、ヨン・フォッセ氏が選ばれました。

    受賞者は日本時間の5日午後8時すぎにスウェーデンの首都・ストックホルムで発表されました。

    受賞者の発表会見の内容を随時更新でお伝えします。

    【関連】ノーベル賞2023の詳しい情報はこちらでも

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は
    ▽2日が生理学・医学賞
    ▽3日が物理学賞
    ▽4日が化学賞
    ▽5日が文学賞
    ▽6日が平和賞
    ▽9日が経済学賞となっています。

    日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち2000年以降に受賞した20人はすべて、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞で、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    ノーベル文学賞 注目は

    文学賞ではこれまで2人の日本人が受賞。例年注目されるのは、作品が50以上の言語に翻訳され世界中で読まれている村上春樹さんです。

    チェコの「フランツ・カフカ賞」やデンマークの「アンデルセン文学賞」など、海外の賞を複数受賞していて、毎年、イギリスの「ブックメーカー」が行っている受賞者を予想する賭けでは“有力候補”の1人となっています。

    また、長年ドイツで暮らし日本語とドイツ語で小説を執筆している多和田葉子さんも、ドイツの「クライスト賞」や、アメリカの「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれるなど、注目されています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231005/k10014216631000.html

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    1. ノーベル文学賞にノルウェーの劇作家 ヨン・フォッセ氏
      2023年10月5日 23時15分

      ことしのノーベル文学賞に、世界各国で戯曲が上演され、詩のような特徴的なせりふ回しで知られるノルウェーの劇作家、ヨン・フォッセ氏が選ばれました。

      スウェーデンのストックホルムにある選考委員会は5日、ことしのノーベル文学賞にノルウェーの劇作家、ヨン・フォッセ氏を選んだと発表しました。

      フォッセ氏は1959年、ノルウェーに生まれ、1980年代前半から小説や詩集、それにエッセイなどを次々と発表しました。

      1990年代からは生や死などをテーマに、句読点がなく、詩のような特徴的なせりふ回しの戯曲を数多く手がけました。

      このうち代表作の「だれか、来る」についてノーベル賞の選考委員会は、作品のなかでことばや劇的な行動を減らし、不安や無力感という人間の最も強い感情を最も簡単な日常の会話で表現しているとしています。

      フォッセ氏は「近代演劇の父」と言われるノルウェーの劇作家、イプセンの再来とも呼ばれ、その作品は多くの言語に翻訳され、世界各地で上演されています。

      フォッセ氏について選考委員会は「現在、世界で最も幅広く上演されている劇作家の1人だ」とした上で、「革新的な戯曲と散文でことばに出せないものに声を与えている」と評価しています。

      フォッセ氏「圧倒される」

      ノーベル文学賞に選ばれたヨン・フォッセ氏はロイター通信に、「圧倒されるとともに、いささか怖さも感じています。私は何よりも文学であることを目指した文学に与えられる賞だと考えています」とコメントしています。

      専門家「普遍的な人間の気持ちを描く作品」

      ノーベル文学賞に選ばれたフォッセ氏の戯曲を日本語に翻訳した東京藝術大学大学院の長島確 准教授は「とても嬉しかった。毎年候補にあがっていたので、『やっと』という気持ちだ」と喜びをあらわにしていました。

      フォッセ氏の戯曲には登場人物に名前がなかったり、舞台設定がはっきりと示されていなかったりすることが多いとした上で、「せりふがシンプルな会話で、詩のように書かれている。強いメッセージがあるわけではなく、平明な淡いことばの繰り返しから、不安などいろいろな感情がなんとも言いがたい形であらわれてくる」と作品の魅力を説明しました。

      そして、「作品は名もない人々の生活のなかにある喪失感や孤独、思い出がデリケートに扱われ、普遍的な人間の気持ちを描いている。どんどん紹介されていってほしい」と話し、受賞が決まったことをきっかけに日本でもいっそう知られてほしいと期待を示しました。

      東京 渋谷 海外文学ファンは

      ことしのノーベル文学賞の発表にあわせて海外文学ファンたちが集まるイベントが東京都で開かれ、ことしの受賞者が発表されると大きな歓声が上がっていました。

      このイベントは首都圏の海外文学ファンのグループがノーベル文学賞の発表に合わせて、毎年、この時期に開いていて、ことしは東京・渋谷区の会場とオンラインであわせておよそ40人が参加しました。

      グループではノーベル賞を海外作品の魅力を知るきっかけにしてもらおうと、候補として名前の挙がる作家などおよそ40人分の作品を分担して読み込んだ上で、それぞれの紹介文を書いて冊子を作りました。

      会場には世界各国の作家の著作およそ80冊が持ち寄られ、参加者は分担した作家の魅力を語りあいながら発表の瞬間を待ちました。

      参加者はそれぞれことしの受賞者の予想も発表し、イベントを主催した浦野喬さんはヨン・フォッセ氏の名前を挙げていました。そして午後8時、その予想が的中してフォッセ氏の名前が発表されると、会場は大きな驚きと歓声に包まれました。

      翻訳でフォッセ氏の戯曲を読んだことがあるという女性は「3度目の参加ですが、予想が当たって興奮しました。受賞をきっかけにほかの作品も読んでみたいです」と話していました。

      イベントを主催した浦野喬さんは「場面や台詞の繰り返しなど表現の面白さが魅力の作者です。受賞をきっかけに、ほかの作品の翻訳も進んで読める作品が増えてほしい」と話していました。

      都内の書店 フォッセ氏の作品コーナー

      都内の書店にはフォッセ氏の作品のコーナーが急きょ、設けられました。

      東京・新宿区の紀伊國屋書店新宿本店では受賞者の発表を行う会見の模様を店内に設けたモニターで上映し、文学ファンが見守りました。

      午後8時すぎに日本の作家の受賞がないことが分かると、集まっていた人たちからため息がもれました。

      50代の女性は「村上春樹さんかもしれないかなとも思っていました。北欧の作家ということで、読んだことはありませんが、興味が湧いてきました」と話していました。

      書店では急きょ、別の店舗からフォッセ氏の著書の英訳版およそ10冊が持ち込まれ、コーナーが設けられました。

      29歳の男性は「最近、北欧に興味を持つようになっていて、フォッセさんも聞いたことがあっただけに、ラッキーという気持ちです。翻訳がないというようなことを聞きましたが、読んでみたいです」と話していました。

      紀伊國屋書店新宿本店の吉野裕司副店長は「候補のリストには入っていたものの、馴染みのない作家で、びっくりしています。出版社が日本語訳を出してくれれば嬉しい」と話していました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231005/k10014216631000.html

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  7. ノーベル平和賞 イランの人権活動家 ナルゲス・モハンマディ氏
    2023年10月6日 21時10分

    ことしのノーベル平和賞に、イランで長年、女性の権利擁護や死刑制度の廃止などを訴え、現在は刑務所で服役している人権活動家のナルゲス・モハンマディ氏が選ばれました。

    選考委員会は授賞理由について「女性に対する弾圧と闘い、人権と自由を守るためにも闘った」と、その活動をたたえました。

    ノルウェーの首都オスロにある選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にイランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディ氏を選んだと発表しました。

    モハンマディ氏はジャーナリストとして活動するとともに、2003年に同じくイランでノーベル平和賞を受賞した弁護士のシリン・エバディさんが代表を務める人権団体「人権擁護センター」で副代表などを務め、女性の権利擁護や死刑制度の廃止などを訴えて活動してきました。

    しかし、こうした活動が国の安全保障を脅かしたなどとして何度も逮捕され、現在も首都テヘランの刑務所で服役しています。

    イランでは去年9月、女性が公共の場で着用を義務づけられているヘジャブと呼ばれる「スカーフ」のかぶり方が不適切だとして逮捕された女性が死亡し、警察による暴行を疑う抗議デモが各地に広がりました。

    これについてモハンマディ氏は獄中からSNSに投稿したり、メディアに寄稿したりして、デモへの連帯を示すとともに、デモの参加者に対して政権側が暴力をふるっていると繰り返し非難してきました。

    選考委員会「人権と自由を守る闘いを評価」

    選考委員会のライスアンネシェン委員長は、授賞理由について「イランでの女性に対する弾圧との闘い、そして、すべての人の人権と自由を守る闘いを評価した」と述べました。

    ライスアンネシェン委員長は記者会見で「この平和賞はナルゲス・モハンマディ氏をリーダーとするイランでの運動の重要性を認めるものだ。どんな形であっても運動を続ける上で平和賞が励みになることを願っている」と強調しました。

    そのうえで「イラン当局が正しい判断を下せば、彼女は釈放されこの賞を受け取ることができるだろう。われわれはそれを1番に望んでいる」と話し、ことし12月にノルウェーで行われる授賞式にモハンマディ氏が出席できることに期待を示しました。

    また、ライスアンネシェン委員長は、ナルゲス・モハンマディ氏について、2011年に初めて拘束されて以降、これまでに13回拘束され、有罪判決を5回受け、言い渡された刑期は合わせて31年に上るとして「彼女の勇敢な闘いは、自身の途方もない代償を伴っている」と述べました。

    ライスアンネシェン委員長はイランで広がった政権に抗議するデモのスローガン「女性・命・自由」をペルシャ語で読み上げ「このスローガンはモハンマディ氏の取り組みを表すのにふさわしい」とたたえました。

    「ヘジャブ」をめぐるデモとは

    イランでは去年9月16日、公共の場で女性に着用が義務づけられている「ヘジャブ」と呼ばれるスカーフのかぶり方が不適切だとして警察に逮捕された22歳のマフサ・アミニさんが急死しました。

    政権側は病死だと主張していますが、警察による暴行が原因だと疑う市民の抗議デモがイラン各地に広がりました。

    デモ隊と治安当局の衝突も起き、ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は、デモの参加者550人以上が死亡したと指摘しています。

    現在はデモはおさまっていますが、イランではこのところカフェや事業所などが客や従業員にヘジャブの着用を徹底しなかったとして当局から営業停止を命じられるケースが相次いでいます。

    さらに、イラン政府は、保守層の意向を受けて、ヘジャブをかぶらなかった場合には高額の罰金を科すなど、罰則を強化する法案を議会に提出し、先月20日に可決されました。

    これに対し、罰則の強化に反対する市民からは「法律が施行されれば、人々の間に対立が生じる」とか「もっと自由になって市民の意見が尊重されるようになってほしい」といった反発の声があがっています。

    モハンマディ氏の家族が投稿「女性にとって重要な成果」

    ナルゲス・モハンマディ氏のSNSにはノーベル平和賞の発表直後に家族のメッセージが投稿されました。

    メッセージでは受賞への謝意を示したうえで「すべてのイランの人々、とりわけ正義、平和、平等を強く訴えてきた女性たちにとって重要な成果だ」としています。

    そのうえで「一人ひとりがより明るいあすを追求して団結すれば、前向きな変化が達成できることを気付かせるきっかけとなる。この重大な勝利を祝うため団結するすべてのイランの人々に心からお祝い申し上げる」として、イランの人々に団結を呼びかけています。

    そして、メッセージは「女性・命・自由」というイランでの抗議デモのスローガンで締めくくられています。

    モハンマディ氏の夫「彼女の受賞は人権守る活動を後押し」

    モハンマディ氏の夫のタギ・ラフマニさんは滞在しているフランスで、ロイター通信のインタビューに応じ「彼女が平和賞に選ばれ、イラン社会の人権問題に光が当てられたことは、人権を守る活動を後押しするものだ。この活動は差別に反対し続けるものだ」と話していました。

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    1. テヘランの女性「イランの女性が賞に選ばれて幸せ」

      イランの首都テヘランの女性たちからは、女性の権利をめぐる状況が改善するきっかけになればと期待する声が聞かれました。

      このうち60代の女性は「イランの女性がこうした賞に選ばれて幸せです。イランの女性すべてが前に進むための道が開かれることを願います」と話していました。

      また、別の60代の女性は「イランの女性の受賞が決まったことを誇りに思います。ほかの女性たちもモハンマディ氏の経験をどうやって生かすか、考えなければならないと思います」と話していました。

      EU委員長「勇敢で崇高な戦いを認めるものだ」

      EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は自身のSNSでモハンマディ氏に祝意を表し「この賞は危険の中でも抑圧にあらがったイランの女性たちの勇敢で崇高な戦いを認めるものだ。彼女たちは世界中の女性が自分たちの自由と権利のために立ち上がることを鼓舞している」として功績をたたえました。

      国際人権団体「イランでの国民的な抵抗運動 応援の意味大きい」

      国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の日本代表で弁護士の土井香苗さんは「去年の秋にクルド系女性がヘジャブのかぶり方がおかしいと逮捕され、その後、獄中死したことで、イランの中で非常に大きな国民的な抵抗運動が起こり、特に若い女性たちを中心に多くの人たちが逮捕されたり死刑になったりしながらも戦っている。こういう状況に対する応援という意味が大きいのではないか」と評価しました。

      そのうえで「人権は日々勝ち取らなければいつでも無くなってしまう可能性があるもので、命懸けで戦ってくれる人がいるからこそ、今の状況があるというメッセージが込められていると思う。今回の受賞で国際社会の支援や連帯の目がイランに対して向くことによって、モハンマディさんの釈放はもちろんのこと、政治犯として捕らえられている多くの人たちの解放、そしてイランが人権を尊重する国家になることを期待したい」と話していました。

      さらに「イランの人権状況が日本で報道されることは多くはありませんが、影響力があるので、日本政府にもイラン政府に対して人権問題をしっかりと提起していただきたい」と話していました。

      拘束下にある人が平和賞に選ばれるのは5人目

      当局の拘束下にある人が平和賞に選ばれるのは、去年、刑務所に収監される中で受賞したベラルーシの人権活動家、アレシ・ビャリャツキ氏に続き、5人目です。

      ▽1935年の受賞者のドイツのジャーナリスト、カール・フォンオシエツキー氏は、当時のナチス政権を批判して強制収容所に送られていました。オシエツキー氏は授賞式に出席できないまま、1938年に亡くなりました。

      ▽1991年に選ばれたミャンマーの民主化運動のリーダー、アウン・サン・スー・チー氏は、軍事政権による自宅軟禁下で受賞の報を受け、家族が代わって授賞式に出席しました。

      ▽2010年に受賞した中国の民主活動家の劉暁波氏は、国家と政権の転覆をあおったとされる罪で、刑務所に収監されていました。妻も事実上の軟禁状態にあったため授賞式には誰も参加できず、賞状は空席のいすに置かれました。

      ▽去年受賞したビャリャツキ氏の授賞式には妻が代理で出席しました。ビャリャツキ氏は公共の秩序を乱す活動に市民を巻き込むなどしたとして起訴されていて、ことし3月、ベラルーシの国営通信社は、裁判所が禁錮10年の判決を言い渡したと伝えています。

      ノーベル平和賞とは

      ノーベル平和賞は、軍縮や民主主義、人権の尊重、平和な世界の実現などに貢献した個人や団体に贈られるほか、近年は環境問題などへの取り組みにも贈られています。

      賞が始まった1901年から2022年までの間に、110人の個人と27の団体が受賞し、このうち▽ICRC=赤十字国際委員会は3回、▽UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は2回、受賞しています。

      ノーベル賞の6つの部門のうち物理学賞や経済学賞など5つの賞は、賞を創設したアルフレッド・ノーベルの母国のスウェーデンで選考されますが、平和賞だけはノーベル自身の意向で隣国のノルウェーで選考され、受賞者の発表や授賞式もノルウェーの首都オスロで行われます。

      選考にあたるのはノルウェー議会に任命された5人の選考委員で、毎年1月末までに世界各国の有識者や議員などから推薦を募り、推薦された候補者の中から受賞者を絞り込みます。

      受賞者は選考委員会の全会一致での決定を目指しますが、委員の意見が分かれ期限内に決まらない場合は、多数決で決定します。

      誰がどの人物を推薦したかなど選考の過程は秘密とされ、50年後にならないと公開されない仕組みになっています。

      ノーベル委員会によりますと、ことしはこれまでで2番目に多い351の個人と団体が、候補に挙がっていたということです。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231006/k10014217681000.html

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  8. ノーベル経済学賞に男女間の格差是正など研究のゴールディン氏
    2023年10月9日 21時19分

    ことしのノーベル経済学賞の受賞者に、男女の賃金格差の要因や労働市場における女性の役割などを研究したアメリカのハーバード大学のゴールディン教授が選ばれました。

    スウェーデンの王立科学アカデミーは、日本時間の10月9日午後7時前、ことしのノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。

    受賞が決まったのは、アメリカのハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授です。

    ゴールディン教授は、女性の労働市場への参加についてアメリカの200年以上にわたるデータを集め、男女間の格差の是正において何が重要なのか、そのカギとなる要因を分析しました。

    従来の研究では、女性の就業率は経済発展に伴って上昇すると考えられていました。

    しかし、ゴールディン教授は主要産業が農業から工業に移り変わることに伴って既婚女性が仕事と家庭を両立することが困難になることなどから女性の就業率が低下するとしました。

    そして経済のサービス化が進むことで就業率が増加するとして、U字型のカーブを描く構造を初めて明らかにしました。

    現在では、アメリカだけでなく、ほかの多くの国でも当てはまる現象だと評価されています。

    ゴールディン教授の研究は、政府の介入や男性の家庭参加に加えて、長時間労働を改めるなど、企業が男女間の格差是正に向けて柔軟な働き方を認めることを論理的に後押ししたとされています。

    ノーベル経済学賞で女性の受賞者は3人目となります。

    選考委員長「どの障壁に対処すべきか知ることができた」
    スウェーデンの王立科学アカデミーの選考委員長は、ゴールディン教授の業績について、「労働市場における女性の役割を理解することは社会にとって重要だ。ゴールディン氏の革新的な研究のおかげで、私たちは、隠された要因や、将来、どの障壁に対処すべきかをさらに知ることができた」と評価しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231009/k10014220061000.html

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  9. すべてがノベル大賞と化しているらしい…

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  10. “ノーベル賞有力視の研究者22人”英学術情報サービス会社発表
    2024年9月19日 21時23分

    ことしのノーベル賞の発表が来月7日から始まるのを前に、イギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として、東京大学の堂免一成特別教授とアメリカ、国立衛生研究所の彦坂興秀氏を含む22人を発表しました。

    世界中の研究論文を分析するイギリスの学術情報サービス会社「クラリベイト」は、世界の研究者が発表したおよそ6100万本の研究論文の引用回数などを分析して、毎年、ノーベル賞の受賞が有力視される研究者に「クラリベイト引用栄誉賞」を贈っています。

    ことしは、6か国の研究機関から22人が選ばれ、このうちノーベル化学賞の有力候補の1人として、東京大学の堂免一成特別教授(70)が選ばれました。

    堂免特別教授は、太陽の光を当てることで水を水素と酸素に分解する「光触媒」を使った人工光合成の研究で、水素を効率的に取り出す手法を開発したことが評価されました。

    堂免特別教授は、太陽の光を当てることで水を水素と酸素に分解する「光触媒」を使った「人工光合成」の研究を1980年ごろから始めました。

    当初の光触媒では、水を分解する際に太陽の光のうち、波長の短い紫外光しか利用できませんでしたが、堂免特別教授は、波長の長い可視光も利用できる光触媒を開発し、効率的に水を分解して水素を取り出すことに成功しました。

    2021年には、光触媒を付着させたおよそ100平方メートルのパネルを屋外に設けて水を注ぎ、太陽の光を受けて発生した水素と酸素が混ざった気体を穴の空いた膜に通すことで、水素を高い純度で安全に抽出する手法を開発しました。

    水素は燃焼しても二酸化炭素が発生しない燃料として活用できるほか、化学産業の現場では原料としても用いられています。

    堂免特別教授によりますと、現在、水素は化石資源から取り出す方法が一般的ですが、製造の際に二酸化炭素が発生するため、地球温暖化への影響などが課題となっていて、環境面からも人工光合成への期待が高まっているということです。

    堂免特別教授は「社会実装のレベルまでにはあと数年はかかり、光触媒の性能をもう少し上げる必要があるので今年度にこの賞を頂けるとは思っていませんでした。燃やして使っても地球の環境に悪くないような燃料を出来るだけ安く、大量に供給できるようなシステムを作り、エネルギー問題で起きている世界中の紛争が無くなる社会がやってきてほしいです」と話していました。

    また、生理学・医学賞の有力候補の1人としては、東京大学出身で、運動や学習などをつかさどる「大脳基底核」の生理学的な研究に貢献した、アメリカの国立衛生研究所に所属する彦坂興秀氏が選ばれています。

    「クラリベイト引用栄誉賞」を受賞した研究者は、去年までに421人いて、このうち75人がノーベル賞を受賞しています。

    ことしのノーベル賞の発表は、来月7日の生理学・医学賞から始まり、8日に物理学賞、9日に化学賞、10日に文学賞、11日に平和賞、14日に経済学賞の発表がそれぞれ行われます。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240919/k10014586111000.html

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  11. ノーベル賞 10月7日から発表始まる 注目の研究は
    2024年10月5日 7時06分

    ことしのノーベル賞受賞者の発表が、週明けの7日から始まります。日本人の受賞はアメリカ国籍を取得した人を含めこれまで28人で、3年ぶりの受賞となるか、注目されます。

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は、7日が生理学・医学賞、8日が物理学賞、9日が化学賞、10日が文学賞、11日が平和賞、14日が経済学賞となっています。

    日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち今世紀に入ってから(2001年以降)受賞した19人は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞いずれかで、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    2021年に物理学賞に輝いた真鍋淑郎さん以来、3年ぶりに日本人の受賞があるのか注目されます。

    ノーベル賞の授賞式や晩さん会はことし12月にスウェーデンのストックホルムで開かれます。

    選考の過程は
    ノーベル賞の選考は、発表の1年ほど前に世界中の大学教授や歴代のノーベル賞受賞者などに推薦依頼を出すことから始まります。

    推薦は1月末に締め切られ、この中から候補者を絞り込む選考が各賞ごとの委員会によって進められます。

    選考の過程は50年後まで公表されないことになっています。

    論文引用数などで予測
    ノーベル賞の選考は水面下で行われるため、毎年、発表の時期が近づくと、世界中でさまざまな受賞者の予想が行われます。

    イギリスの学術情報サービス会社「クラリベイト」は、世界の研究者が発表した研究論文の引用回数などを元に毎年、ノーベル賞の受賞が有力視される研究者を発表しています。

    去年までにあわせて421人の研究者に受賞の可能性があると予想し、このうち75人がその後、ノーベル賞を受賞しています。

    ノーベル賞の“前哨戦”
    手がかりになる情報はほかにもあります。

    国際的に注目される学術賞の受賞歴です。

    ノーベル賞の“前哨戦”と位置づけられているのが、カナダの「ガードナー国際賞」やアメリカの「ラスカー賞」などです。

    実際に、2012年に生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんは受賞の3年前、「ガードナー国際賞」と「ラスカー賞」に選ばれていたほか、2016年に受賞した大隅良典さんも受賞の前年に「ガードナー国際賞」に選ばれています。

    現地メディアの予想
    こうした受賞歴に加えて注目されているのが、ノーベル賞の発表が行われるスウェーデンの現地メディアによる受賞予想です。

    3年前(2021年)は現地のラジオ局がその年に物理学賞を受賞することになる真鍋淑郎さんの名前と、「全球気候モデル」という研究分野を事前に予想し、的中させました。

    当時、この分野の研究は物理学賞の対象ではないと見られていたことから関係者を驚かせました。

    さらに、2年前(2022年)に物理学賞を受賞した「量子もつれ」や、去年受賞した「アト秒物理学」についても、発表の前の年までに現地メディアが予想していた研究分野でした。

    注目の研究は
    こうした経緯から物理学賞で注目されているのが、去年とおととしの現地メディアの予想に挙がっている国際研究プロジェクト「IceCube」です。

    南極の氷を使って素粒子の1つ「ニュートリノ」を検出する世界14か国が参加するプロジェクトで、日本からは千葉大学が参加しています。

    また、化学賞については、3年前(2021年)に現地の新聞社の予想で東京大学の藤田誠 卓越教授の名前が挙がりました。

    有機化学が専門の藤田さんは「自己組織化」と呼ばれる現象を研究していて、国際的に注目される賞を受賞しているほか、4年前(2020年)には、イギリスの学術情報サービス会社から受賞の可能性がある研究者に選ばれています。

    物理学賞で注目 宇宙の謎に迫る「IceCube」とは
    物理学の分野で重要な成果をあげたとして注目されているのが、南極で素粒子の1つ「ニュートリノ」を観測している国際共同プロジェクト「IceCube」です。

