2024年3月8日

【研究ごっこ】生物、進化、遺伝子、DNA、ゲノム、がん…★3


ウソはいつか必ずバレる。最後までしがみついて頑張るのは、勤勉な馬鹿と無能な働き者がやること。

2023年2月14日 20時25分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230214/k10013980641000.html

体のさまざまな組織の細胞に変化するとされる「Muse細胞」と呼ばれる特殊な細胞を使って心筋梗塞などの治療を目指す治験を進めていた大手化学メーカーが、治療法の開発を中止したと発表しました。この細胞を発見した東北大学などのグループは、別の企業に治験への参加を呼びかけるなどして、実用化を目指したいとしています。

「Muse細胞」は、東北大学の出澤真理教授らが発見した体のさまざまな組織の細胞に変化する能力があるとされる特殊な細胞で、点滴で投与することで傷ついた組織に集まり、修復する働きがあるとされています。

「Muse細胞」を心筋梗塞や脳梗塞などの患者に投与する治療法について、大手化学メーカー「三菱ケミカルグループ」の関連会社は2018年から治験を進めてきましたが、会社は14日事業化するのに時間がかかるなどとして開発を中止し、治療法としての承認申請を断念すると発表しました。

一方で承認申請はしないものの、現在進めている治験については最後まで実施して、データを解析した結果を公表するとしています。

出澤教授は14日、東京都内で開いた記者会見で、「開発中止を突然知らされとても困惑している。きちんと対応できるパートナーを見つけたい」と述べ、別の企業に治験への参加を呼びかけるなどして、実用化を目指す考えを示しました。

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アミノ酸、タンパク質、その先… 「遺伝子」が解明されたとしても、人は「生き物」を造り出せない、「部品」すら無理である。「決定論」では肝心な何かが足りないらしい。

2022年4月2日 6時44分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220402/k10013563841000.html

ヒトの「からだの設計図」ともいわれる遺伝情報「ヒトゲノム」について、アメリカの研究機関などはこれまで解読が困難だった部分も含め、完全な解読に成功したと発表しました。

ヒトの遺伝情報「ヒトゲノム」は2003年、日本やアメリカなどの研究機関が参加した「ヒトゲノム計画」のもとで解読が終了したと発表されましたが、ゲノムを構成する2つで1組となる塩基配列30億対のうち、およそ8%は繰り返しの配列が多いなどといった理由で正確な解読ができていませんでした。

3月31日、アメリカの国立ヒトゲノム研究所などで作る大規模な研究グループは、これまで技術的に解読が困難だった部分も含め、完全な遺伝情報のデータベースを作成したとする論文を科学雑誌「サイエンス」に発表しました。

それによりますと、研究グループは染色体の末端にあって老化すると短くなる「テロメア」と呼ばれる部分などを解読する新たな手法を開発し、ヒトゲノムの完全な解読に成功したということです。

研究グループは、今回解読できた部分からはたんぱく質を作り出すのに関わる遺伝子とみられるものが99個見つかっているとしています。

ヒトゲノムが完全に解読された意義について、研究グループは「遺伝性の病気の研究や検査など生物学や医学の進歩に寄与するだろう」としています。

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結局のところ、「遺伝情報のデータベース(DB)」は不毛である。ま、「研究」の営みというやつは、良くも悪くも「プロセス」が大事、それに関わるヒトビトの生活や暮らしが「持続可能」となることに意義がある、ということに尽きる。

いまだに、かの「ショウジョウバエの唾腺染色体地図」のようなマヤカシ研究がまかり通っているとはな。使う道具がさもさも立派になっても、使う側の頭の中身が詐欺師ペテン師かカルト信者のようなものだったら、手を変え品を変え世の中を欺き続けることをやっていくしかないらしい。




(書きかけ)





>第二章 生物の仕組み
>二 遺伝子は生命の設計図か?


https://www.amazon.co.jp/dp/4101035210

https://www.amazon.co.jp/dp/4797680695/
>優生学はかたちを変え、何度でも甦る
>第六章 能力や性格は遺伝で決まるのか
>知能はどれほど遺伝するのか/ゲノム編集の問題点/エンハンスメントと優生学 ほか




(№570 2022年4月2日)

78 件のコメント:

  1. ヒトゲノム “完全な解読に成功”と発表 米研究機関など
    2022年4月2日 6時44分

    ヒトの「からだの設計図」ともいわれる遺伝情報「ヒトゲノム」について、アメリカの研究機関などはこれまで解読が困難だった部分も含め、完全な解読に成功したと発表しました。