    ニュートリノは物質をすり抜けてしまうため観測が難しいとされていますが、プロジェクトでは、氷と反応した時に出るわずかな光を検出しようと、南極の氷の中に5000個余りの検出器を設置しました。

    そして、宇宙から届くエネルギーの高いタイプのニュートリノをとらえ、このニュートリノがおよそ40億光年離れた天体から届いたことを6年前(2018年)に論文で発表しました。

    検出された高いエネルギーのニュートリノは巨大なブラックホールから「ジェット」と呼ばれる高温のガスが噴出した際に発生したとみられ、謎の多いブラックホールの活動や宇宙の成り立ちの解明につながる成果として注目されています。

    世界14か国が参加するこのプロジェクトには日本の研究機関として唯一、千葉大学の研究チームが参加しています。

    千葉大学の石原安野 教授は「ニュートリノは非常に透過性の高い素粒子のため遠くの宇宙や天体の内部からの情報を運んでくれます。従来の観測手法に加えて高いエネルギーのニュートリノを観測することで宇宙をより広い視野で見ることができる」と話していました。

    化学賞で注目 産業への応用が進む「自己組織化」とは
    産業への応用が進む成果として注目されているのが、東京大学の藤田誠 卓越教授が取り組む「自己組織化」と呼ばれる現象の研究です。

    「自己組織化」は分子どうしがひとりでに結びついて立体構造を作り出す現象です。

    藤田卓越教授は金属イオンと有機分子を混ぜることで、100万分の1ミリサイズの正方形をした分子の集合体がつくられることを発見しました。

    さらに、こうした分子の立体構造を使い「結晶スポンジ法」と呼ばれる物質の解析手法を開発しました。

    分子の立体構造をいわば「かご」のように使うことで、その中に入れた物質を詳しく解析することができるようになりました。

    この手法は産業への応用が進んでいて、神奈川県内にある大手飲料メーカーの研究所では新商品の開発に生かしています。

    メーカーは、ビールの原料のホップを熟成させた時に生じる成分を解析し、効率のよい製造方法や品質の均一化につなげたということです。

    大手飲料メーカーの谷口慈将 主任研究員は「より品質的に優れた製品などを開発できる可能性が高まるので、この技術への期待感は高い」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241005/k10014601311000.html

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  12. ノーベル賞 あすから発表 日本人3年ぶりの受賞なるか 注目は?
    2024年10月6日 18時33分

    ことしのノーベル賞受賞者の発表が、7日から始まります。日本人の受賞はアメリカ国籍を取得した人を含めこれまで28人で、3年ぶりの受賞となるか、注目されます。

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は、7日が生理学・医学賞、8日が物理学賞、9日が化学賞、10日が文学賞、11日が平和賞、14日が経済学賞となっています。

    日本人の受賞はこれまでアメリカ国籍を取得した人を含めて28人ですが、このうち今世紀に入ってから受賞した19人は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞いずれかで、この期間ではアメリカに次ぐ2番目の多さとなっています。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん、平和賞は1974年の佐藤栄作元総理大臣以来受賞がなく経済学賞を受賞した人はいません。

    2021年に物理学賞に輝いた真鍋淑郎さん以来、3年ぶりに日本人の受賞があるのか注目されます。

    ノーベル賞の授賞式や晩さん会はことし12月にスウェーデンのストックホルムで開かれます。

    【注目の日本人は】

    《生理学・医学賞》
    初日に発表される生理学・医学賞では、これまでに5人の日本人が受賞しています。

    毎年、注目されているのは、日本に有力な研究者が多い免疫学の分野で、
    ▼過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文さんや

    ▼免疫の働きを強める「インターロイキン6」というたんぱく質を発見した大阪大学特任教授の岸本忠三さんがこれまでに国際的な賞を受賞するなどしています。

    また、病気の治療に貢献している研究者では、▼エイズの治療薬を世界で初めて開発した国立国際医療研究センター研究所長の満屋裕明さんが注目されています。

    このほかの分野では▼細胞どうしを結びつけて臓器などを形づくる分子、「カドヘリン」を発見した理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊さんや、

    ▼「小胞体」と呼ばれる細胞の器官が、不良品のたんぱく質を修復したり分解したりする仕組みを解明した京都大学特別教授の森和俊さんも国際的な学術賞を受賞していて注目されています。

    このほか、▼運動や学習などをつかさどる「大脳基底核」の生理学的な研究に貢献した、アメリカの国立衛生研究所に所属する彦坂興秀さんは9月にイギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として発表しています。

    《物理学賞》
    2日目の物理学賞は、アメリカ国籍を取得した人を含め、これまで日本から12人が受賞しています。

    3年前は、愛媛県出身でアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎さんが受賞。

    気候をシミュレーションするモデルの基礎を開発し、地球温暖化の研究を切り開いた功績が評価されました。

    当時、この分野の研究は物理学の対象ではないと見られていたことから、関係者には驚きが広がりました。

    注目されている研究者としては、▼消費電力が極めて少ないコンピューター用のメモリーの実現につながる「マルチフェロイック物質」の特徴を解き明かした理化学研究所理事長特別補佐の十倉好紀さんや、

    ▼電力ロスが少ない次世代の送電線などへの応用も期待される「鉄系超電導物質」を発見した東京科学大学栄誉教授の細野秀雄さんが、論文の引用回数の多さなどから注目されているほか、

    ▼100億年で1秒も狂わない極めて正確な「光格子時計」と呼ばれる時計を開発した、東京大学教授の香取秀俊さんなどが注目されています。

    《化学賞》
    3日目の化学賞は、これまで日本から8人が受賞していて、ほかにも「ノーベル賞級」とされる成果を挙げている日本の研究者が多くいます。

    このうち、▼水中の「酸化チタン」に紫外線を当てると、水が水素と酸素に分解される現象を世界で初めて発見し、有害物質の分解などに利用される「光触媒」の実用化の道を開いた東京理科大学栄誉教授の藤嶋昭さんや、

    ▼藤嶋さんとともに「光触媒」の研究に取り組み、汚れや有害物質のほか、細菌やウイルスを分解する力があることを明らかにした科学技術振興機構理事長の橋本和仁さんは毎年、受賞が期待されています。

    また、▼東京大学卓越教授の藤田誠さんは、分子どうしがひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象の研究で国内外で高く評価されているほか、

    ▼京都大学理事の北川進さんは「多孔性金属錯体」という特定の気体を貯蔵できる材料の合成で世界的に注目されています。

    このほか、▼「光触媒」を使い、植物のように太陽の光を利用してエネルギーを生み出す「人工光合成」の研究で、効率的に水素を取り出す手法を開発した信州大学特別特任教授で東京大学特別教授の堂免一成さんはことし、イギリスの学術情報サービス会社からノーベル化学賞受賞の有力候補にあげられました。

    《文学賞》
    例年注目されるのは、▼作品が50以上の言語に翻訳され世界中で読まれている村上春樹さんです。

    チェコの「フランツ・カフカ賞」やイスラエルの「エルサレム賞」など、海外の賞を複数受賞していて、毎年、イギリスの「ブックメーカー」が行っている受賞者を予想する賭けでは“有力候補”の1人となっています。

    また、▼長年ドイツで暮らし、日本語とドイツ語で小説を執筆している多和田葉子さんも、ドイツの「クライスト賞」や、アメリカの「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれるなど、注目されています。

    【過去の日本人受賞者】
    ノーベル賞を受賞した日本人は、アメリカ国籍を取得した人も含めて28人います。

    日本人が初めてノーベル賞を受賞したのはいまから75年前、戦後まもない▼1949年で、湯川秀樹さんが、物理学賞を受賞しました。
    その後、
    ▼1965年に朝永振一郎さんが物理学賞、
    ▼1968年に川端康成さんが日本人初の文学賞、
    ▼1973年に江崎玲於奈さんが物理学賞、
    ▼1974年に佐藤栄作元総理大臣が日本人で初めての平和賞を受賞しました。

    ▼日本人初の化学賞は1981年、福井謙一さんが受賞。
    ▼初の生理学・医学賞は1987年に利根川進さんが受賞しました。
    ▼1994年には大江健三郎さんが、文学賞を受賞しています。

    2000年以降、受賞者は急増します。

    ▼2000年に白川英樹さんが受賞したのを始まりに
    ▼2001年に野依良治さん、
    ▼2002年に田中耕一さんと3年連続で日本人が化学賞を受賞します。

    田中さんが化学賞を受賞した2002年には、小柴昌俊さんが物理学賞を受賞し、初めて同じ年に2人が受賞しました。

    ▼2008年には、物理学賞で南部陽一郎さん、小林誠さん、益川敏英さんの3人が同時に受賞したほか、下村脩さんが化学賞を受賞し、この年だけで4人が受賞しました。

    また、▼2010年には化学賞で鈴木章さんと根岸英一さんがダブル受賞し、▼2012年には山中伸弥さんが生理学・医学賞を受賞しました。

    ▼2014年には、赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3人が物理学賞を受賞しました。

    そして、▼2015年には生理学・医学賞で大村智さん、物理学賞で梶田隆章さんが受賞し、この年も2つの賞で受賞者が出ました。

    さらに、▼2016年に大隅良典さんが生理学・医学賞を受賞し、2回目となる日本人の3年連続受賞となりました。

    続いて、▼2018年に本庶佑さんが生理学・医学賞、
    ▼2019年に吉野彰さんが化学賞を受賞し2年連続で日本人が受賞。

    直近では、2021年に真鍋淑郎さんが物理学賞を受賞しました。

    文部科学省によりますと、去年までの受賞者数の28人はスイスに次いで世界で7番目となっています。

    また、今世紀に入ってから去年までに自然科学系の3賞での日本人の受賞者数は19人で、アメリカに次いで2番目の多さとなっています。

    一方、ノーベル賞の6つの部門のうち経済学賞だけは、日本人受賞者はいません。

    ※受賞当時、アメリカ国籍取得者は、南部陽一郎さん、中村修二さん、真鍋淑郎さんの3人。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241006/k10014602241000.html

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  13. ノーベル生理学・医学賞にアメリカの2研究者…遺伝子の活動を制御する「マイクロRNA」発見
    2024/10/07 19:02

     スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、2024年のノーベル生理学・医学賞を、米マサチューセッツ大のビクター・アンブロス氏と、米ハーバード大のゲイリー・ラブカン氏の、2氏に授与すると発表した。

     遺伝子の活動を制御する「マイクロRNA」を発見したことなどが評価された。
    https://www.yomiuri.co.jp/medical/20241007-OYT1T50176/

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    1. ノーベル生理学・医学賞にマイクロRNA分子発見の研究者ら2人
      2024年10月7日 21時14分

      ことしのノーベル生理学・医学賞に、ヒトの遺伝子の働きを制御することができるマイクロRNA分子を発見したアメリカ・マサチューセッツ大学のビクター・アンブロス教授ら2人が選ばれました。

      スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の7日午後6時半ごろ記者会見し、ことしのノーベル生理学・医学賞に、アメリカ・マサチューセッツ大学のビクター・アンブロス教授と、ハーバード大学のゲイリー・ラブカン教授の2人を選んだと発表しました。

      アンブロス教授らは「線虫」という小さな生き物が成長する際の遺伝子の活動を詳しく解析し、「マイクロRNA」という分子が遺伝子の働きを制御していることを突き止めました。

      その後の研究で「マイクロRNA」は、ヒトでも遺伝子の働きを制御していることがわかり、現在ではヒトのDNAには1000を超える「マイクロRNA」が存在していることがわかっています。

      「マイクロRNA」の働きが異常になると、がんの発生につながる可能性も指摘されているほか、臓器や骨が形づくられる際に、異常が起きることも明らかになりました。

      この功績で、2人は2008年に、アメリカで最も権威のある医学賞とされる「ラスカー賞」を受賞しました。

      選考委員会 “遺伝子制御の全く新しい原理を明らかに”
      ノーベル賞の選考委員会は2人の功績について「ヒトを含む多細胞生物にとって不可欠である、遺伝子制御の全く新しい原理を明らかにした。生命体がどのように発達し、機能するかにおいて、『マイクロRNA』は根源的に重要であることが証明されつつある」と説明しています。

      “2人の発見で生命科学の分野 大きく飛躍”
      RNAを長年研究してきた慶應義塾大学医学部の塩見春彦教授は「2人の発見は、遺伝子の働きを制御するのは『転写因子』と呼ばれるたんぱく質だけだという従来の考え方を大きく変え、マイクロRNAと『転写因子』の組み合わせであることを明らかにした。マイクロRNAは人工的にデザインすることが可能なため、調べたい遺伝子の働きを意図的に抑えるマイクロRNAを作り、組み込むことで細胞内で、その遺伝子がもともとどのような働きをしていたかを確認できるようになった。それによって生命科学の分野はこの2、30年で大きく飛躍した」と話しています。

      “人を引きつける魅力のある研究者”
      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれたハーバード大学のゲイリー・ラブカン教授の研究室に1996年から2年あまりにわたり研究員として在籍していた名古屋市立大学の木村幸太郎教授は、「決して“天才研究者”という感じではなく、周囲の人が見落としてしまうことでもおもしろがって研究するタイプで、人を引きつける魅力のある研究者でした」とラブカン教授の印象について語りました。

      そしてノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれたことについて「ずっとノーベル賞を受賞すると思っていました。いまにでもアメリカに飛んでいってお祝いしたいほどうれしいです」と話していました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241007/k10014602921000.html

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  14. ノーベル物理学賞 米大学の研究者など2人
    2024年10月8日 19時12分

    ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、人間の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」を使った、機械学習を可能にした基礎的な発見と発明をしたアメリカの大学の研究者など2人が選ばれました。

    スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の8日午後7時前、ことしのノーベル物理学賞の受賞者を発表しました。

    受賞が決まったのは、アメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の合わせて2人です。

    2人は人間の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」を使った、機械学習を可能にする基礎的な発見と発明が評価されました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241008/k10014603511000.html

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    1. ノーベル物理学賞にAIの中核「機械学習」の基礎に関わった2人
      2024年10月8日 23時27分

      ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、現在のAI=人工知能の技術の中核を担う、「機械学習」の基礎となる手法を開発した、アメリカの大学の研究者など2人が選ばれました。

      スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の8日午後7時前、ことしのノーベル物理学賞の受賞者にアメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の2人を選んだと発表しました。

      ホップフィールド教授は人間の神経回路を模倣した「人工ニューラルネットワーク」を使って、物理学の理論から画像やパターンなどのデータを保存し、再構成できる「連想記憶」と呼ばれる手法を開発しました。この手法によって、不完全なデータから元のデータを再現できるようになりました。

      ヒントン教授はこの手法を統計物理学の理論などを使って発展させ、学習した画像などの大量のデータをもとに可能性の高さから未知のデータを導き出すアルゴリズムを開発しました。

      2人が開発した手法などは、現在のAI=人工知能の技術の中核を担う「機械学習」の基礎となり、その後「ディープ・ラーニング」など新たなモデルの確立につながりました。

      ノーベル賞の選考委員会は2人の功績について「1980年代以降、『人工ニューラルネットワーク』の研究開発において、重要な業績を積み重ねていて、すでに多くの恩恵をもたらしている。物理学の分野では、特定の性質を備えた新たな物質の開発など極めて幅広い分野で『人工ニューラルネットワーク』が使われている」と評価しています。

      ヒントン教授「青天のへきれきで驚いています」
      受賞が決まったヒントン教授は、選考委員会との電話インタビューで「こんなことが起こるとは思いませんでした。青天のへきれきで、驚いています」と喜びをあらわにし、「きょう、私はMRIの検査を受ける予定でしたがキャンセルすることになりそうです」と語り、会場の笑いを誘っていました。

      人工知能学会会長「物理で取ったのは驚き」
      人工知能学会会長で慶応大学教授の栗原聡さんは、ホップフィールド教授とヒントン教授の2人がノーベル物理学賞を受賞することについて、「人間の神経細胞をまねした人工的なネットワークを構築することで、機械でも人間と同じように記憶や認識ができるという考え方があって、この分野で顕著な成果を上げた最初の草分け的な存在がこの2人だ。まさに人間の脳でやっていることを機械的に、物理的になしえることを証明した。ノーベル賞は情報分野が無いので、どうなるかなと思っていたが、物理で持ってきたのは意外だった。2人の受賞は当たり前だが、カテゴリーがないので物理で取ったのは驚きだった」と話していました。

      そして2人の功績について、「人工ニューラルネットワークによって、世の中ではディープラーニングやChatGPTのような生成AIという言葉が出てくるようになった。今を席けんしているAIはほぼ全てニューラルネットワークが元になっている。空港の画像認識やスマホの顔認証も当たり前だし、ChatGPTも流ちょうにしゃべるしいろんなことができる。問題も指摘されているが、全ての技術の元になったのが人工ニューラルネットワークなので、今の世界を作った元だと考えたら、すごい功績というのは誰もが分かる」と述べました。

      また、ノーベル財団が公表した受賞した研究の説明資料で、この分野における日本人の貢献について触れられていることについて、「福島邦彦先生はヒントン先生が実証した画像認識する際に使う技術を最初に考えた方。ほかにも甘利俊一先生はニューラルネットワークの基本的な理論や仕組みをまとめ発展させた方で、貢献は非常に大きく、日本の研究者はAIの草分け的なところがある」と話していました。

      機械学習の専門家「物理学賞の範ちゅうでない分野 驚いている」
      ことしのノーベル物理学賞にAI=人工知能の技術の中核を担う「機械学習」の基礎となる分野が選ばれたことについて、機械学習に詳しい東京大学の樺島祥介教授は「コンピューターのアルゴリズムの研究はこれまでの常識から考えるとノーベル物理学賞の範ちゅうではない分野で、非常に驚いている」と話しています。

      樺島教授は受賞する2人と面識はないということですが、2人の研究については30年以上前の大学院生のころから知っていたということで、「2人の研究がAIの隆盛を生み出した“種(たね)”であったのは間違いない。人類に対する影響力はすごくあり、インパクトのある業績だ」としています。

      その上で「機械学習は、物理学をはじめとした自然科学の分野でも応用が手探りで進められている。ノーベル賞の選考委員会はいま注目されている分野に積極的に光を当てようとしており、攻めの選考をしていると感じた」と話していました。

      機械学習や理論物理学の専門家「物理学の考え方をAIに移植」
      機械学習や理論物理学に詳しい京都大学大学院理学研究科の橋本幸士教授は「物理学の考え方をAIに移植したのが、今回、受賞が決まった2人だ。AIは、人間の生活を変える革新的な成果をあげているが、その基礎に物理学の成果があることを知らなかった人も多いと思う。今回の受賞には、私自身、驚くとともに、大変すばらしいことだと思う」と話していました。

      橋本教授は、機械学習と物理学を融合した「学習物理学領域」という新しい研究分野を進める、研究者のネットワークの代表を務めていて「いま、物理学の研究者がAIの研究者と共同で、新しいAIモデルを作り出したり、AIの仕組みを物理学で解明しようとしたりする研究が進んでいて、今後、面白い発展があるのではないかと思う」と話していました。

      論文紹介の特任教授 「非常に勇気づけられた」
      ノーベル財団が公表した今回の物理学賞の説明資料は、量子コンピューターの基礎理論の1つとなっている「量子アニーリング」の概念を提唱した東京科学大学の西森秀稔 特任教授らの研究にも言及しています。

      西森特任教授は今回、現在のAI=人工知能の技術の中核を担う、「機械学習」の基礎となる「ニューラルネットワーク」の手法を開発した2人の研究者が受賞したことについて「物理と情報科学の境界というメインストリームからかけ離れたものだったので受賞は予想していなかった。私たちの論文が資料に紹介されているのにも驚いたが、私も物理と情報科学の境界領域を研究してきたので重要な研究として認知されたことに非常に勇気づけられた」と話していました。

      今回受賞が決まった2人の研究と西森特任教授の提唱する「量子アニーリング」の概念との関連については「私たちが提案したのは物理の方法を使って情報科学の重要な問題の1つである『最適化問題』を解く方法だが、説明資料では今回の受賞内容に量子力学を持ち込んだという意味で、際立っているとされている。こうして評価されたことで今後、この分野も発展してくるのではないか」と話していました。

      そのうえで、「私たちも応用を考えずに学問的な興味だけからさまざまな事を研究して成果を出してきたが、物理と情報の境界領域というのは物理学の中でも特に基礎研究が応用が結びつきやすく、今後、さらに重要になってくると思う」と期待を述べました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241008/k10014603511000.html

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  15. ノーベル化学賞 AIでたんぱく質の構造予測に成功の研究者ら3人
    2024年10月9日 21時39分

    ことしのノーベル化学賞に、全く新しいたんぱく質を設計することに成功したアメリカのワシントン大学の研究者と、たんぱく質の立体構造を高精度に予測するAI=人工知能を開発したイギリスの企業の2人の研究者の合わせて3人が選ばれました。

    スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしの化学賞に、アメリカ、ワシントン大学のデイビッド・ベイカー教授と、アメリカのIT企業、グーグルのグループ会社で、ロンドンに本社のある「DeepMind」(ディープマインド)社の▼デミス・ハサビスCEO、それに、研究チームの▼ジョン・ジャンパー氏の合わせて3人を選んだと発表しました。

    ベイカー教授は全く新しいたんぱく質の設計に成功
    このうち、ベイカー教授はコンピューターを使ってたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸から他のたんぱく質とは異なる全く新たなたんぱく質を設計することに成功しました。

    ハサビス氏・ジャンパー氏は AIでたんぱく質の構造予測に成功
    また、ハサビス氏とジャンパー氏は「アルファフォールド」と呼ばれるAI=人工知能モデルを開発しました。たんぱく質は種類の異なる複数のアミノ酸がつながり、さらに複雑に折りたたまれることによって機能しますが、その立体構造の解明は長年にわたり、難問とされてきました。

    「アルファフォールド」はすでに形がわかっているたんぱく質のアミノ酸のつながり方をAIに学習させることで、折りたたまれた状態の立体構造を高精度に予測することができ、これまで、多くの研究者が特定した2億個のたんぱく質の構造を予測することに成功しました。

    選考委員会「たんぱく質の設計は人類にとって最大の利益」
    ノーベル賞の選考委員会は3人の選考理由について、「ベイカー教授はアミノ酸を使って、まったく新しいたんぱく質を設計することに成功した。また、ハサビス氏とジャンパー氏は、たんぱく質の複雑な構造を予測するという50年来の問題を解決するAIモデルを開発した。このAIモデルは190か国、200万人以上の人々に利用されている。たんぱく質はホルモンやシグナル物質、抗体などとして機能し、生命はたんぱく質がなければ存在できない。たんぱく質の構造を予測し、独自のたんぱく質を設計できるようになったことは人類にとって最大の利益だ」と評価しています。

    ベイカー教授「とても興奮していて、光栄に思います」
    ベイカー教授は選考委員会との電話インタビューで「とても興奮していて、光栄に思います。寝ているときに電話が鳴り、電話に出たのですが妻がとても大きな声で叫び始めたので、よく聞こえませんでした。またとない特別な日になりました」と喜びをあらわにしました。

    そのうえで「妻や両親や子どもたちなど、家族には本当に感謝しています。そして長年一緒に働いてきた素晴らしい人たちにも感謝を伝えたいです。彼らがすべてを可能にしてくれました」と周りの人々への感謝の意を述べました。

    また、今回の研究成果については「私たちは、21世紀の人類が直面する多くの問題に対処できるような全く新しいたんぱく質の設計ができるかもしれないと最初の段階で可能性を感じました。そしていま、さまざまな分野で役立つたんぱく質を設計することが可能になりつつあります」と述べ、研究の応用について可能性と期待感を示しました。

    さらに、ともに受賞が決まったハサビス氏とジャンパー氏については「彼らの画期的な成果はAIが持つ可能性を際立たせました。私たちはこのAIの手法をたんぱく質の設計に応用し、正確性などが向上しました。たんぱく質の設計で健康や医療、そしてテクノロジーなどの分野以外でも世界をよりよくしていけるのではないかと、本当にわくわくしています」と述べました。

    ハサビス氏・ジャンパー氏が所属する「ディープマインド社」とは
    ディープマインド社は2010年、デミス・ハサビス氏が共同設立者として立ち上げ、2014年、アメリカのIT大手、グーグルの親会社、「アルファベット」の傘下となりました。

    2015年にはAI=人工知能を駆使した囲碁のコンピューターソフト、「AlphaGo」(アルファ・ゴ)を発表し、2016年、世界トップクラスの韓国人棋士との5番勝負の対局で、4勝1敗で勝利。AIの可能性を世界に示したことで大きな話題となりました。

    同じ年に、ハサビス氏と同僚の研究者、ジョン・ジャンパー氏はAIでたんぱく質の立体構造を解明するため、「アルファフォールド」の開発に取り組み始めました。

    そして、2018年には、2年に一度開催されるコンピューターでたんぱく質の立体構造を予測する技術を競う国際的なコンテストに挑み、開発の着手からわずか2年で優勝を成し遂げました。

    また、その2年後に行われた同じコンテストには、より精度を上げた改良版の「アルファフォールド」で挑み、さらに高い精度で課題となる構造を突き止めて再び優勝を飾り、関係者の間で話題となりました。

    2021年7月には、「アルファフォールド2」として一般に無料で公開され、多くの研究者が実際に使用し、その予測の精度に驚きの声が上がったほか、「アルファフォールド2」を用いた論文が世界中で発表されています。

    ことしに入ってからはさらに精度や分析のスピードを上げ、これまで予測できなかった、たんぱく質と薬剤の複合体の構造も予測できる「アルファフォールド3」を発表し、注目を集めています。

    ベイカー教授知る専門家 “常に新しいことに挑戦する研究姿勢”
    ノーベル化学賞の受賞者に選ばれたワシントン大学のデイビット・ベイカー教授の研究室に2007年から2014年まで所属していた大阪大学蛋白質研究所の古賀信康教授は9日、大学で報道陣の取材に応じました。

    この中で、ベイカー教授が受賞したことについて、古賀教授は「いろいろな賞をとっていたのでノーベル賞の受賞もあり得ると思っていました。ベイカー教授の業績によって、自然界にあるたんぱく質だけでなく、全然違うたんぱく質を作ることができ、新たな薬や酵素の開発などにつながっていくと思います」と話していました。

    また、その人柄については「1を言うと10がわかる、理解あるいい上司でした。1つのことを突き詰める能力だけでなく、常に新しいことに挑戦する研究姿勢が印象的でした」と振り返りました。

    その上で、AIに関する研究分野が8日の物理学賞に続いて受賞したことについて感想を問われると、「皆さんもいつの間にかAIのお世話になっているので2日連続の受賞も当然だと思います」と話していました。

    分子科学の専門家 “薬をつくることも より豊かな社会の実現に”
    2012年から2015年までの3年間、ワシントン大学のベイカー教授の研究室で研究員を務めた分子科学研究所の小杉貴洋助教はベイカー教授の研究成果について「たんぱく質を自由自在に設計することで、例えばコロナウイルスを阻害するたんぱく質を設計して薬をつくることができたり、新しい触媒や酵素をつくって環境問題の解決につなげたりすることもできる。病気に苦しむ世界中の人々を助け、より豊かな社会の実現のために広く応用できる成果だと思います」と意義を話しました。

    その上で「一緒に研究をした3年間ではつねに新しい技術を貪欲に取り入れ、研究室のメンバーにも気を配って気さくに話しかけ、研究者としても人間としても素晴らしい人だと思います。いつかノーベル賞を取るだろうとは言われていましたが、実際に受賞が決まったと聞いて、やはりすごい人なんだと改めて思いました」と喜びました。

    AI活用に詳しい研究者 “AI使う研究者も腰を抜かした”
    生命工学分野のAI活用に詳しく、自らもAIを研究に使っている北里大学未来工学部の齋藤裕教授は今回受賞の対象となった成果について、「創薬においては薬の標的となるタンパク質の構造を実験で調べる必要があったが、アルファフォールドのような予測精度が高いAIが出てきたことで、実験しなくても分かるようになった。実験で調べるのに比べ、コストが下がり素早く研究が行えるようになった。AIによる構造予測自体は長い研究の歴史があったがアルファフォールドのバージョン2で、今までの手法が過去になるぐらい劇的に精度が上がって、私たちのようなAIを使った研究をする人間も腰を抜かした」と話しています。

    さらに、「AIの研究者だけでなく生物の実験をしている人にも日常的に使われていることはすごいことで、十分にノーベル賞級の研究だと思う。特にたんぱく質を研究する分野に与えたインパクトは大きい」と述べ、受賞が決まった3人の功績をたたえました。

    一方でAIを研究に活用する際に、どこまでを委ねるかについては、「人間が幸せになったり豊かになったりするために研究している側面があるので、AIがいくら発展しても、何を幸せに感じるかは人間が定義していかないといけない。AIはできることが増えて非常に強力なツールなので、それと共存する中では、研究の方向付けは人間が人間のためにやらないといけない」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241009/k10014604671000.html

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  16. ノーベル文学賞に韓国の作家 ハン・ガン氏【速報中】
    2024年10月10日 21時32分

    ことしのノーベル文学賞に、韓国の現代文学を代表する作家のハン・ガン(韓江)氏が選ばれました。

    スウェーデンのストックホルムにある選考委員会は日本時間の10日午後8時すぎ、ことしのノーベル文学賞の受賞者に、韓国の現代文学を代表する作家のハン・ガン氏(53)を選んだと発表しました。

    ハン氏は1970年韓国の南西部クワンジュに生まれ、首都ソウルの大学で文学を学びました。

    1993年に詩人としてキャリアをスタートし、その後、小説家としての活動を始めました。

    代表作には2007年に発表された小説で、ある日、突然肉食を拒否するようになった女性の行動をきっかけに、家族の葛藤や、精神が崩れていく主人公の姿を描いた小説「菜食主義者」があります。

    この小説が高く評価され、2016年、ハン・ガン氏はアジアの出身者としては初めてイギリスで最も権威ある文学賞の翻訳部門にあたる「ブッカー国際賞」を受賞し、世界的に注目を集めました。

    多くの作品が日本語に翻訳され、日本でも人気の高い作家です。

    韓国人がノーベル賞に選ばれたのは、2000年に平和賞を受賞したキム・デジュン(金大中)元大統領に続いて2人目で、文学賞では初めてです。また、アジア出身の女性としても初めてとなります。

    選考委員会「現代の散文文学における革新的存在」
    選考委員会は選考理由について、「ハン・ガン氏の力強く詩的な散文体の文章は歴史的な心の傷と向き合いつつ、人間のもろさをあらわにしている。彼女はすべての作品を通して、心と体や、生と死の関係についてユニークな意識を持っていてそれゆえに、彼女の詩的で実験的な文体は現代の散文文学における革新的存在といえる」と評価しました。

    専門家「順当な結果」
    海外の文学に詳しい早稲田大学文学部の都甲幸治教授は、「『菜食主義者』でイギリスで権威ある文学賞の『ブッカー国際賞』を受賞されていて、順当な結果だと思う。韓国の作家としても、アジアの女性作家としてもノーベル文学賞を受賞したのは初めてとなり、画期的だ」と語りました。

    その上で、「『菜食主義者』をはじめ、女性として現代社会を生きていくうえでの困難さを扱っていて、感動的な作品も多い。韓国の音楽や映画も親しまれているが、これをきっかけに韓国の文学ももっと読まれるといいと思う」と話していました。

    韓国メディアも相次いで速報
    ノーベル文学賞にハン・ガン氏が選ばれたことについて、韓国メディアも相次いで速報で伝えています。

    大手紙の東亜日報は「ハン・ガン氏の作品は、人間の暴力性とそれに伴う人生の悲劇性を丹念に探求してきた」などと伝えています。

    ソウルでの反応 「誇らしい」「世界の人に知ってもらいたい」
    ハン・ガン氏がノーベル文学賞に選ばれたことについて、30代の男性は「キム・デジュン元大統領以来で、とても誇らしいです。世界の人が共感してくれる文学だと思います」と話していました。

    また、30代の女性は「韓国の女性が受賞することになりうれしいです。難しいテーマを直視する文学で、文章にとても力があり、世界の人にもっと知ってもらいたいです」と祝福していました。

    編集者「歴史の忘却に抵抗するような骨太の作品」
    ハン・ガンさんの作品「すべての、白いものたちの」を担当した河出書房新社の編集者の竹花進さんは、「韓国文学は日本ではよく読まれていますが、中でもハンさんはトップクラスの人気作家です。韓国の光州事件や済州島での弾圧事件をテーマとするなど、歴史の忘却に抵抗するような骨太の作品が特徴で、“新冷戦”とも呼ばれる今の世界の状況で読まれるべき作品だと思います」と話していました。

    また、「来日した際に、『自分という個人の内面を掘り下げると、その先は普遍につながる』と話されていたことが印象的でした。ノーベル賞をいつか取れるのではないかと思っていたのでとてもうれしいです」と話しています。

    新宿の書店 早くも特設コーナー設置
    東京都内の書店では、ハン・ガンさんが選ばれたことを受けて、早速、特設コーナーが設けられました。

    東京の紀伊國屋書店新宿本店では、受賞者の発表を行う会見の様子を店内のモニターで上映し、文学ファンたちが見守りました。

    午後8時すぎ、ハン・ガンさんの受賞が発表されると、歓声が上がり、続いて拍手がわき起こりました。

    書店ではもともと受賞が期待される作家として紹介していましたが、受賞を受けてハンさんの作品が次々と持ち込まれ、早速、特設コーナーが設けられました。

    30代の男性は「これまで韓国の作家の受賞はなかったので驚きました。一冊読んでみたいと思います」と話していました。

    ハンさんのファンで、作品の舞台を訪ねたという50代の女性は「ハン・ガンさんの作品や韓国文学が好きな友達と受賞を喜び合いたいです。今、ちょうど読んでいる新作も早く読みおえたいです」と話していました。

    同店の吉野祐司副店長は「アジアの女性作家が国際的に評価され、大変うれしいです。これをきっかけに韓国作家フェアなどを企画したいと思うので、多くの人に手にとってもらいたいです」と話していました。

    海外文学ファンが集まるイベントでは拍手
    ことしのノーベル文学賞の発表にあわせて海外文学ファンたちが集まるイベントが都内で開かれ、ことしの受賞者が発表されると驚きの声が上がっていました。

    このイベントは、首都圏の海外文学ファンのグループがノーベル文学賞の発表にあわせて毎年開いていて、東京・渋谷区の会場にはおよそ10人が集まりました。

    世界各国の作家の著作およそ130冊が持ち寄られ、参加者はそれぞれ読んだ作家の魅力を語りあいながら、発表の瞬間を待ちました。

    発表を待つ間、集まった人たちはことしの受賞者を予想しあい、中には韓国の作家のハン・ガン氏を推す声も上がっていました。

    そして午後8時ごろにハン・ガン氏の名前が発表されると、会場は沸き上がり、大きな拍手に包まれました。

    ハン・ガン氏が選ばれると予想していた40代の男性は、「いつかは受賞するだろうと思っていましたが、まだ若いのに受賞したことに驚いています。心の傷を乗り越えていく物語や美しい文体が特に好きなところです」と話していました。

    このイベントを主催した浦野喬さんは、「今回の発表には若い作家を評価しようという意思を感じられてよかったです。ノーベル賞をきっかけにいろいろな作品を知ることができる集まりを、来年も続けていきたいです」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241010/k10014605611000.html

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    1. ノーベル文学賞はアジア人女性で初、韓国の作家・韓江氏に…「菜食主義者」など日本でも多くの作品を翻訳
      2024/10/10 20:58

       スウェーデン・アカデミーは10日、2024年のノーベル文学賞を、韓国の女性作家の 韓江ハンガン さん(53)に授与すると発表した。韓国人にノーベル文学賞が授与されるのは初めてで、アジア人女性としても初となる。

       アカデミーは韓さんの作品について「歴史的なトラウマと 対峙たいじ し、人間の命のもろさを示す、強烈な詩的散文」と評価した。

       韓さんは1970年、韓国の光州で、作家の 韓勝源ハンスンウォン さんの娘として生まれた。

       戒厳令のもとで、民主化を求める学生や市民と軍が衝突した80年の「光州事件」を巡り、その後を生きた人々の心情をつづった「少年が来る」を執筆した。

       2016年には「菜食主義者」で、アジア人として初めて英国のブッカー国際賞を受賞。韓さんの作品として初めて邦訳され、日本国内でも大きな反響を呼んだ。

       韓さんには賞金1100万スウェーデン・クローナ(約1億6000万円)が授与される。

       韓江さんの作品は日本でも多くが翻訳されている。代表作「菜食主義者」(きむふな訳)のほか、今年春には、長編小説「別れを告げない」の日本語版(斎藤真理子訳)が刊行された。第2次世界大戦後の韓国・済州島で起きた「四・三事件」を扱い、幻想的でありながら、重い歴史に迫ったと、日本国内でも高く評価されていた。

       今年夏に本紙のメールインタビューに答えて、「済州島の天候を実際に感じながらたくさん歩いたことが、役に立ちました。風と雨と雪の中を」と書いた。「完成の喜びを味わいながら(原稿のデータが入った)USBメモリーをズボンのポケットに入れてずっと歩きました」と振り返った。

       韓国文学の翻訳書を主に出版する出版社、クオンの金承福社長によると、「菜食主義者」は約2万部が刊行されている。「弱い人から目を背けず、深い悲しみを描く作品はすばらしく、これから多くの人にますます読まれるのが楽しみです」と語った。
      https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/20241010-OYT1T50159/

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  17. ノーベル平和賞 日本被団協 被爆者の声を世界に発信
    2024年10月11日 18時41分

    日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は、核兵器廃絶を願う被爆者の声を唯一の戦争被爆国・日本から68年にわたって世界に発信してきました。

    広島と長崎に原爆が投下されてから9年後の1954年、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が、太平洋のビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験で被ばくしました。

    これをきっかけに、日本では原水爆禁止運動が高まり、2年後の1956年、被爆者の全国組織として日本被団協が結成されました。

    結成の宣言で、「人類は私たちの犠牲と苦難をまたふたたび繰り返してはなりません」と核兵器廃絶を訴えました。

    日本被団協は、原爆被害の実相を伝えるため積極的に海外に代表を派遣し、1982年には代表委員の山口仙二さんが、国連の軍縮特別総会で被爆者として初めて演壇に立ちました。

    14歳の時に長崎で被爆した山口さんは、やけどを負ったみずからの写真を示しながら、「ノーモア ヒロシマ ノーモア ナガサキ ノーモア ウォー ノーモア ヒバクシャ」と訴え核兵器の廃絶を迫りました。

    その後も、日本被団協は、国連や世界各地で原爆の写真展を開くなど地道な活動を続け、「ヒバクシャ」は世界に通じる言葉となりました。

    原爆投下から60年となる2005年にはノーベル平和賞の有力候補として挙げられ、受賞は逃したものの、ノーベル委員会の委員長が、「長年、核廃絶に取り組んできた」と敬意を表しました。

    2016年、原爆を投下したアメリカのオバマ前大統領が現職の大統領として初めて被爆地・広島を訪問した際は、代表委員の坪井直さんが「原爆投下は人類にとって不幸な出来事だった」と直接伝えました。

    日本被団協は、核兵器廃絶に向けた国際的な取り組みにも関わり、2017年に採択された核兵器禁止条約の交渉会議では、およそ300万人分の署名を集めて目録を提出し、条約の採択を後押ししました。

    条約の前文には、「被爆者が受けた容認し難い苦しみに留意する」、「被爆者が行っている努力を認識する」として、被爆者に寄り添うことばが盛り込まれました。

    そして、すみやかな核兵器の廃絶やすべての国が核兵器禁止条約に参加することを求める「ヒバクシャ国際署名」を続け、最終的に1370万人分あまりの署名を国連に提出しました。

    近年は新型コロナウイルスの影響や被爆者の高齢化で被爆体験を伝える催しの中止や縮小を余儀なくされていますが、オンラインを活用して被爆者の証言を伝える取り組みを進めているほか、おととし8月に開かれたNPT=核拡散防止条約の再検討会議で被爆者がスピーチを行うなど、核兵器の恐ろしさや悲惨さを証言し、核廃絶の必要性を世界に訴え続けています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241011/k10014607751000.html

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  18. 社説
    ノーベル平和賞 核の脅し封じる契機としたい
    2024/10/12 05:00

     ロシアによるウクライナ侵略で核の脅威がかつてなく高まる中、核兵器の廃絶を訴え続け、軍縮の機運を醸成してきたことが高く評価された。

     長年にわたる粘り強い活動が、世界に与えた影響は大きい。その栄誉を 称 たた えたい。

     日本の被爆者団体の全国組織である「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が、ノーベル平和賞に決まった。

     ノルウェーのノーベル賞委員会は授賞理由について、「たゆまぬ努力により、核兵器の使用は道徳的に容認できない、という国際規範が形成された」と説明した。

     広島、長崎は来年、原爆投下から80年の節目となる。被爆者は高齢化し、被爆体験を肉声で伝える人は減っている。被害の実相を世界に伝え、後世に残していく活動が重みを増していることも、授賞につながったのではないか。

     被団協の結成は、1954年、米国による太平洋のビキニ環礁での水爆実験で日本の漁船「第五福竜丸」が 被曝 ひばく したことがきっかけとなった。その2年後、広島、長崎の被爆者を中心に発足した。

     その後、「ノーモア・ヒバクシャ」をスローガンに国内外で署名活動や請願を続けた。こうした活動が実り、95年には被爆者援護法が施行された。

     被団協が特に国際的な注目を集めたのは、2016年に米国の現職大統領として初めてオバマ氏が広島を訪れた時のことだ。

     被団協の代表委員だった坪井直さんと握手した場面は、原爆を落とした米国と被爆者との和解の象徴として、世界に発信された。坪井さんは21年に亡くなった。

     だが、核を巡る情勢はむしろ悪化している。ロシアによる威嚇に加え、中国は核弾頭を増やしている。北朝鮮の核・ミサイル開発もアジアの安全を脅かしている。

     特にロシアは核使用の可能性をほのめかし、また、イスラエルはイランの核施設攻撃の可能性を捨てていない。核の恐怖を、戦況を有利にするための手段に使う傾向が強まっている。

     今回の授賞決定は、こうした動きに対する重い警告の意味も込められているのではないか。

     日本は、核廃絶への努力をこれまで以上に積極的に進める責任を負ったといえる。

     特に日本は、核兵器の使用がどれほど残虐な被害を人類に及ぼすかを体験した立場にある。核使用を容認するかのような風潮を食い止めるための国際世論形成に向けて、先頭に立つべきだ。
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20241012-OYT1T50030/

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  19. ノーベル経済学賞 アメリカの大学の研究者ら3人
    2024年10月14日 20時39分

    ことしのノーベル経済学賞に、アメリカのマサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授など3人の研究者が選ばれました。

    スウェーデンの王立科学アカデミーは日本時間の14日午後7時前、ことしのノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。

    受賞が決まったのは、
    マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授とサイモン・ジョンソン教授、それにシカゴ大学のジェームズ・ロビンソン教授の3人です。

    授賞理由は「制度がどのように形成され、国家の繁栄に影響を与えるかの研究」です。

    王立科学アカデミーは、3人がヨーロッパの植民地で導入されたさまざまな政治・経済制度を検証し、国家間の繁栄に大きな差があることについて、社会制度の根強い違いが1つの重要な原因になることを明らかにしたとしています。

    アセモグル氏とロビンソン氏は、共同で執筆した「国家はなぜ衰退するのか」の著作でも知られていて、この中でも繁栄する豊かな国と貧しい国との違いには、政治的な制度が関係していると指摘しています。

    王立科学アカデミーは「受賞者たちの研究は、法の支配が貧弱な社会や国民を搾取するような制度は成長やより良い変化をもたらさない理由を理解するのに役立っている」としています。

    アセモグル氏「すばらしい驚きと名誉得ることができた」
    ノーベル経済学賞の受賞が決まった3人のうち、アセモグル氏は報道陣の電話インタビューで受賞した際の気持ちを聞かれ、「驚きとショックでした。こんなことは予想していませんでした。いいキャリアを築くことは夢みてきましたが、それが実現したうえに、すばらしい驚きと名誉を得ることができました」と答えていました。

    アセモグル教授とは
    ことしのノーベル経済学賞に選ばれた研究者の1人、マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授は、アメリカとトルコの国籍を持つ57歳の経済学者です。

    1992年にイギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号を取得し、2000年からマサチューセッツ工科大学の教授を務めています。

    経済学にとどまらず、幅広い分野の著作があり、数多くの論文が引用される学者として知られていて、共同受賞が決まったマサチューセッツ工科大学のサイモン・ジョンソン教授と、シカゴ大学のジェームズ・ロビンソン教授と社会制度と国家の繁栄の関係などを研究してきました。

    また、アセモグル氏はAI=人工知能について、規制がないまま開発が進むことで、社会や経済などに幅広く悪影響を与える可能性があると警鐘を鳴らしていることでも知られています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241014/k10014607961000.html

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  20. 社説
    AI研究 ノーベル賞が新時代に入った
    2024/10/17 05:00

     今年のノーベル賞は、人工知能(AI)研究が席巻した。AI研究が社会や科学のあり方を大きく変えたことを印象づける授賞決定である。

     物理学賞は、カナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授らに決まった。脳の回路を模したコンピューターが自分で学習する深層学習(ディープラーニング)の手法を開発し、「AIのゴッドファーザー」と呼ばれる。

     この研究を基礎に、言語や画像を処理する生成AIの活用が広がった。その影響の大きさを考えれば、これまで受賞しなかったのは不思議にすら思える。

     ノーベル賞の自然科学部門は「生理学・医学」「物理学」「化学」の3分野に限られ、AIや情報科学の研究者は事実上、対象外だった。今回の選考委員会の決定は、画期的な転換と言えよう。

     化学賞には、ヒントン氏らが開発した深層学習を活用してたんぱく質の構造予測技術を開発した、英グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)らが選ばれた。

     たんぱく質は生き物の体を形作る重要な物質だが、その構造は複雑で、これまでは調べるのに数年かかっていた。ハサビス氏らのAI技術を使えば数分程度で構造が分かり、創薬や病気の研究が大きく進むことが期待されている。

     一方、AIは使い方次第で脅威にもなり得る。ヒントン氏は「人間より賢いシステムが生まれ、人を支配するのではないか」と警鐘を鳴らしてきた。授賞決定は、選考委のAIに対する懸念も反映していると受けとめるべきだ。

     新たな分野に光を当てようとする兆候は数年前からあった。2021年に真鍋淑郎博士が気候変動研究で物理学賞を受け、22年はスバンテ・ペーボ博士が古人類研究で生理学・医学賞となった。

     気候変動や人類学は、従来の3賞の枠組みには収まらない。近年は科学が複雑化し、分野横断的な研究が増えている。あえて伝統的な3賞の枠組みに当てはめる選考方法は、時代にそぐわなくなってきているのではないか。

     科学分野では3年連続で日本人の受賞はなかった。日本で学際的な新分野への対応が遅れていることと無縁ではないだろう。

     今月、東京工業大と東京医科歯科大が統合し「東京科学大」が発足した。こうした大胆な組織改革や学際研究の強化を急ぐべきだ。そうしないと、近い将来、ノーベル賞の受賞者数は大きく減っていくことは避けられない。
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20241017-OYT1T50005/

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  21. “世界最高精度”の光格子時計 1台5億円で受注販売を開始
    2025年3月5日 18時36分

    世界で最も正確な時計とされる「光格子時計」が実用化され、1台5億円で販売を開始すると、京都市の大手分析機器メーカーが発表しました。

    「光格子時計」は、東京大学の香取秀俊教授のグループが開発した時計で、レーザーの光で閉じ込めた原子の振動を計測することで、誤差が100億年に1秒程度になり、世界で最も正確な時計だとされています。

    京都市に本社がある大手分析機器メーカーの「島津製作所」は、この「光格子時計」を実用化し、受注販売を開始すると5日に発表しました。

    高さ1メートル余り、重さおよそ200キロで、価格は5億円からとなっていて、販売目標は3年間で10台としていますが、すでに国内外から複数の問い合わせがあるということです。

    「光格子時計」は、ノーベル賞の受賞も有力視される技術として注目されていて、高精度で時間を計測する必要がある次世代通信や、最先端の物理研究などに使われることが想定されています。

    島津製作所の西本尚弘 基盤技術研究所長は「光格子時計は将来、広く使われて、社会の基盤となる可能性を秘めている。今後も科学技術で社会に貢献できるよう努めたい」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250305/k10014740531000.html

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  22. イグ・ノーベル賞 研究テーマ“シマウシ” 牛を白黒に 効果は
    2025年9月19日 11時34分

    ノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究に贈られることしの「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、日本からは農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究員らのグループが受賞しました。その研究テーマは、「シマウマ」ならぬ「シマウシ」です。

    「イグ・ノーベル賞」は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、人を笑わせつつ考えさせる研究に贈られます。

    日本時間の19日、ことしの受賞者が発表され、日本からは、農研機構で研究員を務める兒嶋朋貴さんらの研究グループが「生物学賞」を受賞しました。

    研究グループは、シマウマが体のしま模様によって血を吸うハエからの攻撃を防いでいるとする研究結果に注目し、家畜の黒毛の牛に白黒の模様を描いて「サシバエ」や「アブ」を防ぐ効果があるかを調べました。