    ヒトの遺伝情報「ヒトゲノム」は2003年、日本やアメリカなどの研究機関が参加した「ヒトゲノム計画」のもとで解読が終了したと発表されましたが、ゲノムを構成する2つで1組となる塩基配列30億対のうち、およそ8%は繰り返しの配列が多いなどといった理由で正確な解読ができていませんでした。

    3月31日、アメリカの国立ヒトゲノム研究所などで作る大規模な研究グループは、これまで技術的に解読が困難だった部分も含め、完全な遺伝情報のデータベースを作成したとする論文を科学雑誌「サイエンス」に発表しました。

    それによりますと、研究グループは染色体の末端にあって老化すると短くなる「テロメア」と呼ばれる部分などを解読する新たな手法を開発し、ヒトゲノムの完全な解読に成功したということです。

    研究グループは、今回解読できた部分からはたんぱく質を作り出すのに関わる遺伝子とみられるものが99個見つかっているとしています。

    ヒトゲノムが完全に解読された意義について、研究グループは「遺伝性の病気の研究や検査など生物学や医学の進歩に寄与するだろう」としています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220402/k10013563841000.html

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    1. 「ヒトゲノム」の完全解読に成功、米研究所など発表…解読困難な8%を克服
      2022/04/03 22:44

       【ワシントン=冨山優介】人の遺伝情報「ヒトゲノム」を完全な形で解読したと、米国立ヒトゲノム研究所などの国際チームが科学誌サイエンスで発表した。ヒトゲノムの解読は、日本も参加した国際プロジェクトによって2003年、完了が宣言されたが、実際には当時の技術では解読困難な部分が8%残っていた。

      DNA情報を調べる研究者(米国立ヒトゲノム研究所提供、AP)

       ヒトゲノムは約30億対の塩基配列で構成され、細胞の中にある46本の染色体に収められている。染色体の末端や中央にある配列は繰り返しが多いことなどが原因で、解読が難しかった。チームは新しい手法を開発し、こうした配列の解読を可能にした。

       チームは「ヒトゲノムが関係する病気や健康状態についての発見を促進する」としている。

       榊佳之・東京大名誉教授(ゲノム科学)の話「画期的な成果だ。地図に例えれば、これまでは市街地部分だけだったが、山間部やへき地も書き込まれて完璧なものになった。病気との関係以外にも、人類進化の歴史や細胞分裂の仕組みなど幅広い分野での新発見が期待できる」
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20220403-OYT1T50136/

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  2. [サイエンス Focus]ゲノム最前線<上>個人の「設計図」解読して活用
    2021/09/26 05:00

     2001年にヒトゲノムの概要が解読されてから20年がたった。ゲノム情報の活用は、医療、農業をはじめ、スポーツなど多様な分野に広がっている。遺伝情報を簡単に書き換える技術も登場し、ゲノムは読み解くべき「暗号」から、自由に編集して活用できる「デジタル文書」となった。ゲノム研究の最前線を追う。

    体質調べ生活改善 編集で難病治療期待

    意欲的事業

     ヒトゲノムを構成する約30億個の塩基配列を全て解読しようという「ヒトゲノム計画」は、日米欧の研究機関が協力して1990~91年に始まった。それまで研究者が個々に遺伝子を研究しているだけで全体像がつかめなかった。ヒトゲノム解読は「人類共通の財産」になる意欲的事業だった。

     ゲノムの概要が英科学誌ネイチャーに掲載されたのは約10年後の2001年2月。ほぼ同時に、米科学誌サイエンスには、独自に解読を進めていた米バイオ企業セレラ・ジェノミクス社による概要も載った。解読の完了が宣言されたのは03年4月。約3000億円の費用と13年の歳月がかかった。

     当初、人間の遺伝子の数は約10万個と予想されていたが、実際は2万数千個で、ショウジョウバエの約1万4000個、線虫の約2万個と大きな差がなかった。しかも30億個の配列のうち、遺伝子の情報を記録しているのは約3割で、残りの多くは何のためにあるのかさえ分からなかった。

     当時、日本の研究代表を務めた榊佳之・東京大名誉教授(79)は「衝撃的だった。山を越えたと思ったら、さらに大きな山が現れた」と語る。

    検査 一般的に

    遺伝子検査の結果を食事や練習に生かしている宮原さん(9月16日、千葉市美浜区で)

     解読技術は進歩を続け、今では1人分のゲノムは10万円以下の費用で1、2日で解読可能だ。2万数千個の遺伝子の役割について研究が進み、個人個人が持つ遺伝子の違いを検査し、生活改善につなげる試みも一般的になってきている。

     フットサル日本女子代表の宮原ゆかりさん(27)は昨夏、「自分のことをもっと知って力を伸ばせないか」と、スポーツ選手向けの遺伝子検査を受けた。瞬発力や持久力に関係する「ACTN3」や、肉離れの起こしやすさに関連している「ESR1」など約30の遺伝子を調べる検査だ。