    その結果、模様を描いた牛は何も描かなかった牛に比べて足や胴体に付いたハエの数が半分以上減ったほか、首振りや足踏みなどハエを追い払う動作も減ったということです。

    この成果を応用することで、牛のストレスの軽減につながるだけでなく、虫刺されによる感染症を防ぐための殺虫剤の使用も減らせるということです。

    一方で、牛のしま模様のペイントは数日で落ちてしまうため、長期的な持続性を持つ技術の開発が課題だとしています。

    日本人がイグ・ノーベル賞を受賞するのは19年連続で、このほか、ナルシシストに「あなたは賢い」と伝えるとどうなるかや、トカゲがどの種類のピザを好むか、授乳中の母親がニンニクを食べると赤ちゃんの反応がどう変わるかについて調べた研究など、あわせて10の研究が受賞しました。

    血を吸う虫が寄りつきにくくなることを実験で確認
    ことしのイグ・ノーベル賞の「生物学賞」を受賞したのは、農業・食品産業技術総合研究機構の兒嶋朋貴研究員らのグループで、牛の体を塗料でシマウマのような模様にすることで、ハエやアブなど牛の血を吸う虫が寄りつきにくくなることを実験で確認したという研究です。

    実験は、兒嶋研究員が当時所属していた愛知県農業総合試験場が京都大学と共同で2017年から2018年にかけて行いました。

    実験では、黒毛の牛を、何も塗っていない通常の状態、白い塗料で「シマウマ」のような白と黒のしま模様にした状態、白い塗料の代わりに黒い塗料を塗った状態の3つに分けました。

    そして、同時に並べて30分間放置し、ハエやアブなどの虫が牛の体に付着した数や、頭や尻尾を振るなど虫を追い払うような行動を取った回数をそれぞれ観察しました。

    その結果、血を吸う虫の数は、平均で何も塗っていない牛が129匹、黒い塗料を塗った牛が112匹だったのに対して、白と黒のしま模様にした牛は56匹と半分以下でした。

    また、虫を追い払うような行動を取った回数は、30分あたりの平均で何も塗っていない牛が53回、黒い塗料を塗った牛が54回だったのに対して、白と黒のしま模様にした牛は40回で、25%程度少なくなりました。

    研究グループは、実験から黒毛の牛をシマウマのような模様にすれば虫を介した感染症を予防したり虫に血を吸われることによる牛のストレスを軽減したりする効果が期待できるとしています。

    山形県や岩手県などではすでに実証実験が行われいて、このうち、山形県小国町では2021年に地元の農家などの協力を得て、検証が行われ、研究結果と同様の効果が確認されたということです。

    兒嶋研究員「普及すれば殺虫剤等の使用を減らせる可能性」
    兒嶋研究員は「牛を飼う農家から血を吸う虫への対策について相談を受け、たまたまテレビでシマウマの模様が効果があるという仮説を知り、研究を始めました。受賞の知らせを聞き、とても驚きましたし、光栄ですが、未だに実感が湧かないのが正直なところです」と話していました。

    そして今後について「普及すれば殺虫剤等の使用を減らせる可能性があり、薬剤耐性などの問題にも有益なものになり得ると思います。いかに簡単にしま模様を施せるかや、長時間維持できるかが普及には肝要だと考えています。いつかそのような手法が開発されてほしいです」と話していました。

    セレモニーでは農研機構の研究員らのグループもスピーチ
    日本時間の19日にアメリカ・ボストンのボストン大学で行われたイグ・ノーベル賞の授賞セレモニーでは、農研機構の研究員らのグループもスピーチを行いました。

    はじめに兒嶋研究員が「同僚や友人、家族に感謝します。この受賞を糧にさらに研究を頑張りたいです」とあいさつしました。

    スピーチの最中、共同研究者たちが虫の絵をつけた棒を振って虫がたかる演出を行い、兒嶋研究員がジャケットを脱いでシマウマ模様のシャツ姿になって虫を追い払うと、会場は大きな笑いに包まれました。

    スピーチの後、兒嶋研究員はNHKの取材に対し「このような場に立つとは思ってもいなかったので、ただただ驚いていたが、式に参加して受賞したことを実感した。何が起こるかわからない科学の面白さを子どもたちにもわかりやすく伝えていきたい」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250919/k10014926741000.html

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  23. ノーベル賞 有力候補発表 日本人2人も 英学術情報サービス会社
    2025年9月25日 19時08分

    ことしのノーベル賞の発表が10月6日から始まるのを前に、イギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者22人を発表し、日本からは国立循環器病研究センターの元研究所長、寒川賢治さんと、久留米大学 名誉教授の児島将康さんが選ばれました。

    世界中の研究論文を分析するイギリスの学術情報サービス会社は、およそ6400万本の論文の引用回数などを分析して、ノーベル賞の受賞が有力視される研究者に「クラリベイト引用栄誉賞」を毎年贈っています。

    ことしは8か国の研究機関から22人が選ばれ、日本からはノーベル生理学・医学賞の有力候補として
    ▽国立循環器病研究センターの元研究所長、寒川賢治さんと
    ▽久留米大学 名誉教授の児島将康さんが選ばれました。

    2人は共同で研究を行い、1999年に胃から分泌される食欲などを調節するホルモンの「グレリン」を発見したことが評価されました。

    2人の発見は拒食症などの治療への応用が期待されています。

    記者会見に出席した寒川さんは「非常に光栄に思う。当時は世界中で『グレリン』の探索が行われていて、脳の中にあるのではないかと考えられていたが、ほかの場所も探したところ思いがけず胃から見つかった」と発見の経緯を振り返り、児島さんは「寒川さんとの受賞を誇らしく思う。食欲不振で悩む人たちに役立ててほしい」と話していました。

    「クラリベイト引用栄誉賞」は去年までに441人が受賞し、このうち83人がノーベル賞を受賞しています。

    ことしのノーベル賞の発表は来月6日の生理学・医学賞から始まり、7日に物理学賞、8日に化学賞、9日に文学賞、10日に平和賞、13日に経済学賞の発表がそれぞれ行われます。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250925/k10014932211000.html

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  24. あすからノーベル賞 各受賞者発表 日本から2年連続受賞なるか
    2025年10月5日午後5時59分

    ことしのノーベル賞受賞者の発表が、6日から始まります。去年は日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が平和賞を受賞していて、日本から2年連続の受賞となるか注目されます。

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は
    ▽6日が生理学・医学賞
    ▽7日が物理学賞
    ▽8日が化学賞
    ▽9日が文学賞
    ▽10日が平和賞
    ▽13日が経済学賞となっています。

    日本からは去年、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が50年ぶりに平和賞を受賞したほか、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含めてこれまで28人が受賞しています。

    このうち、今世紀に入ってから受賞した19人は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞いずれかで、この期間ではアメリカに次ぎイギリスと並んで2番目の多さです。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん以来、受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    ことしは去年の日本被団協に続き、日本から2年連続の受賞となるか注目されます。

    ノーベル賞の授賞式や晩さん会は12月にスウェーデンのストックホルムで開かれます。

    《ことしの注目候補は》
    ことしのノーベル賞で、受賞が有力視されている日本人の候補者をまとめました。

    生理学・医学賞(6日)

    初日に発表される生理学・医学賞はこれまでに5人の日本人が受賞しています。

    毎年注目されるのは日本に有力な研究者が多い免疫学の分野で
    ▽過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文さん
    ▽免疫の働きを強める「インターロイキン6」というたんぱく質を発見した大阪大学特任教授の岸本忠三さんがこれまでに国際的な学術賞を受賞するなどしています。

    また、病気の治療に貢献している研究者では
    ▽エイズの治療薬を世界で初めて開発した国立国際医療研究センター研究所長の満屋裕明さんが注目されています。

    このほかの分野では
    ▽細胞どうしを結びつけて臓器などを形づくる分子「カドヘリン」を発見した理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊さん
    ▽「小胞体」と呼ばれる細胞の器官が不良品のたんぱく質を修復したり分解したりする仕組みを解明した京都大学特別教授の森和俊さんも国際的な賞を受賞していて注目されています。

    さらに
    ▽胃から分泌される食欲などを調節するホルモンの「グレリン」を発見した国立循環器病研究センター元研究所長の寒川賢治さんと久留米大学名誉教授の児島将康さんは9月、イギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として発表しています。

    物理学賞(7日)
    2日目の物理学賞は、アメリカ国籍を取得した人を含め、これまで日本から12人が受賞しています。

    注目されている研究者としては
    ▽消費電力が極めて少ないコンピューター用のメモリーの実現につながる「マルチフェロイック物質」の特徴を解き明かした理化学研究所の領域総括の十倉好紀さん
    ▽電力ロスが少ない次世代の送電線などへの応用も期待される「鉄系超電導物質」を発見した東京科学大学栄誉教授の細野秀雄さんが、論文の引用回数の多さなどから注目されているほか
    ▽100億年で1秒ほどしか狂わない極めて正確な「光格子時計」と呼ばれる時計を開発した、東京大学教授の香取秀俊さんなどが注目されています。

    化学賞(8日)
    化学賞はこれまで日本から8人が受賞していて、ほかにも「ノーベル賞級」とされる成果をあげている日本の研究者が多くいます。

    このうち
    ▽東京大学卓越教授の藤田誠さんは、分子どうしがひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象の研究で国内外で高く評価されているほか
    ▽京都大学理事の北川進さんは「多孔性金属錯体」と呼ばれる極めて小さい穴を多く持った材料を開発し、材料科学に新たな分野を確立したとして世界的に注目されています。

    また
    ▽水中の「酸化チタン」に紫外線を当てると、水が水素と酸素に分解される現象を世界で初めて発見し、有害物質の分解などに利用される「光触媒」の実用化の道を開いた東京理科大学栄誉教授の藤嶋昭さん
    ▽藤嶋さんとともに「光触媒」の研究に取り組み、汚れや有害物質のほか、細菌やウイルスを分解する力があることを明らかにした科学技術振興機構の理事長の橋本和仁さんも受賞が期待されています。

    このほか
    ▽東京大学大学院の教授の菅裕明さんは、人工的に作られたアミノ酸から自然界に存在しない独自の構造や性質をもった「特殊ペプチド」と呼ばれる分子を自在に合成する技術を開発し、おととし、すぐれた業績をあげた科学者などに贈られるイスラエルの「ウルフ賞」を受賞しました。

    文学賞(9日)
    4日目の文学賞ではこれまでに2人の日本人が受賞しています。

    注目されるのは
    ▽作品が50以上の言語に翻訳され世界中で読まれている村上春樹さんです。チェコの「フランツ・カフカ賞」やイスラエルの「エルサレム賞」など、海外の賞を複数受賞していて、毎年、イギリスのブックメーカーが行っている受賞者を予想する賭けでは“有力候補”の1人となっています。

    また
    ▽長年ドイツで暮らし、日本語とドイツ語で小説を執筆している多和田葉子さんも、ドイツの「クライスト賞」や、アメリカの「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれるなど、注目されています。

    《これまでの日本からの受賞》

    ノーベル平和賞を受賞した日本被団協(2024年)
    日本からのこれまでのノーベル賞受賞は
    ▽個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め28人で
    ▽団体では去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の1団体です。

    日本人が初めてノーベル賞を受賞したのはいまから76年前、戦後まもない1949年で、湯川秀樹さんが物理学賞を受賞しました。

    その後、
    ▽1965年に朝永振一郎さんが物理学賞
    ▽1968年に川端康成さんが日本人初の文学賞
    ▽1973年に江崎玲於奈さんが物理学賞
    ▽1974年に佐藤栄作 元総理大臣が日本人で初めての平和賞を受賞しました。

    日本人初の化学賞は1981年、福井謙一さんが受賞。

    初の生理学・医学賞は1987年に利根川進さんが受賞しました。

    1994年には大江健三郎さんが文学賞を受賞しています。

    2000年以降、受賞者は急増します。

    ▽2000年に白川英樹さん
    ▽2001年に野依良治さん
    ▽2002年に田中耕一さんと3年連続で日本人が化学賞を受賞します。

    田中さんが化学賞を受賞した2002年には小柴昌俊さんが物理学賞を受賞し、初めて同じ年に2人が受賞しました。

    2008年には物理学賞で
    ▽南部陽一郎さん
    ▽小林誠さん
    ▽益川敏英さんの3人が同時に受賞したほか
    ▽下村脩さんが化学賞を受賞し、この年だけで4人が受賞しました。

    また2010年には化学賞で鈴木章さんと根岸英一さんがダブル受賞し、2012年には山中伸弥さんが生理学・医学賞を受賞しました。

    2014年には
    ▽赤崎勇さん
    ▽天野浩さん
    ▽中村修二さんの3人が物理学賞を受賞しました。

    そして、2015年には
    ▽生理学・医学賞で大村智さん
    ▽物理学賞で梶田隆章さんが受賞し、この年も2つの賞で受賞者が出ました。

    さらに、2016年に大隅良典さんが生理学・医学賞を受賞し、再び日本人が3年連続で受賞しました。

    その後も2018年に本庶佑さんが生理学・医学賞、
    2019年に吉野彰さんが化学賞を受賞し、2年連続で日本人が受賞。

    2021年には真鍋淑郎さんが物理学賞を受賞しました。

    そして、2024年に被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきた日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が平和賞を50年ぶりに受賞しました。

    文部科学省によりますと、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞でのノーベル賞設立以降の日本人の受賞者数は25人で、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスに次いで世界で5番目となっていて、今世紀に入ってからに限ると19人で、アメリカに次いでイギリスと並ぶ2番目となっています。

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    1. 【受賞者 受賞分野一覧】
      受賞者氏名(受賞年・受賞時年齢)受賞分野「研究内容(文科省)」

      ▽湯川秀樹(1949・42)物理「核力の理論的研究に基づく中間子の存在の予想」

      ▽朝永振一郎(1965・59)物理「量子磁気力学の分野における基礎研究と素粒子物理学についての深い結論」

      ▽川端康成(1968・69)文学「(代表作)山の音 雪国 伊豆の踊り子」

      ▽江崎玲於奈(1973・48)物理「半導体内および超伝導体内の各々におけるトンネル効果の実験的発見」

      ▽佐藤栄作(1974・73)平和「非核三原則の宣言など」

      ▽福井謙一(1981・63)化学「化学反応過程の理論的研究」

      ▽利根川進(1987・48)生理・医「抗体の多様性に関する遺伝的原理の発見」

      ▽大江健三郎(1994・59)文学「(代表作)飼育 万延元年のフットボール 新しい人よ眼ざめよ」

      ▽白川英樹(2000・64)化学「導電性高分子の発見と発展」

      ▽野依良治(2001・63)化学「キラル触媒による不斉反応の研究」

      ▽小柴昌俊(2002・76)物理「天文物理学、特に宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献」

      ▽田中耕一(2002・43)化学「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」

      ▽南部陽一郎(2008・87)物理「素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見」

      ▽小林誠(2008・64)、益川敏英(2008・68)物理「小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献」

      ▽下村脩(2008・80)化学「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と生命科学への貢献」

      ▽根岸英一(2010・75)、鈴木章(2010・80)化学「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング反応の開発」

      ▽山中伸弥(2012・50)生理・医「成熟細胞が、初期化され多能性を獲得し得ることの発見」

      ▽赤崎勇(2014・85)、天野浩(2014・54)、中村修二(2014・60)物理「明るく省エネルギーの白色光源を可能にした効率的な青色発光ダイオードの発明」

      ▽大村智(2015・80)生理・医「線虫の寄生によって生じる感染症に対する画期的治療法の発見」

      ▽梶田隆章(2015・56)物理「ニュートリノが質量を持つことの証拠であるニュートリノ振動の発見」

      ▽大隅良典(2016・71)生理・医「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」

      ▽本庶佑(2018・76)生理・医「負の免疫制御の抑制によるがん治療の発見」

      ▽吉野彰(2019・71)化学「リチウムイオン電池の開発」

      ▽真鍋淑郎(2021・90)物理「変動制の定量化・信頼性の高い地球温暖化予測を実現する地球気候の物理モデルについての研究」

      ▽日本被団協(2024)平和「核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が2度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」

      賞別の人数(去年まで)
      ◇物理学賞:12人

      ◇化学賞:8人

      ◇生理学・医学賞:5人

      ◇文学賞:2人

      ◇平和賞:1人+1団体

      ◇経済学賞:0人
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014941411000

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  25. ノーベル賞の発表きょうから始まる 日本から2年連続受賞なるか
    2025年10月6日午前6時05分

    ことしのノーベル賞受賞者の発表が、6日から始まります。去年は日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が平和賞を受賞していて、日本から2年連続の受賞となるか注目されます。

    ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈るとされています。

    ことしの受賞者の発表は
    ▽6日が生理学・医学賞
    ▽7日が物理学賞
    ▽8日が化学賞
    ▽9日が文学賞
    ▽10日が平和賞
    ▽13日が経済学賞となっています。

    日本からは去年、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が50年ぶりに平和賞を受賞したほか、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含めてこれまで28人が受賞しています。

    このうち、今世紀に入ってから受賞した19人は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学系の3賞いずれかで、この期間ではアメリカに次ぎイギリスと並んで2番目の多さです。

    一方、文学賞は1994年の大江健三郎さん以来、受賞がなく、経済学賞を受賞した人はいません。

    ことしは去年の日本被団協に続き、日本から2年連続の受賞となるか注目されます。

    ノーベル賞の授賞式や晩さん会は12月にスウェーデンのストックホルムで開かれます。

    6日は生理学・医学賞 日本の候補者は
    6日はノーベル生理学・医学賞の発表日です。

    スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会が、日本時間の6日午後6時半からことしの受賞者を発表します。

    生理学・医学賞では、これまで5人の日本人が受賞していてます。

    毎年注目されるのは日本に有力な研究者が多い免疫学の分野で、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文さんや、免疫の働きを強める「インターロイキン6」というたんぱく質を発見した大阪大学特任教授の岸本忠三さんがこれまでに国際的な学術賞を受賞するなどしています。

    また、病気の治療に貢献している研究者では、エイズの治療薬を世界で初めて開発した国立国際医療研究センター研究所長の満屋裕明さんが注目されています。

    このほかの分野では、細胞どうしを結びつけて臓器などを形づくる分子「カドヘリン」を発見した理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊さんや、「小胞体」と呼ばれる細胞の器官が不良品のたんぱく質を修復したり分解したりする仕組みを解明した京都大学特別教授の森和俊さんも国際的な賞を受賞していて注目されています。

    さらに、胃から分泌される食欲などを調節するホルモンの「グレリン」を発見した国立循環器病研究センター元研究所長の寒川賢治さんと久留米大学名誉教授の児島将康さんは9月、イギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として発表しています。
    https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014941421000

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  26. 【速報】生理学・医学賞に坂口志文さん 免疫学で優れた業績
    2025年10月6日午前11時46分
    (2025年10月6日午後7時18分更新)

    ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」という細胞を発見するなど、免疫学の分野で優れた業績をあげた、大阪大学特任教授の坂口志文さん(74)ら3人が選ばれました。
    日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目です。

    坂口さん「うれしく思っています」

    坂口さんは午後6時40分ごろ大阪大学内の施設を出る際、報道陣から「受賞おめでとうございます」と声をかけられると、「うれしく思っています」と述べて、笑顔で車に乗り込んでいました。

    大阪大学は坂口さんがことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれたことを受けて、このあと午後8時から、本人が出席し、大学で記者会見を開くと発表しました。

    坂口さんは滋賀県長浜市出身の74歳。

    1976年に京都大学医学部を卒業し、その後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学などで免疫の研究に取り組みました。

    そして、京都大学に戻って教授を務め、「京都大学再生医科学研究所」の所長を経て、現在は、「大阪大学免疫学フロンティア研究センター」の特任教授を務めています。

    体を守るはずの免疫機能が自分の体を攻撃することで起こる病気の仕組みなどの解明に取り組み、1995年に過剰な免疫反応を抑えるリンパ球の一種、「制御性T細胞」という細胞があることを突き止めました。

    さらに「制御性T細胞」の数を減らしたり、働きを抑えたりすると、がん細胞に対する免疫を強化できることや、逆に、この細胞を増やしたり働きを活発にしたりすると、臓器移植に伴う拒絶反応を抑える効果があることなどを明らかにしました。

    これらの研究成果は、免疫に関係する病気の治療や予防につながると期待されています。

    こうした業績により、坂口さんは2015年にカナダの国際的な医学賞、「ガードナー国際賞」、2017年にはノーベル賞の受賞者を決めている、スウェーデン王立科学アカデミーが選ぶ「クラフォード賞」、さらに2020年には、ドイツの権威ある賞、「コッホ賞」を受賞しています。

    また2019年には文化勲章も受章しています。

    日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目です。

    生理学・医学賞では7年前の本庶佑さんに続いて6人目です。

    《今後の注目候補は》
    ことしの受賞者の発表は
    ▽6日が生理学・医学賞
    ▽7日が物理学賞
    ▽8日が化学賞
    ▽9日が文学賞
    ▽10日が平和賞
    ▽13日が経済学賞となっています。

    物理学賞(7日)
    2日目の物理学賞は、アメリカ国籍を取得した人を含め、これまで日本から12人が受賞しています。

    注目されている研究者としては
    ▽消費電力が極めて少ないコンピューター用のメモリーの実現につながる「マルチフェロイック物質」の特徴を解き明かした理化学研究所の領域総括の十倉好紀さん
    ▽電力ロスが少ない次世代の送電線などへの応用も期待される「鉄系超電導物質」を発見した東京科学大学栄誉教授の細野秀雄さんが、論文の引用回数の多さなどから注目されているほか
    ▽100億年で1秒ほどしか狂わない極めて正確な「光格子時計」と呼ばれる時計を開発した、東京大学教授の香取秀俊さんなどが注目されています。

    化学賞(8日)
    化学賞はこれまで日本から8人が受賞していて、ほかにも「ノーベル賞級」とされる成果をあげている日本の研究者が多くいます。

    このうち
    ▽東京大学卓越教授の藤田誠さんは、分子どうしがひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象の研究で国内外で高く評価されているほか
    ▽京都大学理事の北川進さんは「多孔性金属錯体」と呼ばれる極めて小さい穴を多く持った材料を開発し、材料科学に新たな分野を確立したとして世界的に注目されています。

    また
    ▽水中の「酸化チタン」に紫外線を当てると、水が水素と酸素に分解される現象を世界で初めて発見し、有害物質の分解などに利用される「光触媒」の実用化の道を開いた東京理科大学栄誉教授の藤嶋昭さん
    ▽藤嶋さんとともに「光触媒」の研究に取り組み、汚れや有害物質のほか、細菌やウイルスを分解する力があることを明らかにした科学技術振興機構の理事長の橋本和仁さんも受賞が期待されています。

    このほか
    ▽東京大学大学院の教授の菅裕明さんは、人工的に作られたアミノ酸から自然界に存在しない独自の構造や性質をもった「特殊ペプチド」と呼ばれる分子を自在に合成する技術を開発し、おととし、すぐれた業績をあげた科学者などに贈られるイスラエルの「ウルフ賞」を受賞しました。

    文学賞(9日)
    4日目の文学賞ではこれまでに2人の日本人が受賞しています。

    注目されるのは
    ▽作品が50以上の言語に翻訳され世界中で読まれている村上春樹さんです。チェコの「フランツ・カフカ賞」やイスラエルの「エルサレム賞」など、海外の賞を複数受賞していて、毎年、イギリスのブックメーカーが行っている受賞者を予想する賭けでは“有力候補”の1人となっています。

    また
    ▽長年ドイツで暮らし、日本語とドイツ語で小説を執筆している多和田葉子さんも、ドイツの「クライスト賞」や、アメリカの「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれるなど、注目されています。

    (以下略)
    https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014942061000

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    1. ノーベル生理学・医学賞に坂口志文さんら 免疫学で優れた業績
      2025年10月6日午前11時46分
      (2025年10月7日午前1時50分更新)

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」という細胞を発見するなど、免疫学の分野で優れた業績をあげた、大阪大学特任教授の坂口志文さん(74)がアメリカの2人の研究者とともに選ばれました。
      日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目です。

      過剰な免疫反応抑える「制御性T細胞」発見
      坂口さんは滋賀県長浜市出身の74歳。1976年に京都大学医学部を卒業し、その後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学などで免疫の研究に取り組みました。

      そして、京都大学に戻って教授を務め、「京都大学再生医科学研究所」の所長を経て、現在は、「大阪大学免疫学フロンティア研究センター」の特任教授を務めています。

      体を守るはずの免疫機能が自分の体を攻撃することで起こる病気の仕組みなどの解明に取り組み、1995年に過剰な免疫反応を抑えるリンパ球の一種、「制御性T細胞」という細胞があることを突き止めました。

      さらに「制御性T細胞」の数を減らしたり、働きを抑えたりすると、がん細胞に対する免疫を強化できることや、逆に、この細胞を増やしたり働きを活発にしたりすると、臓器移植に伴う拒絶反応を抑える効果があることなどを明らかにしました。

      これらの研究成果は、免疫に関係する病気の治療や予防につながると期待されています。

      こうした業績により、坂口さんは2015年にカナダの国際的な医学賞、「ガードナー国際賞」、2017年にはノーベル賞の受賞者を決めている、スウェーデン王立科学アカデミーが選ぶ「クラフォード賞」、さらに2020年には、ドイツの権威ある賞、「コッホ賞」を受賞しています。また2019年には文化勲章も受章しています。

      坂口さんは同じ分野で研究してきたアメリカの研究機関でシニアプログラムマネージャーを務めるメアリー・ブランコウさん、アメリカの医療関連企業の科学顧問を務めるフレッド・ラムズデルさんとともに選ばれました。

      日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目です。

      生理学・医学賞では7年前の本庶佑さんに続いて6人目です。

      NHK取材に坂口さん「本当にうれしい驚き 基礎研究への支援を」
      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれた坂口志文さんがNHKの取材に応じ、受賞の喜びを語りました。

      いまの気持ちについて坂口さんは「本当にうれしい驚きというか、非常に光栄なことだと思っている。電話を受けたときには妻もそばにいたので喜んでくれた」と話しました。

      また、これまでの研究の道のりについて「制御性T細胞、免疫反応を抑えるリンパ球というのは、あまり人気のある考え方ではなかったが、私たちも含め、この細胞を研究していくと、このリンパ球がヒトの病気に重要であり、異常があるとさまざまな病気が起きること、そして、治療や予防につながるものだということがだんだん明らかになってきた。そういう意味で今回の受賞につながったと思っている」と振り返りました。

      そして治療への応用を目指した研究が進められていることについて「このリンパ球をうまく増やすことができれば、いまは治療法がないような自己免疫疾患やアレルギー、それに臓器移植に伴う拒絶反応を抑える治療などにつながる。また、うまく免疫を抑える力を弱めることができれば、免疫でがんを治療することにも使えるので、広く使えるようになると考えている」と期待を示しました。

      一方、いまの日本の科学研究の現状についての質問に対しては「日本が科学立国としてやっていくには、やはり資金が必要だというのは残念ながら事実だ。いわゆる基礎研究、実際の応用まではまだ少し距離があるような研究への支援が育っていくことで、本当に人の健康に役に立つようなものが出てくるはずだ。そのため実用化前の段階、あるいはもっと基礎的な段階からの支援をお願いしたいと思う」と話しました。

      受賞理由「難題に対する発見を成し遂げた」
      ノーベル生理学・医学賞を選考する委員会は、3人の功績について「1世紀以上にわたって免疫学者を悩ませてきた『免疫システムが感染症を防御しながら自らを攻撃する反応を回避する仕組みをどう維持しているのか』という難題に対し『制御性T細胞』という細胞を定義し、重要性を明らかにする発見を成し遂げた」と説明しています。

      その上で坂口さんの貢献について「免疫制御の分野は、1980年代後半から1990年代にかけて、新たな進展を見せ、その中心的な役割を坂口氏らの研究グループが果たした。坂口氏らの発見は免疫応答を抑制する能力を持つT細胞の存在の確固たる証拠を提供した。坂口氏がこうして制御性T細胞の定義を示したことで、この用語が科学界で広く受け入れられるようになった」と評価しています。

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    2. 《坂口志文さん会見》

      「大変光栄に思っている」
      坂口さんは会見の冒頭で「今回このような形でノーベル賞をいただくことになり、大変光栄に思っています。この間、いろいろな方と一緒に研究してきて、学生や共同研究者にお世話になりました。深く感謝しています」と述べました。

      「免疫研究分野の発展を望んでいる」
      坂口さんは「今回の受賞を機会に、免疫研究の分野がますます発展して研究が進み、臨床の場で応用できるような方向に進展していくことを望んでいるし、これからももう少し私たちも寄与できればと考えている」と話しました。

      「うれしい驚きに尽きる」
      坂口さんは「うれしい驚きということに尽きます。私たちの研究がもう少し臨床で役に立ち発展すれば受賞というご褒美があるかなと思っていましたが、この時点でこのような名誉をもらったことは驚きであるし、光栄に思っています。長く家内と一緒にやってきたので喜んでくれればと思っていましたし、研究は1人では出来ず、学生や共同研究者など長い間いろんな人と一緒にやってきたので、感謝しています」と述べました。

      「私たちのアイデアはあまり人気なかった」
      坂口さんは「自分を守るべき免疫反応が時に自分を攻撃するメカニズムが何かというのが最初の興味で、研究していく価値があると思ってやってきました。ただ、免疫反応を抑えるリンパ球がいるという私たちのアイデアはあまり人気があるものではなく、研究費を稼ぐところでは少し苦労したかもしれません。でも、同じような考えを持っている人は世界中にいて、その人たちと一緒にやりながらだんだんその分野が大きくなってきたということで、ある意味そういう人たちを代表した受賞だと思っています」と述べました。

      「治療難しい病気も解決策は必ず見つかる」
      坂口さんは「医学というのは進歩していきます。私たちが子どもの頃と現在を比べても、感染症の治療法もワクチンもやはり進歩してきている。そういう意味で、まだまだ解決するべき治療法を見つけなければいけない病気はたくさんある。そのひとつは自己免疫かもしれないしほかにもある。基礎研究が進み、それが実際の人の疾患の治療予防につながっていくこと、私たちは望むらくはそうしたひとつの例になると思う。治療が難しいとされる病気も有効な解決策や予防法は必ず見つかると私は信じています」と述べました。

      「興味を持ち続けて」
      坂口さんは「世の中にはおもしろいことや興味をそそるようなことはたくさんあります。英語でもスポーツでも、サイエンスでもいいと思いますが、興味を持ち続けていろんな試みをしていくと、興味もだんだん洗練されて強くなっていきます。興味のあることを大切にして、それを続けることで新しいものが見えてきて、興味がだんだん形としてはっきりしてくる。気がついたらおもしろい境地に達しているということが起これば、サイエンスに限らずどんな分野でもおもしろいかなと思います」と述べました。

      「治療や予防につながるようなこともやりたい」
      坂口さんは「仕事ができる間は続けたいし、これまで基礎研究をやってきましたが、病気の治療や予防につながるようなこともやっていきたい。私たちの研究分野が進んでいくように寄与できたらと思います」と述べました。

      座右の銘は「一つ一つ」
      坂口さんは座右の銘を聞かれると「自分に言い聞かせるとするならば、“一つ一つ”ということになります。研究の実験もそうですし、論文も書かなければいけませんので、一つ一つ仕上げていく。高尚な四字熟語ではないのですが、あえて言えばそういうことになります」と述べました。

      「サイエンスは一直線ではない」
      坂口さんは会見で「サイエンスは一直線で進んでいくものではなく、その時代の制限の中でどこまでものが見えるかということでやる。その時代のテクノロジーが追いつかないためにうまく証明できないことも起こりえるが、長い目で見ると発見された事実は間違いではないわけで、その解釈や広く深い理解は時代が進むにつれて深まると思う。私たちの前にもいろいろな人の仕事があり、それが進んでいくと昔の仕事も今の目から見ると、実はこういうことだという理解になると思う。やはりサイエンスの中でいろいろな人のいろいろな形での寄与があり、私たちがやったこともまた何年かあとには新しい考え方になるかもしれない」と話しました。

      「臨床の方との共同研究は非常に大切」
      坂口さんは共同研究を行ってきたほかの2人の受賞者について「自分にないもの、そういう人たちとの共同研究は楽しんできたし、ありがたく思っている。臨床の方との共同研究は非常に大切に思っている」と話しました。

      「新しい原理に達すると若いなりに思った」
      坂口さんは会見で「愛知県がんセンターに入った時の決断は現在につながっている。そこで非常におもしろい研究をやっていて、もう少し深くやれば何か新しい原理に達すると若いなりに思った。そこで勉強させてもらい、そのころの研究を一般化して進めていくと『制御性T細胞』の発見につながっていった」と振り返りました。

      「育ててくれた両親にも感謝」
      坂口さんは会見で高校まで過ごした滋賀県長浜市について、「びわ湖や伊吹山に近く、なかなかいいところで育ったと思っています。育ててくれた両親にも感謝しています。近所の方々にもお世話になっているので感謝しています」と話していました。

      「がんは治せる時代に必ずなる」
      坂口さんは、会見の途中で石破総理大臣からの電話を受け、「40年くらい研究されて受賞につながったのですね」と声をかけられると、「頑固にやってきたことがきょうにつながったんだと思います」と振り返りました。

      そして、今回の研究はがんの治療につながるのかと問われると、「ウイルスや細菌に対して免疫反応が起こるように、自分から出てきたがん細胞に対しても免疫反応を作れる。それでがんが退治できれば理想的な治療法になり、そういう方向に進むべきだと考えています」などと説明しました。

      その上で、「そんな夢のような時代は何年くらいで来ますか」と問われると、坂口さんは「20年くらいの間にそこまでいけるのではないかと思います。サイエンスは進んでいくので、そのうちがんは怖い病気ではなく、治せるものだという時代に必ずなると思っています」と答えていました。

      「支援を期待したい」
      坂口さんは会見で、「研究を続けるために、財団の奨学金を得ることができた。奨学金を得ることができたのは8年間だったのでじっくり研究できた。そういう支援組織が大事で、たとえばアフリカの感染症の支援を重点的にやるといった民間の支援組織や財団がたくさんできて、いろいろなサポートがあるのが社会が成熟することだと思うし日本ではそういう形での支援を期待したい」と述べました。

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    3. 同時受賞の2人の貢献は
      坂口さんとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したのは、いずれもアメリカのシアトルにあるシステム生物学研究所のメアリー・ブランコウさんと、サンフランシスコにあるソノマ・バイオセラピューティクス社のフレッド・ラムズデルさんです。

      坂口さんの発見した「制御性T細胞」の存在に当時、多くの研究者が、懐疑的だった中、その存在を裏付ける決定的な研究成果を挙げたことが評価されました。

      2人は、免疫の制御ができないマウスを研究することで、みずからの免疫が自分の体を攻撃してしまう原因となる変異遺伝子を発見し、この遺伝子が、ヒトの自己免疫疾患にも関係していることを突き止めました。

      その後、坂口さんがこの遺伝子と「制御性T細胞」との関係も明らかにし、これらの発見が自己免疫疾患やがんなどの治療法の開発に新たな道を開いたとされています。

      受賞発表の瞬間は

      《関係者からも喜びの声》
      坂口さんと同じ研究センター 審良特任教授「花開いた」
      坂口さんと同じ「大阪大学免疫学フロンティア研究センター」で免疫学の研究をしている審良静男特任教授は、ノーベル生理学・医学賞が発表された直後にNHKの電話インタビューに応じ「とにかく、おめでとうという気持ちでいっぱいだ。『制御性T細胞』をずっと研究されてきたことが花開いたと思う。大阪大学にとっても大きな受賞になった」と話しました。

      また、坂口さんの研究への姿勢について「とても真摯で、間違ったデータはまず出さない。研究の内容はいつも本当に正確で、キーポイントになる実験を重ねていた。この受賞をきっかけに『制御性T細胞』が将来、がんや自己免疫疾患の治療につながるよう、今後もがんばってほしい」と話していました。

      2012年に受賞 山中教授「心から敬意表する」
      2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は京都大学iPS細胞研究所のSNSで「坂口先生ご受賞おめでとうございます。坂口先生は、免疫学における常識を覆され、自己免疫疾患やがん、さらには臓器移植など、幅広く医学に大きく貢献されました。ご業績に心から敬意を表します」とコメントしています。

      自民 高市総裁 “攻めの予防医療を応援”SNSに投稿
      自民党の高市総裁は7日午前、旧ツイッターの「X」に「最高に嬉しい日になりました。坂口先生、ご一緒に研究されてきた皆様、おめでとうございます!」と投稿しました。

      その上で「免疫に関する研究を続けてこられ、更年期の女性が罹りやすい関節リウマチなどの患者を多く救って下さった事だと思います。私は大阪大学発のお薬のお陰で元気になりましたよ。健康医療安全保障政策も掲げて闘った自民党総裁選挙でした。攻めの予防医療とともに、基礎研究から実用化まで応援を続けられる環境作り、頑張ります!」としています。

      坂口さん出身地 滋賀・長浜から喜びの声
      坂口さんの出身地、滋賀県長浜市の市役所では、坂口さんの兄の偉作さんや長浜北高校の同級生たちがノーベル生理学・医学賞の発表を見守りました。

      午後6時半すぎにインターネットの中継で受賞者に選ばれたことが発表されると、大きな歓声と拍手が起こりました。そして集まった人たちで「祝ノーベル賞受賞」という手作りのうちわや横断幕を掲げ、万歳をして祝っていました。

      兄の坂口偉作さんは「ようやくとれたという感じです。去年1月に亡くなった母が待ち焦がれていたので、ちょっと間に合わなかったのが残念です。また、志文が通っていた高校の校長だった父親が、執念でとらせたと思います。あすには父と母の墓前に『やっととれた』と報告したいです」と話していました。

      長浜北高校の同級生の1人は「やっとおめでとうと言えてうれしい限りです。一つ一つ課題を克服してきたことは、私たちも誇りに思います。若い研究者の支えにもなってほしいと思います。落ち着いたら長浜に帰ってきて、楽しく語り合いたいです。亡くなった担任の先生も、どこかでほほえんでいると思います」と話していました。

      大学院の学生「誇らしいこと」
      大阪大学の学生からは祝福の声が聞かれました。大阪大学の大学院に通う学生は「誇らしいことで、自分も研究している立場なのですごく刺激になります」と話していました。

      大学院に通う女子学生は「誇りに思いますし、自分も人の役に立つ研究をしたいと思いました。もし見かけたら、声をかけてみたいです」と話していました。

      坂口さんと同じ施設で研究を行っているという40代の大学職員の女性は「ずっと受賞するのではないかと言われていたので、ついに受賞が決まってよかったと思います」と話していました。

      (以下略)
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014942061000

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    4. ノーベル賞 坂口志文さん“受賞を機に 免疫研究分野 発展を”
      2025年10月7日午前5時23分

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれた大阪大学特任教授の坂口志文さん(74)が6日夜、記者会見し「受賞を機会に、免疫研究の分野が発展して、研究が進むことを望んでいる」などと述べ、今後も研究を続け、病気の治療や予防につなげたいと語りました。

      大阪大学特任教授の坂口さんは、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」という細胞を発見するなど、免疫学の分野で優れた業績をあげたとして、アメリカの研究者2人とともに、ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれました。

      受賞の発表を受けて6日夜、大学で記者会見が開かれ、坂口さんは「大変光栄で、一緒に研究してきた学生や共同研究者に深く感謝している」と述べました。

      その上で「受賞を機会に、免疫研究の分野が発展して研究が進み、臨床の場で応用できるよう進展していくことを望んでいる。治療が難しい病気も有効な解決策や予防法は必ず見つかると信じているし、それに向けて今後も関わっていきたい」と抱負を語りました。

      日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目となります。

      坂口さんは7日、大学の本部を訪れ、教職員らに改めて受賞を報告する予定です。

      「制御性T細胞」とは
      私たちの体の中に病気の原因となる細菌やウイルスなどの異物が侵入した際、それを攻撃し、排除するために働くのが免疫で、ヘルパーT細胞やキラーT細胞など、さまざまな種類の細胞が担っています。

      ただ、何らかの原因でこうした免疫細胞が正常な組織まで攻撃してしまうことがあり、アトピーなどのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患を引き起こすとされています。

      坂口さんが発見した 「制御性T細胞」 は、こうした免疫細胞の過剰な攻撃にブレーキをかける役割を持つ細胞です。

      ノーベル生理学・医学賞を選考する委員会は、この働きを病気の治療に応用しようという研究が国内外で200以上行われているとしています。

      例えば、制御性T細胞の数を増やしたり、働きを活発にしたりすることで免疫細胞の過剰な攻撃にブレーキをかけ、自己免疫疾患や臓器移植に伴う拒絶反応を抑えられるのではないかと期待されています。

      また、逆に制御性T細胞の数を減らしたり働きを抑えたりすることで免疫細胞へのブレーキを緩めて攻撃を強化し、がんの治療につなげようという研究も行われています。

      「制御性T細胞」発見まで 20年近くにわたる長い研究

      坂口さんが「制御性T細胞」を発見するまでには、20年近くにわたる長い研究の期間があったといいます。

      京都大学医学部の学生時代は精神科の医師を目指していましたが、やがて、体を守るはずの免疫が自分の体を攻撃して起きる「自己免疫疾患」の仕組みに関心を持つようになりました。

      この中で、坂口さんは別のグループが行った研究結果に注目しました。生後3日目のマウスから、「胸腺」という小さな臓器を取り出すと、さまざまな部分で自己免疫疾患の症状によく似た炎症が起きるというものです。

      胸腺では体の免疫機能を担う「T細胞」というリンパ球が作られますが、胸腺を取り出しても免疫反応は弱くならず、逆に炎症が強まったのです。

      坂口さんはなぜ、このような現象が起きるのか詳しく調べたいと考え、この分野の研究を進める愛知県がんセンター研究所に入り、本格的に免疫の研究を始めました。

      当時、T細胞の中には、免疫を抑える働きを持つ特殊な細胞があるという仮説があり、数多くの研究が進められていましたがなかなか特定されず、それほど注目されることはありませんでした。

      論文を投稿しても、なかなか採用されない期間が10年余りあったということですが、坂口さんは日本とアメリカの研究機関を渡り歩きながら、地道に研究を続けました。

      その後、坂口さんは1995年に「制御性T細胞」を発見したと論文で発表しました。この細胞をマウスから取り除くと、免疫機能が体を攻撃して炎症が起きますが、補うと炎症は治まることがわかったのです。

      さらに2003年には、今回、ともにノーベル賞に選ばれたアメリカの2人の研究者が発見した自己免疫疾患に関わる「Foxp3」という遺伝子が、「制御性T細胞」で働いているとみられることも明らかにしました。

      こうして「制御性T細胞」が病気と深く関わっている可能性が示され、現在は治療への応用に向けた研究が国内外で進められています。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014942881000

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    5. ノーベル賞 坂口志文さんが大阪大学で受賞報告
      2025年10月7日午前11時46分
      (2025年10月7日午後1時22分更新)

      ノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれた大阪大学特任教授の坂口志文さんが発表から一夜明けた7日、報告のために大学の本部を訪れ、集まった報道陣に対し「これだけ取材してもらうと実感がわいてきます」と語りました。


      坂口さんは、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」という細胞を発見するなど免疫学の分野で優れた業績をあげたとして、アメリカの研究者2人とともにことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれました。

      坂口さんは受賞決定を改めて報告するため、7日午前8時ごろ大阪・吹田市にある大学の本部を訪れ、集まった教職員や学生たちに拍手で迎えられました。

      そして、熊ノ郷淳総長から花束を渡されると笑顔で受け取り、妻の教子さんとともに記念撮影に応じていました。

      集まった報道陣から今の心境を聞かれた坂口さんは「昨夜はいろいろな方からお祝いのメッセージをもらい、読んでいるうちにすぐ時間がたってしまって少し寝不足です。これだけ取材してもらうと実感がわいてきます」と話していました。


      出迎えた医学部の学生は「感激しました。ノーベル賞の受賞の決定に学生として立ち会えて、モチベーションが上がります。将来は私も研究者として坂口先生に続くような成果を目指していきたいです」と話していました。

      坂口さんの地元 滋賀県長浜市に横断幕

      坂口さんの出身地、滋賀県長浜市では、市役所や駅に祝福の横断幕が掲げられ、市民からも喜びの声が聞かれました。

      坂口さんは長浜市出身で、6日夜は県立長浜北高校の同級生たちが市役所に集まって発表の瞬間を見守り、受賞決定を祝福しました。

      一夜明けて、市役所やJR長浜駅では「祝ノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます」と書かれた横断幕が掲示されました。駅では観光案内などのディスプレー画面にも祝福のメッセージが表示されていました。

      長浜市によりますと、市は坂口さんを名誉市民として顕彰することを検討し始めているということです。

      市民からは7日も祝福の声が聞かれました。

      80歳の女性は「ニュースを見て長浜市出身だと知り、驚きました。本当に誇らしいです」と話していました。

      駅で観光ボランティアをしている69歳の男性は「本当にうれしくて誇らしいです」と話していました。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014943231000

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    6. ノーベル賞 坂口志文さん「妻の明るい性格に支えられた」
      2025年10月7日午後0時50分
      (2025年10月7日午後6時26分更新)

      ノーベル生理学・医学賞の受賞者に選ばれた大阪大学特任教授の坂口志文さんが発表から一夜明けた7日、研究者で妻の教子さんとともに大学で記者会見し、妻の明るい性格に支えられたと感謝を述べました。

      坂口さんの妻・教子さんは現在、大阪大学の招へい教員を務める研究者で、坂口さんが愛知県がんセンター研究所に所属していたときに出会い、アメリカに同行してともに研究し論文の共著者になるなど長年、二人三脚で研究に取り組んできました。

      発表から一夜明けた7日、坂口さんは教子さんとともに大学で記者会見し、「手先の器用さが必要な動物実験や、研究室での人間関係など、私が苦手な部分を妻がよく解決してくれた。明るい性格で、重要な判断をするときに楽天的になることができ、妻の存在は大きかった」と感謝の言葉を述べました。


      また、教子さんは「長い間、苦労してやってきたことがこういう形になって本当によかった。アメリカに行き、研究室をのぞいたらとても創造的でおもしろい研究をしていて、毎日、実験をして新しいデータにわくわくしながら一緒に仕事をしてきた」と思い出を語りました。

      記者会見では夫婦のふだんの会話や、休日の過ごし方などについての質問も相次ぎ、坂口さんは「私がやることを妻は全部知っていて、あまり話さなくともなんとなく何をやっているかお互いに理解していると思う」などと答えていました。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014943361000

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  27. ノーベル生理学・医学賞、坂口志文・大阪大特任教授ら3人…過剰な免疫反応抑える「制御性T細胞」発見
    2025/10/06 18:38

     スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を、坂口 志文しもん ・大阪大特任教授(74)ら3人に授与すると発表した。日本のノーベル賞受賞は、昨年平和賞に輝いた日本原水爆被害者団体協議会に続いて2年連続となる。

    ノーベル生理学・医学賞を受賞した大阪大の坂口志文特任教授(9月24日、大阪府吹田市で)=中原正純撮影

     坂口氏は、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した。

     個人での日本のノーベル賞は、21年に物理学賞を受賞した真鍋 淑郎しゅくろう 氏に続いて29人目(うち米国籍は3人)。生理学・医学賞では18年の 本庶佑ほんじょたすく 氏に続き6人目となる。

     賞金は1100万スウェーデン・クローナ(約1億7500万円)で、3人で分ける。授賞式はノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日、ストックホルムで行われる。

     坂口氏は研究室を出て「非常に名誉なことと思います」と一言。

     他の受賞者は米国の2氏だった。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50158/

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    1. ノーベル賞・坂口志文氏と共同研究、中外製薬「幅広く医学に重要な転機もたらす輝かしい業績」
      2025/10/06 20:11

       2025年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授と長年共同研究を行っている中外製薬の奥田修社長は6日、「免疫機構のブレーキとも言える制御性T細胞の発見は免疫学にとどまらず、幅広く医学に重要な転機をもたらす輝かしい業績だ」とのコメントを発表した。

       中外製薬は16年、坂口氏が所属する大阪大免疫学フロンティア研究センターと10年間の包括連携契約を締結。今年3月には、共同で制御性T細胞に関する研究成果を英学術誌ネイチャー(電子版)に掲載した。

       奥田氏は、「同センターによる世界最先端の免疫学研究と、長年培われた独自の技術基盤を擁する中外製薬の創薬研究が組み合わさることで、基礎研究から臨床応用研究までがシームレスに(切れ目なく)展開されることになる」と期待を寄せた。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50166/

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    2. ノーベル賞の坂口志文氏「たいへん光栄」「研究費を稼ぐことに少し苦労した」…大阪大で記者会見
      2025/10/06 20:20 (2025/10/06 20:35更新)

       2025年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口 志文しもん ・大阪大特任教授(74)は6日、同大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)で記者会見を開き、「たいへん光栄に思っています」と語った。

      大阪大の職員から花束を受け取る坂口志文さん(右)(6日夜、大阪府吹田市で)=渡辺恭晃撮影

       坂口氏は会見の冒頭、花束を贈られ、笑顔を見せた。会見では、「いろんな人たちと研究してきた。学生、共同研究者の方々にお世話になった。深く感謝しています」と述べた。

       坂口氏は、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した功績が評価された。会見で、「あまり人気のあるアイデア(研究テーマ)ではなく、研究費を稼ぐことなどに少し苦労した」と振り返った。受賞の決定には「サイエンスの分野は非常に広く、他にも良い研究成果がある中で、私がもらえたのはラッキーなこと」と語った。

       さらに「私一人ではなく、同じ考えを持つ人が世界中におり、その人たちを代表しての受賞だ」と述べ、「受賞によってこの分野の研究が進み、臨床の場で応用できる方向に進展することを望んでいる」と期待した。

       科学者を志す子どもたちへのメッセージを求められると、「興味は持ち続けることで洗練され、強くなっていく。興味があることを大切にすると、新しいものが見えていく。気がついたら、面白い境地に達している」と語った。

       会見中、石破首相から電話があり、がん治療の未来について問われると、坂口氏は「サイエンスは進んでいく。そのうち、がんは怖い病気ではなく、治せるものだという時代になると思っている」と応じた。

       個人での日本のノーベル賞は、21年に物理学賞を受賞した真鍋 淑郎しゅくろう 氏に続いて29人目(うち米国籍は3人)。生理学・医学賞では18年の 本庶ほんじょ佑たすく 氏に続き6人目となる。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50168/

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    3. 大阪大学長「偉業と呼ぶのにふさわしい」…坂口志文・特任教授のノーベル賞に「在籍中の受賞は初」
      2025/10/06 20:31

      坂口特任教授(右)と握手を交わす熊ノ郷学長(6日午後9時3分、吹田市で)

       2025年のノーベル生理学・医学賞について、坂口 志文しもん ・大阪大特任教授(74)の受賞が決定し、同大学の現職教員や卒業生で初の受賞者が誕生した。吹田キャンパス(大阪府吹田市)で開かれた記者会見に出席した熊ノ郷淳学長は「在籍中の受賞は初めてで、たいへんうれしく思っている。坂口さんの発見なしでは、現代の医学は語れない。偉業と呼ぶのにふさわしい成果だ」と語った。

       同大学の関係者では、1949年に日本人初のノーベル賞(物理学賞)を受賞した湯川秀樹博士(1907~81年)がいるが、旧大阪帝国大の在籍中に受賞へつながる論文を発表したものの、受賞時は同大学を離れていた。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50170/

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    4. 坂口志文さんノーベル賞、共同研究者「粘り強い研究が実を結んだ」…長い「冬の時代」乗り越え
      2025/10/06 21:25

       今年のノーベル生理学・医学賞に選ばれた大阪大特任教授の坂口志文さん(74)に対し、共同研究者からは「粘り強い研究が実を結んだ」と、称賛と喜びの声が上がった。

      ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見で笑顔を見せる坂口志文さん(6日夜、大阪府吹田市で)=須藤菜々子撮影

       坂口さんらは2003年、制御性T細胞(Tレグ)が自己免疫疾患を引き起こすことを示唆する強い証拠を見つけ、米科学誌「サイエンス」に発表した。マウスで自己免疫疾患を引き起こす原因遺伝子として知られていた「Foxp3」が、Tレグが機能する上で非常に重要となることを示したものだ。この研究を坂口氏の下で進めたのが、東京大学教授の堀昌平さん(54)(免疫学)だった。

       普段の坂口さんは実験データの解釈などについて、「非常に慎重で細部まで詰めるタイプ」という。だが、Foxp3の論文については当時、「(坂口さんにしては)非常に珍しく、発表を急いでいるようだった」と振り返る。海外の研究チームも同じ遺伝子に着目している可能性が高く、研究競争が激化していたためだ。

       堀さんらは昼夜を問わず「死にものぐるい」で実験を重ね、実験内容について坂口さんと激論をかわしながら、構想から1年余りで発表にこぎ着けた。この研究により、Tレグがうまく働かないと免疫の暴走を止められず、自己免疫疾患を引き起こすことが裏付けられ、臨床応用への道が開けた。

       Tレグのように免疫反応を抑制する細胞の研究は免疫学のコミュニティーから1980年代頃に一度、否定され、坂口さんにとっては長く「冬の時代」が続いた。堀さんは、当時の苦しい研究状況を坂口さんがつらそうな表情で話していた姿を今でも覚えているという。

       「自分が大切と思ったテーマを信じ、粘り強く追い続ける大事さを坂口先生の背中から学んだ。この分野をあきらめずに発展させてきた全ての人々への受賞でもあると思う。非常にうれしい」。堀さんはそう喜んだ。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50202/

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    5. ノーベル賞の坂口志文、「眉唾」と言われても研究貫く…現役で京大不合格も予備校行かず宅浪で成果
      2025/10/06 22:44

       「信念の人」。多くの研究者仲間は、そう口をそろえる。免疫反応を抑える細胞「Tレグ」の研究は長年信じてもらえず、「眉唾もの」とされた。孤独な研究者人生を送っていたがあきらめずに追究し、免疫学の新たな領域を開拓した。

      記者会見で花束を手にする坂口志文さん(6日夜、大阪府吹田市で)=須藤菜々子撮影

       滋賀県長浜市の高校を卒業し、京都大医学部を目指したが、現役では不合格。予備校にも行かず、自宅で一人、浪人生活を送った。

       「分からないことがあっても自分で考え抜くしかなかった」。この日々が後の粘り強さにつながった。

       翌年、合格した医学部の講義で出会ったのが免疫学だった。その後、未知の免疫細胞が存在する可能性に気づき、研究に没頭した。

      制御性T細胞は自己免疫疾患を防ぐ

       だが、自分の研究内容と似た研究者の論文が米国の研究チームに否定された。仲間は去っていったが、実験で見つけた現象には手応えを感じ、信念を貫いた。

       研究開始から20年近くたった1995年、Tレグの目印となるたんぱく質をついに発見。ほかの研究者たちにも確認されると風向きが変わった。

       好きな言葉は「 運鈍根うんどんこん 」。幸運、鈍重、根気を意味する。「世の中、いろんな情報が氾濫し、 流行はや り廃りもあるが、自分の知りたいことに興味を持ち続けるのが研究者の原点だ」
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50229/

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    6. ノーベル賞の坂口志文さん、医師の妻・教子さんが実験サポート「一緒に同じ景色を見てきた同志」
      2025/10/06 23:37

       スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した坂口 志文しもん ・大阪大特任教授(74)ら3人に授与すると発表した。日本のノーベル賞受賞は、昨年平和賞に輝いた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に続いて2年連続となる。

       会見場には、坂口さんの妻、教子さんの姿があった。坂口さんは「一緒に同じ景色を見てきた一番の理解者であり、同志ですね」と感謝する。

      二人三脚で歩んできた大阪大の坂口さんと妻の教子さん(大阪府吹田市で)=中原正純撮影

       2人が出会ったのは20歳代の頃、愛知県がんセンターだった。坂口さんが研究生、教子さんは名古屋市立大の医学生として病院実習に来ていた時に偶然知り合い、1979年に結婚した。

       皮膚科医になった教子さんは、83年に坂口さんと一緒に渡米。坂口さんが米国でTレグの研究を続けるそばで、教子さんも研究員として実験のサポートをした。

       現在は、夫妻らが設立した医療応用を目指す新興企業「レグセル」で治療薬開発の夢を追う。今年3月に創薬への投資が活発な米国に拠点を移した。「新しい挑戦を楽しんでいる」と坂口さん、「青春まっただ中です」と教子さん。これからも二人三脚で走り続ける。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50248/

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    7. 世界に通じるよう「志文」、坂口さん両親とも教師…ノーベル賞に期待する母に「簡単に取れるものではないんだよ」
      2025/10/07 00:05

       スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した坂口 志文しもん ・大阪大特任教授(74)ら3人に授与すると発表した。日本のノーベル賞受賞は、昨年平和賞に輝いた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に続いて2年連続となる。

       坂口さんの故郷・滋賀県長浜市では、兄で元高校教師の偉作さん(76)や、母校の県立長浜北高校の同級生ら約20人が市役所で発表を見守り、「やっと取れた。おめでとう」と功績をたたえた。

      子どもの頃の坂口志文さん(本人提供)

       受賞が決まると、同級生が偉作さんを囲み、「おめでとう」「ついにやりましたね」と次々と握手を交わした。偉作さんは、昨年1月に104歳で亡くなった母・淑子さんに触れ、「母が(受賞決定を)一番楽しみにしていた。すぐにでも墓前に報告したい」と話した。

       高校時代の同級生、木全正顕さん(75)は「坂口君は授業中に寝ている印象が強かったけど、先生の話を聞かなくても勉強ができたのだろう。ぜひ背中を追う若い研究者の支えになってほしい」と喜んだ。



       坂口さんはいずれも教師だった父・正司さん(1977年死去)と淑子さんの間に3兄弟の次男として滋賀県の旧びわ村(現・滋賀県長浜市)で育った。世界に通じるようにとの思いを込め、欧米に多い名前「Simon」にちなんで「志文」と名付けられた。

       兄弟が幼い頃から自宅の本棚は父の蔵書であふれ、「本を読みなさい」が父の口癖。坂口さんは、暇さえあれば蔵書を引っ張り出して読みあさった。「本に囲まれた生活が彼のルーツ。読書量は兄弟で一番多かった」と偉作さんは言う。

       親類に医師が多いこともあり、坂口さんは自然と医学に関心を寄せるようになった。父が学んだ京都大の受験に失敗し、自宅で浪人生活を送った時には、父が勉強を教えることもあった。淑子さんは生前、「我慢強く、分かるまで徹底的に取り組む姿は父親譲りだった」と語っていた。

       淑子さんは、坂口さんの受賞を誰よりも心待ちにしていた。毎年発表の時期になると、期待する淑子さんを坂口さんが電話で「簡単に取れるものではないんだよ」と諭していた。

       淑子さんは2021年から市内の介護施設に入所。親子の最後の対面となったのは23年11月だった。母校の小学校で講演するために帰省した坂口さんが、施設を訪れて講演会のチラシを見せながら「これに来てたんよ」と声をかけると、淑子さんはうなずいていたという。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50267/

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    8. 坂口志文さん、ノーベル賞の出発点は「なぜ免疫が自分を攻撃するのか」…「気づいたら面白い境地に」
      2025/10/07 00:52

       免疫疾患の治療や予防に新たな道をひらいた大阪大特任教授の坂口 志文しもん さん(74)が6日、ノーベル生理学・医学賞に輝いた。自説が受け入れられない不遇の時代も過ごしたといい、記者会見では、「頑固にやってきたことが今日につながった」と笑顔を見せた。

      ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見で笑顔を見せる坂口志文氏(6日夜、大阪府吹田市で)=渡辺恭晃撮影

       午後8時、大阪大吹田キャンパス(大阪府吹田市)に設けられた会見場。濃紺のジャケットに青いネクタイを締めた坂口さんが花束を受け取ると、会場は大きな拍手とシャッター音に包まれた。

       坂口さんは冒頭、喜びの言葉もそこそこに、受賞決定につながった過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」の発見や医療への応用の可能性を丁寧に説明。改めて心境を問われると、「この研究が、もう少し発展すればご褒美があると思ったが、この時点で名誉をいただけるのは驚きで光栄です」とかみしめるように語った。

       受賞決定を誰に最初に伝えたかと尋ねられると、「長く家内とやってきましたので……」。同じ研究室で招へい教員を務めるなど、研究を長年支えてくれた妻で、医師の 教子のりこ さん(71)を思ってはにかんだが、報道陣の質問が研究内容に及ぶと、真剣な表情に変わった。

       免疫を抑制する細胞は、1970年代には盛んに研究されたが、なかなか存在が裏付けられず、80年代初めに急速に議論がしぼんだ分野。過去のインタビューでは、当時は論文を発表しても「まだこんな研究をしている人間がいるのかという反応だった」と話していた。

       当時を振り返り、坂口さんは「あまり人気のあるアイデアではなく、研究費を稼ぐところで苦労したが、同じ考えを持った世界の人たちを代表しての受賞になったと思う」と語り、同じテーマで研究を続けた仲間を思いやった。

       受賞決定を受け、「今何がしたいか」と問われると、坂口さんは「もう少し仕事ができる間は仕事を続けたいと思う」と柔和な笑みを浮かべ、「今までは基礎研究をしてきたが、治療や予防に具体的につながることをやっていきたい。研究分野が進んでいくような寄与ができればと思う」と語った。

       免疫がなぜ、時として自分を攻撃するのか。坂口さんにとっては、その疑問が出発点だったという。座右の銘を問われると、「高尚な四字熟語はないが……」と前置きし「一つ一つ」という言葉を自分に言い聞かせて、実験や論文に取り組んできたと振り返った。

       「自分で興味があることを大切にしていくと、だんだん形がはっきりしていき、気がついたら面白い境地に達している。そういうことが起きれば、どんな分野でも面白い」。長年の研究生活を通じて学んだ、次世代へのメッセージだ。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251007-OYT1T50029/

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    9. 世界が注目する研究 緒方洪庵「適塾」以来の伝統
      2025/10/07 05:00

       ノーベル生理学・医学賞受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)が専門とする免疫学は、感染症の治療法からワクチン開発、がん治療と幅広い分野に関わり、世界が注目する分野だ。その免疫学で大阪大は「世界の拠点の一つ」として存在感を示す。背景には江戸時代の「適塾」から続く長い歴史がある。

       阪大の免疫学研究の歴史は、江戸末期の医師・緒方洪庵=写真、大阪大適塾記念センター提供=にさかのぼる。洪庵は蘭学塾「適塾」と、種痘で天然痘を予防する「除痘館」を当時の大坂に開いた。種痘は免疫力を高めるワクチンの一種で、国内での免疫学研究の第一歩となった。

       洪庵の死から6年後の1869年、次男が塾生らと阪大医学部の前身となる「大阪仮病院」を開設。1905年には大阪府内で猛威を振るっていた肺結核の研究拠点として、内科の一角に国内初の肺結核専門講座が誕生した。

       62年には、後に日本の免疫研究の礎を築く山村雄一・元学長が教授に就任。結核は菌が肺の組織を食べ、空洞を作ることで症状を引き起こすと考えられていたが、山村さんは熱で殺した菌でも空洞ができることを動物実験で確認し、免疫反応が関与していることを突き止めた。山村さんは、学内外から多数の優秀な若手を教授に抜てきして研究を本格化させた。

       関節リウマチの発症にかかわる免疫物質「インターロイキン(IL)6」を発見し、画期的な治療薬の開発につなげた岸本忠三・元学長も、山村さんの門下生の一人。岸本さんは坂口さんの研究を高く評価し、阪大免疫学フロンティア研究センターの設置を機に、京大から招請していた。

      阪大から初

       坂口志文さんのノーベル生理学・医学賞受賞が決まり、阪大の現職教員から初めてノーベル賞受賞者が誕生する。

       坂口さんは京大医学部を卒業。母校で再生医科学研究所(現・医生物学研究所)の所長を務めた。2007年、文部科学省が開始した「世界トップレベル研究拠点プログラム」に阪大の免疫学フロンティア研究センターが採択され、坂口さんは「人の治療にどれだけ貢献できるかが重要だ」と阪大へ移ることを決断。11年に阪大教授となった。

      山中氏「常識を覆した」

       iPS細胞を開発した成果で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授(63)は、坂口さんが所長を務めた京大再生医科学研究所(当時)の元同僚で、「坂口先生ご受賞おめでとうございます。坂口先生は、免疫学における常識を覆され、自己免疫疾患やがん、さらには臓器移植など、幅広く医学に大きく貢献されました。ご業績に心から敬意を表します」とコメントした。

      本庶氏「同じ分野 誇り」
       免疫を抑える分子を発見し、新たながん治療薬「オプジーボ」開発につなげたとして、18年に生理学・医学賞に選ばれた 本庶佑ほんじょたすく ・京都大特別教授(83)は代表取材に対し、「坂口先生は京都大の後輩で、同じ免疫学のT細胞の制御に関する分野なので特に誇りに思っています。この研究分野では未解決の内容も多くあり、今後解決されるのを楽しみにしています」と語った。

      坂口志文さんがノーベル生理学・医学賞に選ばれたことを伝える読売新聞の号外(6日夜、東京都千代田区で)

      本紙が号外発行

       読売新聞は6日、坂口志文・大阪大特任教授のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まったことを伝える号外約14万部を発行し、東京や大阪などで配布した。

       東京・有楽町駅前では、午後7時半頃から配布が始まり、帰宅中の会社員らが次々と受け取っていた。川崎市の自営業堀井彰三さん(83)は「日本人の受賞を期待して待っていた。世界中の人を救う研究が選ばれたことは誇らしい」と話した。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251007-OYT1T50057/

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    10. 研究40年超 花開く…坂口氏ノーベル賞 電話対談  
      2025/10/07 05:00

       今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)は、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」を発見して、免疫を正常な状態に保つ仕組みを解明した。坂口氏は、生理学・医学賞の先輩受賞者である大隅良典氏(80)と6日夜に電話対談を行い、長年にわたる研究生活を振り返った。(司会は安田幸一・東京本社科学部長)

      坂口氏 免疫学の伝統大切

      大隅氏 治療への展開期待

      電話対談する大隅良典氏(6日夜、神奈川県内で)

       ――大隅さんから、受賞の意義をお願いします。

       大隅 私は門外漢だが、(坂口さんは)免疫という非常に大きな領域で新しい細胞を発見した。免疫の制御という意味で大変、大きな貢献をなさった。

       坂口 正確に評価していただき、ありがとうございます。細胞が先にあり、どのように働くかという研究から、だんだんと分子の方にいき、それが人の疾患とうまく結びついた。同時受賞が決まった2人は、遺伝子レベルで、確かに制御性T細胞の異常が人の疾患につながっているという重要な発見をされた。様々なことがうまく結びつき、今回の評価につながったと思っている。

       大隅 先生は細胞の発見からスタートして何年この細胞とつきあっているのですか。

       坂口 1970年代の終わりからですから、40年以上です。それなりにつきあってきました。

       大隅 大事な発見からそれが花開くまでは大変長い時間がかかるのは私も実感している。その意味でも先生の発見からその後の研究の展開は努力のたまものだ。

       坂口 最初の方から関わり続けてくることができたのは良かった。その過程でいろんな人がいろんなことをぶつけてくれた。最初に思っていた以上にこの分野が発展してきた実感がある。その意味では研究者としては非常に良い思いをしてきた。

       大隅 免疫もアクセルだけを踏めばよい、活性化だけすればよいというわけではない。ブレーキとアクセルの非常に微妙な制御が大変重要だと理解できた。

       坂口 いろんな病原微生物から我々の体を守るのが免疫反応だが、免疫はアレルギーなど悪いこともする。メカニズムがわかり、医学的にも非常に重要であることが判明した。

       大隅 これから具体的な治療にもいろいろな展開があると楽しみだ。

       坂口 これを機会に現場の医師に興味を持っていただき、いろいろなアイデアが出て、人の病気の予防や治療につながっていけばよい。

       ――日本の免疫学は世界のトップレベルと言われ、今回の受賞はその名を高めた。

       坂口 免疫学分野ではノーベル賞を利根川進先生、 本庶ほんじょ佑たすく 先生が受賞された。面白いのはそれぞれ仕事が全く別なことだ。免疫の中でも違う仕事がそれぞれ評価されたのは、日本の免疫学が力強く研究されてきたからだ。この伝統を大切にしていきたい。

       大隅 伝統は研究を支える大きな力になる。一つの領域が非常に活発であることは大事なことだ。若い人は非常に短期間で成果を上げなければならないと縛られているが、こういう長い研究の成果が大きな力になると認識してほしい。

       ――最後に大隅さんから坂口さんにメッセージを。

       大隅 私より若いので、これからも第一線で活躍されることを心から願っている。ぜひ新しい展開を続けてほしい。

       坂口 微力ながら頑張っていきたい。ありがとうございます。

      「日本の医学は一流」示した…江崎玲於奈氏 1973年物理学賞(茨城県科学技術振興財団理事長)

       1973年に物理学賞を受賞した江崎玲於奈・茨城県科学技術振興財団理事長(100)=写真=が読売新聞の取材に応じ、坂口志文さんのノーベル賞受賞決定に対して、次のように喜びを語った。



       まず、坂口先生には「おめでとうございます」という言葉を差し上げたい。自然科学分野では、日本の受賞がしばらく途絶えていたが、今回の栄誉は改めて、日本の医学研究が世界一流であることを示したと言えるのではないか。

       坂口さんは、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見したという偉大な業績で、これまで多くの賞を授与されてきた。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まったことは、当然の結果だったと思う。

       坂口さんは滋賀県長浜市の出身で、私も関西出身(大阪府出身)という共通点があり、ノーベル賞の受賞決定は大変うれしく思う。

       坂口さんには新たな責任も生まれるだろうが、今後いろんな場面で活躍されることになるかと思う。今回の坂口さんの受賞が契機となって、日本の生理学・医学分野のさらなる研究の発展につながれば幸いだ。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251007-OYT1T50031/

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    11. [スキャナー]免疫の異常反応ブレーキ役「Tレグ」、治療法開発の研究進む…坂口氏ノーベル賞
      2025/10/07 05:00

       ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)の研究対象は、病原体やがん細胞などの異物から体を守る「免疫」だ。「免疫反応を抑える免疫細胞」の存在を立証し、新たな研究領域を打ち立て、大きく進展させた。(大阪科学医療部 竹井陽平)

      仮説

      Tレグによる創薬の未来を語る坂口志文・大阪大特任教授(9月24日、大阪府吹田市で)=中原正純撮影

       免疫細胞は、体内で病気の原因を見つけて排除する役割を担う。体の中のものを「敵(非自己)」と「味方(自己)」に分け、攻撃したり守ったりする。この仕組みを担う代表格が、白血球の一種であるT細胞で、主に3種類ある。

       このT細胞は、自分自身の体を攻撃して病気を引き起こす場合がある。関節リウマチや全身性エリテマトーデス、1型糖尿病などが代表で、こうした自己免疫疾患は、5%の人が持っているとされる。

       なぜ、病気から守るはずの免疫が、病気の原因となるのか――。坂口氏は、この不思議な二律背反性に強い興味を持ち、「原理を解明できれば治療法に結びつくはずだ」と考えた。京都大大学院を中退し、自己免疫疾患に関する実験環境のある愛知県がんセンターの研究生として研究を始めた。

       「自分を攻撃するT細胞もあれば、逆に、それを制御するT細胞もあるのではないか」。こう仮説を立ててマウスのT細胞を細かく分類し、実験で片っ端から性質を調べた。米国留学中の1985年、免疫を制御する細胞の存在を確かめた。

      証拠

       ところがこの頃、免疫学の世界では、東京大教授だった多田富雄氏(故人)が提唱していた「免疫抑制細胞(サプレッサーT細胞)」の存在が米国の研究者の論文によって全否定されるという「大事件」があった。この影響で、誰も坂口氏の成果に注目しなかったという。学会などで報告しても冷ややかな目で見られる日々が続いたが、坂口氏は諦めなかった。

       95年、最新の解析技術を駆使し、「CD25」というたんぱく質を目印に持つT細胞が、免疫の異常な反応に対する「ブレーキ役」の正体であることを突き止めた。T細胞全体のうち6~7%がこの目印を持つことも確認し、制御性T細胞(Tレグ)と名付けた。この目印は多田氏の研究では確認されておらず、坂口氏の説が新しく、正しいことを示す確かな証拠となった。

       幸運だったのは、この論文が、「免疫抑制細胞嫌い」として知られた米国の大物学者イーサン・シェバック氏の目にとまり、追試をして内容が正しいと認められたことだ。これを機に風向きが変わり、ようやく正当に評価される時代が訪れた。

      着眼点

       今回同時に受賞が決まった2人が2001年、マウスで自己免疫疾患を引き起こす原因遺伝子として、「Foxp3」を発見した。坂口氏らは03年、この遺伝子がTレグが機能するうえで重要であることを示した。

       その結果、Tレグがうまく働かないと免疫が暴走し、自己免疫疾患などを引き起こすことが裏付けられた。以後、世界中の研究者がTレグを着眼点にして様々な病気を研究するようになった。

       坂口氏の業績について、河本宏・京大医生物学研究所長(免疫学)は「Tレグは、免疫学の歴史の中で最後の大発見だ。自ら切り開いた分野でそのまま先導し続けているのは驚異的だ」と評価する。

       また、愛知県がんセンター時代に隣の席で研究し、今も交流がある谷本 光音みつね ・岡山大名誉教授(血液内科学)は「どんな逆風の中でも信念を貫き、自ら立てた仮説を 緻密ちみつ な実験の繰り返しで検証し、大きな成果を上げてきた。免疫学の世界の大谷翔平だ」とたたえる。

      医療への応用目指す 創薬に期待

       Tレグの性質を応用して様々な病気の治療法の開発を目指す研究が、国内外で進んでいる。坂口氏も基礎研究を続けつつ、治験の実現にも積極的に関わっている。

       治療薬開発の基本的な戦略は、〈1〉がん患者のTレグを減らす〈2〉自己免疫疾患や、臓器移植後の拒絶反応に対してTレグを増やす――という2本立てだ。

       がん細胞は周囲にTレグを呼び集め、免疫細胞からの攻撃をかわす「ガード役」に利用している。このガードを引きはがし、治療薬を使えば、本来のがんを抑え込む効果が期待できる。2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した 本庶佑ほんじょたすく 氏らの発見から誕生したがん免疫治療薬と併用し、治療効果を高める治験が、国内外で複数進行している。坂口氏は、Tレグの働きを阻害する抗体医薬の開発を進める塩野義製薬に協力している。

       自己免疫疾患の分野でも、坂口氏はアステラス製薬などと、正常な臓器を誤って攻撃する異常な免疫細胞を、体内でTレグに変える化合物を発見した。慶応大とは、皮膚の難病「 天疱瘡てんぽうそう 」について共同研究を進める。いずれも創薬の実現が期待されている。

       「医学はどれだけ人の役に立つかが重要だ」と語る坂口氏。治療薬の価格が高額化する傾向を憂えて、「医療経済も考慮し、いずれは安価で簡便に使えて、かつ効果があるTレグの薬ができれば」と力を込める。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20251006-OYT1T50244/

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    12. 社説
      ノーベル賞 免疫の根源的な謎解明に栄誉
      2025/10/07 05:00

       日本が誇る免疫研究の分野で、堂々の快挙である。逆風にめげず信念を貫き、大きな成果を上げたことを 称 たた えたい。

       ノーベル生理学・医学賞に、坂口志文・大阪大特任教授ら3人が決まった。免疫は誤って自分の体を傷つけることがあるが、それを防ぐメカニズムに関して、画期的な発見をしたことが授賞理由である。

       免疫細胞の一種である「T細胞」は、胸腺で作られている。細菌やウイルスなどの「敵」から体を守る役目があるが、誤って自分の体を攻撃し、リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患を引き起こす場合がある。

       坂口氏は、こうしたT細胞の暴走を抑える細胞があるはずだとの予想に基づき、1995年に、ブレーキの役割を果たす「制御性T細胞(Tレグ)」を発見した。

       免疫の根幹に関わる原理を独自に解明し、新領域を切り開いた業績が高く評価されたと言える。

       しかし、発見当時は「免疫機能を抑制する免疫細胞」という自己矛盾的な存在に対し、学術界では否定的な見方が多かった。

       それでも、実験を重ねて確信を深めていた坂口氏は、孤立に耐え、研究を進めた。揺るがぬ信念に基づいて根源的な問題を追求した 一途 いちず な姿勢に敬意を表したい。

       今後は、創薬への応用が期待される。がん細胞の周囲でTレグを減らすことができれば、がん細胞への攻撃を促す新治療法の開発に道が開ける。

       多数のノーベル賞受賞者を輩出している東大や京大とは対照的に、阪大はこれまでノーベル賞と縁遠かった。関係者の喜びもひとしおだろう。

       日本のノーベル賞受賞は、昨年、平和賞に輝いた日本原水爆被害者団体協議会に続いて、2年連続の朗報である。

       化学賞、物理学賞を合わせた自然科学3賞では、2021年の真鍋淑郎氏以来4年ぶり。日本の自然科学3賞の受賞者は、米国籍の真鍋氏らを含め26人目となる。

       ただ、発見から受賞に至るまでには数十年かかることが珍しくない。最近は日本の研究力低下が指摘されており、今後も同様のペースで受賞できるか心もとない。

       背景には大学の研究費が削減され、不安定な任期付き雇用の研究者が増えていることがある。博士課程に進む学生も減っている。

       政府は、若手の自由な研究を支援し、将来のノーベル賞の種を途絶えさせないよう、研究環境の改善に努めなければならない。
      https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20251007-OYT1T50008/

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    13. iPSから免疫抑える「Tレグ」に近い細胞…京大チーム成功、関節リウマチなど治療期待
      2024/06/07 00:00

       人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」に近い細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが発表した。自己免疫疾患などの治療に生かせる可能性があり、論文が7日、科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。

       ウイルスや細菌から体を守る免疫反応は、過剰になると自身の体を攻撃し、関節リウマチなどの自己免疫疾患や、白血病治療の骨髄移植後に起きる合併症などの原因となる。

       こうした過剰な反応にブレーキをかけるのがTレグで、坂口志文・大阪大栄誉教授が詳細を明らかにし、ノーベル賞級の成果と評価されている。患者の体からTレグを取り出して治療に使う研究も進むが、Tレグは培養してもほとんど増えず、数を確保できないことが課題だった。

       京都大iPS細胞研究所の金子新教授らは、人のiPS細胞から免疫細胞を作製。さらに4種類の薬を加えて1~2週間培養し、Tレグの特徴を持つ細胞を作ることに成功した。

       この細胞を免疫細胞と一緒に培養したり、マウスに投与したりする実験を行った結果、過剰な免疫反応を抑える効果が確認された。

       iPS細胞は増殖しやすく、治療に必要な大量のTレグを作り出せる可能性が開けたという。

        三上 統久のりひさ ・大阪大特任准教授(免疫学)の話 「今回の成果で、患者自身のTレグだけでなく、健康な他人のTレグを活用する道が示された。コスト削減などが見込める反面、安全性や有効性を慎重に確認していく必要がある」
      https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240606-OYT1T50168/

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  28. ノーベル物理学賞に米国の大学研究者3人「トンネル効果」実証
    2025年10月7日午前11時43分
    (2025年10月7日午後7時26分更新)

    ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、目に見えるスケールで粒子が障壁を通り抜ける「トンネル効果」を実験的に確かめたとして、アメリカの大学の研究者3人が選ばれました。

    スウェーデンのストックホルムにある王立科学アカデミーは7日、日本時間の午後7時前に記者会見し、アメリカの大学で量子力学の研究にあたっている3人の教授がことしのノーベル物理学賞に決まったと発表しました。

    3人は粒子が障壁を通り抜ける「トンネル効果」について、電子回路によって目で見えるスケールでこの現象を実証しました。

    これは、次世代のコンピューターとして期待される「量子コンピューター」の基盤技術の1つとなっています。
    https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014943141000

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  29. ことしのノーベル化学賞に北川進さん 京都大学理事
    2025年10月8日午前11時43分
    (2025年10月9日午前0時18分更新)

    ことしのノーベル化学賞の受賞者に「多孔性金属錯体」と呼ばれる極めて小さい穴を多く持った材料を開発し、材料科学に新たな分野を確立した京都大学理事の北川進さん(74)ら3人が選ばれました。日本からのノーベル賞受賞は個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、6日に生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文さんに続いて30人目です。

    材料科学に新たな分野確立
    北川さんは京都市出身の74歳。京都大学を卒業したあと、近畿大学の助教授や東京都立大学の教授を経て1998年に京都大学の教授となり、2017年からは京都大学高等研究院の特別教授を務め去年、京都大学の理事・副学長に就任しました。

    北川さんは有機物と金属を組み合わせた化合物の研究に取り組む中で、極めて小さい穴を多く持つ 「多孔性金属錯体」 と呼ばれる材料を開発しました。この材料は穴の大きさを分子レベルで思いどおりに変えることができるため、特定の気体を閉じ込めたり、目的の物質だけを取り出したりすることが可能になりました。

    この技術を使うことで▽工場や車などから排出される有害ガスの回収や▽燃料電池に欠かせない水素の安全な貯蔵が効率的にできるようになるとされるなど、さまざまな分野で実用化にむけた研究が進められています。

    ◇多孔性金属錯体とは

    北川進さんが開発した多孔性金属錯体=金属有機構造体は、金属イオンと有機分子がみずから規則正しく結び付いてできる無数の穴を持った物質です。穴の大きさはナノサイズと極めて小さく、ジャングルジムのような立体的な構造となっています。この穴の中に特定の気体や分子を取り込んで吸着したり貯蔵したりすることなどができるため、有害物質の回収や水素の貯蔵など、環境やエネルギーの分野でさまざまな応用が期待されています。

    また、この構造体は金属イオンや有機分子の種類を変えることで穴の大きさや性質を自在に設計できるため、目的に応じて、分子のサイズや構造を作り分けることができ、国内外の一部の化学プラントで特定の物質の精製や分離に活用されるなど実用化が始まっています。

    化学産業などで活用
    多孔性金属錯体=金属有機構造体は化学産業などで活用されているほか、環境や医療などさまざまな分野への応用が期待されています。

    このうち化学産業ではプラスチックや薬剤などの合成のほか、特定の物質の精製や分離にも活用されています。また京都大学のホームページなどによりますと▽イギリスの会社で収穫した果物の腐敗を抑え、鮮度を保ったまま運搬するために活用されたり▽アメリカの会社で有毒なガスがボンベの外に漏れないように低い圧力で保存するために、半導体工場などで使われたりしているということです。さらに▽水質の浄化や消臭の技術についての研究・開発が進められているほか▽体内の必要な部分に薬を運ぶ医療面での応用も期待されています。

    会場の電話インタビュー 北川さん「大変栄誉に感じる」

    北川さんはノーベル化学賞の発表会見の会場からの電話インタビューに英語で応じ、委員会からの「おめでとうございます」という祝意に対し「ありがとうございます。私の長年にわたる研究を評価していただいたことを大変栄誉に感じています」と答えていました。

    また記者からの質問に対し「新たな材料として社会に認められるまで非常に長い時間がかかりましたが、同時にこの材料の化学を楽しんできました。これまで見つかっていなかったこの構造体の性質や特徴を発見することこそ研究のだいご味でした」と話していました。そして「つらい時もありましたが私は楽観的でした。新しい物質を見つけるのはとてもとても楽しく、そして挑戦的です。学生たちにはいつも科学、そして化学の分野では挑戦が非常に重要だと伝えています」と語りました。

    北川さんら3人の功績は
    ノーベル化学賞を選考する委員会は、受賞者に選ばれた北川進さんら3人の功績について「気体や化学物質が流れることができる大きな空間を持つ分子構造を創りだした。こうした構造体『金属有機構造体』は砂漠の空気から水を集めたり、二酸化炭素を回収したりするほか、有毒ガスの貯蔵や化学反応の触媒として利用することができる」と説明しています。

    そのうえで北川さんの貢献について「気体がこの分子構造に出入りできることを示し『金属有機構造体』を自在に作ることができると予測した」としています。そして「この画期的な発見により、化学者たちは何万もの異なる『金属有機構造体』を作り出した。そのうちのいくつかは有機フッ素化合物「PFAS」の水からの分離、環境中に残された医薬品の分解、二酸化炭素の回収や砂漠の空気から水を集めるといった応用を通じて、人類の最も大きな課題のいくつかを解決することに貢献するかもしれない」と評価しています。

    NHK取材に対して…

    北川進さんは8日夜、NHKの取材に応じ 「いろいろとインタビューを受け、受賞の実感がだんだんわいてきた」と喜びを語りました。

    これまでの研究を振り返りー
    「今までの概念にない新しいものを作ったときに世間から『そういうものはできない』と言われて非常につらかったが、これは絶対にできるという確信があった。研究室の若い人たちと一緒に研究してここに至ることができた」

    研究成果の社会での活用についてー
    「産業革命で固体の石炭をエネルギーにし、20世紀は液体の石油を使い、最後に気体が残っている。気体が一番扱いにくいが、開発した材料はその気体を自由に扱えるものだと思う。特に空気には二酸化炭素や酸素があり、われわれの体を作っている元素も入っている。空気は小さな資源のない国にもひとしく分布していて、これを使う科学を発展させることが平和に関わり、地球環境を守るうえでも重要なので、この材料をそういうところに使っていきたい」

    ノーベル生理学・医学賞に続き、化学賞でも日本人が受賞したことー
    「ノーベル生理学・医学賞に選ばれた坂口志文先生は、分野はかなり違うが非常に近しい方だ。これから若い人たちを激励しつつ、よい環境を作っていくために2人で協力していきたい」

    最後に若い世代へのメッセージー
    「運というのものは自分で作っていくもので、つらい環境も実はプラスになるんだという考えを持ち、自分の夢を実現していく方向にもっていってほしい」

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    1. NHK取材に対して…

      北川進さんは8日夜、NHKの取材に応じ 「いろいろとインタビューを受け、受賞の実感がだんだんわいてきた」と喜びを語りました。

      これまでの研究を振り返りー
      「今までの概念にない新しいものを作ったときに世間から『そういうものはできない』と言われて非常につらかったが、これは絶対にできるという確信があった。研究室の若い人たちと一緒に研究してここに至ることができた」

      研究成果の社会での活用についてー
      「産業革命で固体の石炭をエネルギーにし、20世紀は液体の石油を使い、最後に気体が残っている。気体が一番扱いにくいが、開発した材料はその気体を自由に扱えるものだと思う。特に空気には二酸化炭素や酸素があり、われわれの体を作っている元素も入っている。空気は小さな資源のない国にもひとしく分布していて、これを使う科学を発展させることが平和に関わり、地球環境を守るうえでも重要なので、この材料をそういうところに使っていきたい」

      ノーベル生理学・医学賞に続き、化学賞でも日本人が受賞したことー
      「ノーベル生理学・医学賞に選ばれた坂口志文先生は、分野はかなり違うが非常に近しい方だ。これから若い人たちを激励しつつ、よい環境を作っていくために2人で協力していきたい」

      最後に若い世代へのメッセージー
      「運というのものは自分で作っていくもので、つらい環境も実はプラスになるんだという考えを持ち、自分の夢を実現していく方向にもっていってほしい」

      ==北川進さん記者会見==

      「大きな名誉をいただき非常に感激」
      北川さんは会見の冒頭で「私がやっているのは新しい材料作りで、新しい機能の材料開発をしてきました。新しいことにチャレンジするのは科学者にとってだいご味です。つらいこともありますが過去30年楽しんできました。大きな名誉をいただくことになって非常に感激していますし、一緒に進めてきた皆さんに感謝を申し上げたい。そして当然、支えてくれた家族にも感謝しています。退職しても研究させてくれた京都大学には感謝しています」などとあいさつしました。

      「勧誘の電話よくありまたかと思った」
      北川さんは会見で、受賞の連絡を受けたときのことについて「私の居室でちょうどたまっていた仕事を片づけていたとき午後5時半ごろに固定電話にかかってきました。最近、勧誘の電話がよくかかってくるのでまたかと思い、少し不機嫌に電話をとったら選考委員会からでびっくりしました」と振り返りました。

      「この化学が認知され非常にうれしく思う」
      北川さんは会見で「受賞で報われたというより、この化学が認知された。一般の人に理解してもらうのはなかなか難しいですが、こういう認知をしていただいたことは非常にうれしく思う」と話しました。

      「3人のチームワークが認められた」
      北川さんは会見で「例えばダンボールの中に本をいっぱい詰めて座ったら壊れませんが、中のものを全部取り除いて座るとぴしゃっとなります。それは紙だからです。それを石や木でつくったら壊れないです。私がやったのは有機分子と金属イオンをつないだことです。こんなものはすぐ壊れるだろうというのが皆さんの常識でしたが、それに対して『こういう構造体が作れる』と示したのがリチャード・ロブソンさんです。それが実は壊れずに丈夫な構造を持っていると示したのが私です。オマー・ヤギーさんはどのように作るかというネットワークの作り方を研究した人です」と述べました。

      そして共同で受賞した2人の研究者について「この3人のチームワークが認められたという経緯です。彼らとは友達ですので私も非常にうれしく思っています」と述べました。

      「優れた材料をデザインして作った」
      北川さんは会見で「今回の研究は気体をとらえて分離し、反応させて有用なものに変えていく、そういった化学に貢献するものだと考えています。空気はどこにでもあり、小さな国であってもいくらでもとれる『目に見えない金』です。これをコントロールしようとすると、穴の開いた多孔性材料が必要です。従来の材料ではできない優れた材料をデザインして作りました。これからは気体の時代だと思います」と語りました。

      感謝を伝えたい人「家族 妻です」
      北川さんは会見で電話を受けたときのことを振り返って「うれしくて感激しました。報われたんだなとそういう感慨を持ちました」と話しました。また感謝を伝えたい人は誰かという質問に対しては「もちろん家族、妻です。委員長から1時間後に発表するので絶対に言わないでと言われたので言いませんでしたが、本当に感謝しています」と答えていました。

      子どもへのメッセージ「いろんな経験を大切に」
      北川さんは子どもたちへのメッセージについて聞かれると「幸運は準備された心に宿るという名言がある。私はよい先生に恵まれ、よい友達に、そして学会でもいろいろなつきあいがあった。それが実は準備された心なんです。ある日突然宝くじに当たるようなものではない。だから皆さんが育っていく課程でいろんな経験をすると思うが、それを大切にしていくと将来、花開く可能性があると言いたい」と話していました。

      成功の秘けつ「興味を持って挑戦する姿勢」
      北川さんは「成功の秘けつは興味を持って挑戦する姿勢です。私は研究室を運営していますが、指導者にはビジョンが必要だと思います。私は偉いわけではなく、おもしろいことだけに突っ走って、なかなかうまくいかないこともいっぱいありますから一緒に研究した皆さんも大変苦労されたと思います。化学は個人プレーではなくチームプレーが重要でそれがうまく機能した時はすっと進んでいきます。この研究はいろんな応用展開が考えられます。コストとかいろんな問題はありますが、徐々に浸透してきているので、これから私も協力をしながら発展していくのを楽しみにしています」と述べました。

      自身の研究 北川さん「まさに“無用の用”」
      北川さんは自身の研究について「まさに“無用の用”です。穴と考えると無用ですが、ところがその穴に原子や分子を入れ込んで、ためたり、変えたりしている。そう考えると役に立つ。考え方を一つ変えるだけで役に立つ。この“無用の用”はわれわれの大きな原則になっています」と話していました。

      日本のノーベル賞受賞者は30人目
      北川さんは2011年に「紫綬褒章」を受章したほか、2018年にはフランスの化学会グランプリを受賞しています。

      北川さんは同じ分野で研究してきた▽オーストラリアのメルボルン大学教授のリチャード・ロブソンさんと▽アメリカのカリフォルニア大学バークレー校教授のオマー・ヤギーさんとともに選ばれました。

      日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、6日に生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文さんに続いて30人目です。化学賞では2019年の吉野彰さんに続いて9人目です。


      ==関係者から喜びの声==
      石破首相「大いに国民を勇気づけた」
      石破総理大臣はノーベル化学賞の受賞者に北川進さんが選ばれたことを受けてコメントを出しました。この中では「受賞を心からお喜び申し上げる。今回の受賞は『金属有機構造体』の開発に関する業績が世界で高く評価されたもので、わが国の研究者の独創的な発想による真理の発見が人類社会の持続的な発展に大きく貢献し、世界から認められたことを誇りに思う」としています。そのうえで「おとといの生理学・医学賞の受賞に続き、わが国の研究力の卓越性が世界に評価されたことは大いに国民を勇気づけるものだ。今後とも独創的で多様な研究への支援と研究を担う人材の育成に強力に取り組んでいく」としています。

      自民 高市総裁「基礎研究の推進と若手研究者育成に取り組む」
      自民党の高市総裁は8日夜、旧ツイッターの「X」にメッセージを投稿しました。北川さんの研究実績に触れたうえで「これを用いてガスの吸着メカニズムの解明や新材料の開発などが行われ、さらにエネルギー、環境、医療分野の問題を劇的に解決すると期待されているそうです」としています。そのうえで6日、ノーベル生理学・医学賞の受賞者に大阪大学特任教授の坂口志文さんが選ばれたことも踏まえ「我が国の研究水準の高さを世界に示すとともに日本人にとって大きな誇りと励みになるでしょう。基礎研究の推進と若手研究者の育成にしっかりと取り組んでまいります!」と結んでいます。

      阿部文科相「財源確保し ともに頑張りたい」
      阿部文部科学大臣は8日夜、北川進さんに電話で祝意を伝え「ことし、わが国から2人の受賞者が出たことは学術研究の水準の高さを国の内外に示すもので本当に誇りに思う」と述べました。そして阿部大臣が研究者の育成のために国としてどのような支援ができるか尋ねたのに対し、北川さんは「若い人の研究時間を確保するような施策が必要だ。研究者がサポートを受けて研究する形があまりできていないので、研究支援の人材をサポートし増やしていくような施策をとってもらえると、若い人たちもいきいきと研究できると思う」と話していました。

      このあと阿部大臣は記者団に対し「文部科学省としても財源を確保しながらともに頑張っていきたい」と述べました。

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    2. 城内科学技術相「切れ目ない予算確保が重要」
      城内科学技術担当大臣は8日夜、北川進さんに電話で祝意を伝え「大変すばらしい発見で、実社会に広範に変革をもたらすものだ。このような発見を今後も生み出していくためには基礎研究に必要な予算を切れ目なく確保することが極めて重要だ。海外と日本との格差をしっかり埋めて成果が出せるように取り組んでいきたい」と述べました。

      京都府知事「快挙を府民と喜びたい」
      京都府の西脇隆俊知事は「心からお祝い申し上げます。北川さんが開発した『多孔性材料』は地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸着や、電気自動車の燃料となる水素の貯蔵に用いられるなど、環境や資源の問題に革命的な変化をもたらすものとして期待されています」としたうえで「京都ゆかりの方がノーベル賞を受賞した快挙を府民とともに喜びたい」などとコメントしています。

      01年に化学賞 名大 野依特別教授「国際的な認知うれしい」
      2001年に同じ化学賞を受賞した名古屋大学の野依良治特別教授はNHKの取材に対し「受賞を心からお祝いしたい。30年近くにわたる継続的な努力によって日本発の基礎化学の成果が国際的に認知を受けたことをうれしく思っている。日本の化学の伝統を明確に示していただき、非常にありがたく思う」と語りました。また「日本の大学や行政、そして産業界がこの研究の基本的な重要性を認めて、基礎の段階から応用、発展の期間を通じて支援してきたことが非常に大きかった。今後も日本で生まれた新しい芽を選び出し、長期的に支援していくことが非常に重要だ」と話していました。

      02年に化学賞 島津製作所の田中さん「問題解決に貢献を期待」
      2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんはコメントを出し「本当におめでとうございます。これからの環境、エネルギー、健康などの問題の解決に貢献すると大いに期待しています。先生は研究を説明する際に『無用の用』という荘子のことばを持ち出されると聞いています。この話をうかがい『思考の多様性がすばらしい発想につながっている』と思えています。今回の受賞が契機となり、多くの日本の研究者および研究機関が世界に貢献する科学技術を送り出すことを願います」と受賞を祝いました。

      12年に生理学・医学賞 京大 山中教授「心から敬意」
      2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は、京都大学iPS細胞研究所のSNSで「ご受賞を心よりお祝い申し上げます。北川先生が切り拓かれた新素材はクリーンエネルギーや環境問題の解決、医薬品の運搬など私たちの未来をより豊かにする技術につながるものであり、その革新性は計り知れません。同じ科学を志す者として心から敬意を表します」とコメントしています。

      18年に生理学・医学賞 京大 本庶特別教授「うれしいのひと言」
      2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授は取材に対し「私は正直詳しくないのですが、前から北川先生が多孔性金属錯体というものを初めて作ったということはうかがっていました。北川先生とは京都大学高等研究院でご一緒する機会も多くありました。京都大学からまたノーベル賞の受賞者が出ることになり本当にうれしいのひと言です。先生にお会いしたら『本当に喜んでいます。もうひと頑張りしてください』と伝えたいです」と話していました。

      19年に化学賞 吉野彰さん「大したものだ」
      京都大学によりますと、2019年にノーベル化学賞を受賞している吉野彰さんは、北川進さんが学んだ研究室の先輩にあたるということで、NHKの取材に対し「いつかはこういう日が来ると思っていたが大したものだと思う。同じ研究室から続いてノーベル化学賞が出るとは思わず、大変うれしいことだ」と話しました。また2人が所属した研究室は1981年に日本人初のノーベル化学賞を受賞した福井謙一さんの流れをくむということで「私たちは福井先生から『古典への理解、原理原則の理解が大事だ』と繰り返し教わってきた。北川先生の受賞理由となった新しい材料の研究もただやみくもに研究したのではなく試行錯誤を積み重ねた結果で、原理原則を考え抜いて確信をもって研究を進めれば正しいものが見つけられる証左だと思う」と述べました。

      化学賞での日本人研究者の受賞については「ケミストリーは日本が比較的得意とする分野だ。特に今後、環境問題の解決においては化学が解決しなければいけないことがいろいろあり、今回の北川先生の成果のように大きな貢献が期待される技術は日本にも多くあるので、この先も受賞が続いてほしい」と話しました。

      ことしのノーベル賞に選ばれた日本人研究者が2人になったことについては「正直ほっとしている。日本における研究の在り方はこれからいろいろと議論が出てくると思うが、前向きな議論を期待したい。何よりサイエンスで人類に貢献し、それがきちんと評価されることは子どもたちへの希望になる」と述べました。

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    3. 京大高等研究院 大竹特定拠点准教授「開拓の姿勢を尊敬」
      7年前から北川さんの研究室でともに研究をしている京都大学高等研究院の大竹研一特定拠点准教授は「北川さんは『運・鈍・根』ということばをよく使われていて、はやりのものに飛びつくのではなく新しいものを開拓していく姿勢をとても尊敬しています。私たちの今後の研究にも弾みがつくと思います」と話していました。

      親交ある名古屋工業大 増田名誉教授「楽しみに待っていた」
      北川進さんと京都大学の大学院時代からおよそ50年来の親交がある、名古屋工業大学の増田秀樹名誉教授は「この日を楽しみに待っていた。北川さんもこの日が来ることを待ちかねていたと思う」と話しました。

      大学院では席が隣で当時はいつも一緒にいたということで、北川さんの人柄について「温厚かつアグレッシブで、世界で1番にならなければといったことには敏感だったと思う。この研究は地球温暖化などにも貢献できると思う。いつもライバルとして研究してきたので、これから私も一緒に社会貢献ができれば」と話していました。

      論文共同執筆 大阪公立大 久保田教授「うれしいです」
      北川進さんと過去に30本以上の論文を共同執筆している大阪公立大学の久保田佳基教授は「いつか受賞すると思っていましたが、それが今回とは思わず自分のことのようにうれしいです」と話していました。そのうえで「北川先生は研究に厳しく常にリーダーシップを発揮されていた一方で、若手の研究者を勇気づけることにも熱心でした。受賞によりさらに忙しくなって会えなくなってしまうのではないかと不安になっています」と話していました。

      近畿大 宗像名誉教授「まれな才能と寛容な人柄」
      近畿大学名誉教授の宗像惠さんは40年余り前、大学院生だった北川さんを近畿大学の助手として招きました。

      NHKの取材に対し宗像さんは北川さんについて「非常に優秀な人です。とても優しい性格で、どんなに忙しいときでも学生から質問などがあれば丁寧に対応していました。まれな才能に加えてその寛容な人柄がノーベル賞につながったのだと思います」と話していました。そして「誰もがあまり興味を持たなかった研究に一生懸命励み、重要な発見をされました。長い間の努力が報われてよかったです。本人には『おめでとうございます。今後もご活躍ください』と伝えたいです」と話していました。

      分子科学研究所 渡辺所長「研究者たちの刺激に」
      北川進さんが選ばれたことについて、愛知県岡崎市にある分子科学研究所の渡辺芳人所長は「3年前から分子科学研究所の研究顧問として助言をいただいてきたので、研究者たちの刺激になっていました。北川先生の受賞は非常にうれしいです」と語りました。そのうえで「一緒のプロジェクトに参加したこともありますが、とにかく仕事に関しては厳しく、誰が何を言っているとかは関係なく自分がどう考えるかを重要視する人です。これから何かお祝いを考えたいと思います」と話していました。

      大阪大学大学院 正岡教授「大好きな恩師」
      大学院生の時に北川進さんから指導を受けていた大阪大学大学院の正岡重行教授は取材に対し「北川先生は大好きな恩師です。『君らはできるんや』とよく励ましてくれ、学生たちから本当に慕われていた先生でした」と述べました。そのうえで「北川先生は研究に対して『これが世界を変えるんだ』と熱い思いを持っており、研究室の学生としてその姿を間近に見てきました。その姿勢が今回のノーベル賞につながったと感じています」と述べました。

      正岡さんは京都大学大学院時代に北川さんの研究室に5年間在籍し指導を受けていたということで、8日は当時の研究室仲間など10人ほどでインターネットで受賞者発表の記者会見を見ていました。北川さんの名前が呼ばれると正岡さんは思わずガッツポーズをして喜んだということで「北川先生は私たちに『50歳からや』ということばもかけてくれていました。北川先生は50歳ごろから一気に研究してきたものが花が開いた感じだと思います。いま48歳の私にとって『50歳からだ』ということばは勇気づけられ、今回のノーベル賞もとても励まされるものになりました」と述べました。

      京大生から祝福の声
      京都大学の学生からも祝福する声が相次ぎました。

      工学部の4年生の男子学生は「本当に誇らしいです。研究に対する予算が少なくなっている中、世間の注目が高まると、より多くの資金が来るとかいい影響が出ると思います」と話していました。理学部で化学を学んでいるという3年生の男子学生は「ほかの教授の講義で北川先生の話は聞いていたので、受賞を知ったときはびっくりしました。自分もノーベル賞級の研究がしたいです。おめでとうございます」と話していました。

      研究者を目指しているという大学院生の女性は「日本の研究者の論文の数が少ないなど暗いニュースもある中で、こういった明るいニュースをきっかけに日本の研究環境が改善することを期待したいです」と話していました。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014943841000

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    4. 社説
      ノーベル化学賞 新素材の潜在力が評価された
      2025/10/09 05:00

       また日本に朗報が飛び込んできた。北川進・京都大特別教授が今年のノーベル化学賞に輝いた。6日の坂口志文・大阪大特任教授の生理学・医学賞に続く快挙である。

       これで、日本の自然科学3賞の受賞者は、米国籍の取得者を含めて27人となる。日本の研究水準の高さを示したと言えよう。

       北川氏は、無数の穴を持つ新素材「金属有機構造体(MOF)」を作り出す独創的な手法を開発し、狙った気体を効率よく貯蔵したり運搬したりすることに道を開いたことが評価された。

       MOFはジャングルジムのような構造をした多孔性材料で、素材となる金属イオンと有機分子の組み合わせを工夫すれば、穴の大きさなどを自在に変えられる。

       その穴一つ一つに狙った気体の分子がはまり込むことで、気体を貯蔵したり、分離したりできる技術を開発した。

       MOFは、脱臭剤として使われる活性炭よりはるかに精密で微細な穴を多数持つため、わずか1グラムでサッカー場ほどの表面積を持たせることも可能だ。

       応用が最も期待されるのは、環境・エネルギー分野だ。温室効果ガスの二酸化炭素を低コストで吸着・除去できれば、地球温暖化対策が大きく進む可能性がある。こうした潜在能力の高さを考えれば、今回の授賞は当然だろう。

       MOFは既に気体の運搬などで実用化が始まっている。MOFを使ったガス容器なら、気体をそのまま安定した状態で貯蔵・運搬できるためだ。

       水素やメタンなどを簡単に扱えるようになれば、次世代エネルギーへの転換を後押しできるだろう。企業や大学が協力し、さらなる技術の発展に努めてほしい。

       同じ年に日本人2人がノーベル賞に決まるのは、2015年以来のことで喜ばしい。だが、生理学・医学賞の坂口氏も、北川氏も、研究が独創的だったがゆえに、当初は批判を浴びたという。

       それでも両氏は知的な好奇心に従って研究を進め、科学界最高の栄誉を手にした。

       科学の世界では、短期間で成果が出ないことの方が多い。何の役に立つかはその時点で予測できなくても、後に思わぬ応用先が見つかる例は少なくない。

       政府は、将来につながる芽を摘まぬよう、若手研究者の自由な研究への幅広い支援が求められる。日本発の技術をいかし、地球環境を守るといった大きな目標に向けて研究を主導していきたい。
      https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20251009-OYT1T50002/

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  30. 文学賞 ハンガリーのクラスナホルカイ氏 京都舞台の小説も
    2025年10月9日午後0時00分
    (2025年10月10日午前0時34分更新)
    ノーベル賞2025
    ことしのノーベル文学賞にハンガリーの作家で日本についての作品も発表しているクラスナホルカイ・ラースロー氏が選ばれました。


    スウェーデンのストックホルムにある選考委員会は9日、ことしのノーベル文学賞に、ハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースロー氏(71)を選んだと発表しました。

    クラスナホルカイ氏は1954年、ハンガリーに生まれ、大学で法律や文学を学びました。

    独特の文体と表現力が国際的に評価されていて、1985年に出版された初めての小説で、ハンガリーの村を舞台にした「サタンタンゴ」はのちに映画化もされました。

    クラスナホルカイ氏は日本にもゆかりがあり、京都に滞在した経験をもとに日本の寺院などを描いた「北は山、南は湖、西は道、東は川」などを発表しています。

    2015年にはイギリスで最も権威ある文学賞の翻訳部門にあたる「ブッカー国際賞」を受賞しています。

    ノーベル賞の選考委員会は受賞理由について「説得力と先見性のある作品群は終末的な恐怖の渦中において、芸術の力を再確認させる」としています。


    またクラスナホルカイ氏について「カフカからトーマス・ベルンハルトに至る中央ヨーロッパの伝統を受け継ぐ偉大な叙事詩作家で、不条理主義とグロテスクな過剰さを特徴としている。しかし彼の才能は多岐にわたり、やがて東洋へと目を向けることで、より思慮深く緻密に整えられたトーンを獲得していった」と評価しています。

    ノーベル文学賞にハンガリーの作家が選ばれるのは、2002年のケルテース・イムレ氏に続いて2人目です。

    クラスナホルカイ氏 日本にゆかり 京都舞台の小説も

    京都を舞台にした小説「北は山、南は湖、西は道、東は川」
    ことしのノーベル文学賞の受賞者に選ばれたハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースロー氏は、代表作の1つで京都を舞台にした小説の「北は山、南は湖、西は道、東は川」を2003年に発表しました。

    この作品は日本でも出版されていて、翻訳した早稲田みかさんのあとがきによりますと、クラスナホルカイ氏は、2000年に国際交流基金招へいフェローとして半年間、京都に滞在し、能楽師のもとに通いながら、寺社建築や庭園などの日本の伝統文化を研究したということです。

    「北は山、南は湖、西は道、東は川」は、京都のとある寺と、そこに隠されている美しい庭を描いた作品で、日本での滞在がきっかけとなって生まれたとしています。

    クラスナホルカイ氏は、日本について「この国で、探し求めていたもの、それまでの自分の考えを一変させる決定的なことを見つけた。人間と外界との間にわずかながらも調和の可能性があることに気づかされたのです」と語っていたとも書かれています。

    海外文学ファンから歓声「人気の高い作家」

    ノーベル文学賞の発表にあわせて海外文学ファンたちが集まるイベントが9日夜、都内で開かれ、ことしの受賞者が発表されると大きな歓声が上がりました。

    このイベントは、首都圏の海外文学ファンのグループがノーベル文学賞の発表にあわせて毎年開いていて、東京・渋谷区の会場には11人が集まりました。

    会場には、参加者が持ち込んだ世界各国の作家の著作23冊が並べられ、集まった人たちは、ことしの受賞者を予想しあったりみずからが推す作品を語り合ったりして、発表の瞬間を待ちました。

    中にはクラスナホルカイ・ラースロー氏を推す声も上がっていました。

    そして午後8時ごろ、クラスナホルカイ氏の名前が発表されると大きな歓声が上がり、会場は拍手に包まれました。

    クラスナホルカイ氏が選ばれると予想していた60代の男性は、「予想が当たり頭が真っ白です。ヨーロッパで高い評価を得ていたので満を持しての受賞だと思います」と話していました。

    イベントを主催した浦野喬さんは、「人気の高い作家が選ばれたので『なるほど』という感じです。海外の作品には、日本にはない考え方や表現があり、刺激を受けます。海外作品の良さを伝える催しを続けていきたい」と話していました。

    専門家 “人間の根源の何かを追求してきた作家”
    ことしのノーベル賞にハンガリーの作家、クラスナホルカイ氏が選ばれたことについて、中東欧の文学に詳しい東京大学大学院の阿部賢一教授は「長いキャリアがあり、非常にすぐれた作品を数多く書いてきた作家で、ある意味、当然とも思う」と話していました。

    クラスナホルカイ氏の作品については「1つの現象をある種の執着とたおやかさをもって包み込もうとする文章力はほかの作家にない独特なものだ。歩き続ける過酷さや生命の力強さを描き、ハンガリーにとどまらず人間の根源の何かを追求してきた作家だからこそ評価されたのではないか」と分析しています。

    クラスナホルカイ氏の作品は日本語に翻訳されていないものも多く、阿部教授は「日本とのつながりも非常に深い作家なので、翻訳が待たれる」と話し、今後、日本で読まれる機会が増えることに期待を示しました。

    翻訳家 “心情風景と実際の風景を融合させるのが得意”
    ノーベル賞受賞作家の作品の翻訳を数多く手がけている鴻巣友季子さんは、クラスナホルカイ・ラースロー氏の受賞について「いつ受賞してもおかしくなくとるべくしてとった人であり、驚きはありません。彼は心情風景と実際の風景を融合させるのが得意で、日本の京都に滞在したときもその情緒的な光景にインスピレーションを得て作品を生み出したのだと思う」と語りました。

    その上で「これだけ世界で争いが起き大勢の人が亡くなるなかで、彼は創造性へのブリッジがいまの時代には必要と考え、それを作品に取り入れている点が評価されたと思う。親しみやすい作品で映画化されているものもあり、受賞をきっかけに国内でもこれからさらに広がっていけばと思います」と話していました。

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    1. 村上さんの長編小説の舞台と言われる町でも

      また、村上さんの長編小説の舞台になったと言われている北海道美深町に集まったファンからは、落胆の声が聞かれました。

      美深町の仁宇布地区は、村上さんが昭和57年に発表した長編小説「羊をめぐる冒険」に登場する地域と風景などが似ていることからファンなどの間では小説の舞台になったと言われています。

      町内のレストランには、内外から集まった20人ほどのファンが、インターネット中継で発表を見守りました。

      ハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースロー氏の受賞が発表されると集まった人たちは残念そうな表情を浮かべていました。

      東京都の30代の男性は、「発表のために『ハルキスト』の聖地に初めて来ました。ことしは残念でしたが、来年はきっと受賞します」と話していました。

      また、家族とともに訪れた札幌市の10歳の男の子は「来年も再来年もチャンスがあるのでいつかはノーベル賞を手に入れることを祈っています」と話していました。

      レストランのオーナーの柳生佳樹さんは「選ばれず残念でしたが、来年こそは村上さんが選ばれると期待しています」と話していました。

      村上春樹さんの受賞を願った人たちは

      ことしのノーベル文学賞にハンガリーの作家が選ばれ、兵庫県出身の村上春樹さんの受賞はなりませんでした。

      県内の村上さんのファンからは落胆の声が聞かれました。

      兵庫県出身の村上春樹さんがたびたび訪れた店として知られ、エッセーにも登場する神戸市中央区の老舗ピザ店では9日、村上文学ファンが集まってノーベル文学賞の発表の瞬間を見守りました。

      午後8時すぎにハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースロー氏の受賞が伝えられると、店内では落胆の声が広がり頭を抱えて悔しがる人の姿も見られました。

      このあと、ファンたちは来年の受賞を願って乾杯し「2026年、絶対取るぞ」などと声を上げていました。

      店を訪れていた男性は「ことしは阪神タイガースがセ・リーグで優勝し、村上投手がタイトルを取り、ということはノーベル文学賞は村上さんだと思っていたので、すごく残念です。また来年この神戸の地で皆さんと受賞を待ちたいです」と話していました。

      また西宮市にある村上さんの母校の小学校では、発表を見守っていた元同級生などが落胆のため息をつきながらも村上さんに拍手をおくりました。

      小学6年生のときの同級生の男性は、「ことしこそは、という気持ちはありましたが残念でした。またあしたから来年のきょうまで、村上さんが受賞できるように応援していきます」と話していました。

      東京 新宿区の書店には特設コーナー

      東京都内の書店では、ノーベル文学賞の発表の様子が店内のモニターに映し出され、受賞者が決まると早速、特設コーナーが設けられました。

      9日夜、東京・新宿区の紀伊國屋書店新宿本店では、ノーベル文学賞の発表を行う会見の様子が店内のモニターに映し出され文学ファンがその様子を見守りました。

      午後8時すぎ、ハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースロー氏の受賞が発表されると見守っていた人たちから拍手が起きました。

      受賞を受けて書店では急きょ、別の店舗からクラスナホルカイ氏の作品が次々と持ち込まれ、早速、特設コーナーが設けられていました。

      今回の文学賞について東京の50代の男性は「半分悲しく、半分うれしいです。悲しいのは村上春樹さんにとってもらいたかったからで、うれしいのは事前にAIで予想した人が受賞したからです。AIの予想を受けて作品を読んだところ、ネガティブをポジティブに180度変える力がすごかったです」と話していました。

      紀伊國屋書店新宿本店販売プロモーション担当の竹田勇生課長は、「ノーベル文学賞は、受賞者の作品を読んで、知らなかった世界や世界で起きている問題を知ることが意義だと思うので、それを大切に受賞者の作品を読んでもらいたいです。文学賞発表の日は、好きな作家がいつかノーベル賞を取るのではないかと思いながら楽しんでほしい」と話していました。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014944681000

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  31. ノーベル平和賞にベネズエラのマリア・コリナ・マチャド氏
    2025年10月10日午前11時54分
    (2025年10月10日午後7時00分更新)
    ノーベル賞2025
    ことしのノーベル平和賞に、独裁政権が続いている南米ベネズエラの民主化を目指す運動に長年、取り組んできた野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏が選ばれました。


    ノルウェーの首都オスロにある選考委員会は10日、ことしのノーベル平和賞に、南米ベネズエラの野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏を選んだと発表しました。

    マチャド氏は1967年生まれ。

    ベネズエラの首都カラカスで、貧しい子どもたちを支援するボランティア活動などに取り組んだあと、20年ほど前から民主化を目指す運動を始めました。


    そして、独裁政権が続くベネズエラで、2024年7月の大統領選挙では、野党側の統一候補として立候補することを目指しました。

    しかし、マドゥーロ政権の影響下にある最高裁判所が、マチャド氏の立候補を禁止する判断を示しました。

    マチャド氏は、その後も民主化を目指す運動に取り組んでいるということです。


    ノルウェー・ノーベル委員会のフリードネス委員長は会見で、マチャド氏について、「ベネズエラの人々の民主的権利を推進するために尽力し、独裁から民主主義への公正かつ平和的な移行を目指して闘ってきた」とたたえました。

    マチャド氏は2024年10月、人権擁護に貢献した人にEU=ヨーロッパ連合の議会が贈る「サハロフ賞」を受賞しています。
    https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014944721000

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    1. ノーベル平和賞 “受賞者の情報 発表前に漏れていたか”
      2025年10月12日午前6時21分
      ノーベル賞2025
      ノルウェーの地元メディアはことしのノーベル平和賞の受賞者の情報が発表前に外部に漏れていた疑いがあると報じました。平和賞の選考委員会の事務局・ノーベル研究所はNHKの取材に対し「深刻に捉えている」としたうえで、調査を進めていることを明らかにしました。

      ことしのノーベル平和賞に南米ベネズエラの野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏が選ばれたことに関連し、ノルウェーの地元メディアは10日、発表日の未明からインターネット上の賭けサイトでマチャド氏が受賞する確率が急上昇していて外部に情報が漏れていた疑いがあると報じました。

      このサイトでは発表12時間前にはマチャド氏が受賞する確率は2%余りで、この時点ではアメリカのトランプ大統領が受賞する確率の4%余りを下回っていましたが、9時間前には70%を超える水準にまで達していました。

      地元メディアは4万ドル余り、日本円で600万円余りもうけたサイト利用者もいるとしていて、ノルウェー・ノーベル委員会の事務局・ノーベル研究所が、何者かによる外部への漏えいか、システム上の問題で漏えいした可能性があるという見方を示したと伝えています。

      ノーベル研究所は11日、NHKの取材に対し「深刻に捉えている。状況を十分に把握しておらず調査を進めている」とコメントしています。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014947681000

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    2. ベネズエラ“在ノルウェー大使館閉鎖”ノーベル平和賞に反発か
      2025年10月14日午後0時51分

      南米ベネズエラの外務省は13日、ノルウェーにある自国の大使館を閉鎖すると発表しました。アメリカメディアは、ノルウェーのノーベル選考委員会が10日に、ベネズエラの野党指導者に平和賞を授与すると発表したことを受けての反発だと伝えています。

      ベネズエラの外務省は13日、ノルウェーにあるベネズエラ大使館を閉鎖すると発表しました。

      理由については、「外交戦略の見直し」などとしていて、オーストラリアにある大使館も閉鎖するほか、アフリカ2か国で大使館を開設することも発表しています。

      ベネズエラをめぐっては、10日にノルウェーのノーベル選考委員会が、ベネズエラの野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏に平和賞を授与すると発表していました。

      アメリカのブルームバーグは、今回の大使館閉鎖について、「ベネズエラのマドゥーロ大統領が、マチャド氏の民主化運動を認めるノルウェーの動きを拒否した」と伝えています。

      AFP通信によりますと、ノルウェー外務省の報道官は「遺憾だ。意見の相違はあるものの、ノルウェーはベネズエラとの対話を続けたいと考えている」と話しているということです。

      マドゥーロ大統領は、ノーベル平和賞発表後の12日、マチャド氏について名指しを避けながらも、「国民の90%が極悪非道な魔女を拒絶している」と批判しています。
      https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014948911000

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  32. ノーベル経済学賞に米の研究者 ジョエル・モキイア氏など3人
    2025年10月13日午前0時00分
    (2025年10月13日午後10時53分更新)
    ノーベル賞2025
    ことしのノーベル経済学賞の受賞者に、経済成長における技術革新の役割について研究したアメリカの大学の研究者、ジョエル・モキイア氏など3人が選ばれました。


    スウェーデンの王立科学アカデミーは13日、ノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。

    受賞が決まったのは
    ▽アメリカのノースウエスタン大学のジョエル・モキイア教授
    ▽フランスの国立の高等教育機関、コレージュ・ド・フランスのフィリップ・アギヨン教授
    ▽アメリカのブラウン大学のピーター・ホーウィット教授の3人です。

    王立科学アカデミーによりますと、モキイア氏は経済史の研究者で、産業革命などにおいて、技術革新が持続的な経済成長をもたらす仕組みを歴史的な資料をもちいて明らかにし、持続的な経済成長のためには新しい考えを受け入れて、変化を許容する社会が重要だということを示しました。

    また、アギヨン氏とホーウィット氏は経済学者で、すぐれた新製品が市場に投入されると古い製品を販売する企業が市場から退出する「創造的破壊」という現象の数学的なモデルを1992年に構築しました。

    そのうえで2人は、この現象が持続的な成長を導くプロセスの核心だと認識したということです。

    王立科学アカデミーは「彼らは新しい技術がどのように持続的な成長をけん引するかを証明した。3人の研究は現代の潮流と、重要な問題にどのように対応できるかについて、理解を助けてくれる」としています。

    経済学賞ではこれまでに日本からの受賞はありませんが、注目されている研究者としては、マクロ経済学の専門家で金融市場や資産市場の混乱が景気や経済成長にどのような影響を及ぼすのかを理論化したアメリカ・プリンストン大学教授の清滝信宏さんや、計量経済学などが専門で家計の消費や貯蓄に関する分析で成果をあげた政策研究大学院大学名誉教授の林文夫さんがいました。

    アギヨン氏「全く予想していなかった」
    ノーベル経済学賞の受賞が決まった3人のうち、フィリップ・アギヨン氏は選考委員会の電話インタビューで、「本当に驚いた。今でも言葉が出ない。全く予想していなかった」などと述べ、喜びをあらわにしました。

    そのうえで「技術進歩をいかに環境に配慮した方向に転換し、グリーンな産業政策を設計していくか。これが目の前にある課題だ」と述べ、今後は経済成長と環境保護の両立が重要になるという認識を示しました。

    一方、アメリカのトランプ政権の関税措置について問われると「保護主義的な動きは世界の成長や技術革新にとって良いことではない。オープンな市場は成長の原動力になる」と強調しました。
    https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014948181000

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