     結果によると、筋肉は瞬発力と持久力のバランスタイプだった一方で、脂肪がつきやすく、疲労がたまりやすい体質と指摘された。以来、ごはんの量を測定し、練習後のストレッチを入念にするようになった。「調子に波がなくなり、一定の実力が出せるようになった」と宮原さんは話す。

     この遺伝子検査キットを開発した新興企業「グリスタ」の斎藤 利ちから 社長(42)は「スポーツ界では遺伝子検査で筋トレや食事の改善につなげる取り組みが普及している。高校や大学の部活でも導入例がある」と話す。

    保険適用も

     医療現場でのゲノム情報の利用も本格化している。100以上の遺伝子について、がん細胞で起きている変異を調べ、一人ひとりの体質やがんの特徴に合わせた治療法を探す「がん遺伝子パネル検査」が19年に保険適用となった。

     ゲノムの違いをもとに治療方針をたてる医療は「個別化医療」や「オーダーメイド医療」と呼ばれる。1990年代後半にこの考えを提唱した中村祐輔・がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長(68)は「当時、私が想像していたよりも早く実現している。生まれた時点でゲノム情報を調べ、AI(人工知能)で解析して病気の予防などに役立てる時代が来るのではないか」と近未来の医療を思い描く。

     狙った遺伝子を効率良く改変できるゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を難病の治療に応用する研究も注目が集まる分野だ。

     名古屋大の西口康二教授(48)(眼科学)らは、失明にもつながる目の病気「網膜色素変性症」の原因遺伝子を、ゲノム編集で正常に治す研究を進めている。患者の約半数で遺伝子の変異が見つかっており、変異を修正するマウス実験では、病気で損傷した網膜の10%が回復し、視力が正常の約6割まで復活したという。

     京都大iPS細胞研究所の堀田秋津講師(43)(幹細胞遺伝学)は14年、全身の筋肉が次第に衰える難病「筋ジストロフィー」患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)にゲノム編集を施し、正常な筋肉の細胞を作り出すことに成功した。この細胞を患者に移植すれば治療できる可能性がある。堀田さんは「難病の半数は特定の遺伝子が原因と言われ、ゲノム編集で治療できる可能性が高い。生きる権利を全うできる人が少しでも増えてほしい」と願う。

     ただ、研究の進展に伴って明らかになってきたのは、設計図に当たるゲノムだけでは決定できない生命現象の複雑さだ。生活習慣の違いなどで、遺伝子の働き方は変化しうる。「ゲノム自体は『デジタル情報』だが、生物はやはり(曖昧さがある)『アナログ』だった」。榊名誉教授はそう表現する。

     ◆ ヒトゲノム =人間の親から子に伝わる全遺伝情報の1セットで、「設計図」に当たる。情報は、DNAを構成するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の塩基約30億個の配列からなり、広辞苑の文字数に換算すると約200冊分に相当する。顔つきや肌の色、身長などの個人差は塩基の約0.1%の違いで生じる。

    「より強く、賢く」…改変 問われる倫理

     遺伝子を改変する技術の進歩に伴い、新たな生命倫理問題も浮上してきた。

     慶応大の岡野栄之教授(62)(分子神経生物学)らの研究グループは昨年、「ARHGAP11B」という遺伝子が脳の増大に関係していることを明らかにした。この遺伝子を小型サルのコモンマーモセットの脳細胞に組み込んだところ、脳の一部で神経細胞が約20%増加し、脳表面のしわが増えた。

     この遺伝子は人間にしか存在せず、進化の過程で約150万~50万年前に生じたとみられる。「人とサルを分けるのは何か、人類の進化を解き明かす上で重要だ」と岡野教授は力を込める。

     ところが一部の研究者からは「危険な研究だ」との声もあがったという。人間並みの知能を持ったサルが誕生するのではないか――。岡野教授は研究者の口ぶりからそんな恐れを感じとった。

     一昔前にはSFだと 一蹴いっしゅう されていたようなことも、現実味を帯びてきているのも事実だ。

     順天堂大の福典之准教授(48)(スポーツ遺伝学)は「運動能力と関係する遺伝子は約300個特定されており、ゲノム編集による『遺伝子ドーピング』も不可能ではない。しかも検出することは難しく、実行しようとする人が出てきてもおかしくはない」と懸念する。世界反ドーピング機関(WADA)は2018年、禁止リストにゲノム編集を追加。国際検査機関(ITA)は今年の東京五輪で遺伝子ドーピングの検査を試験的に導入した。

     19年には、痛みや不安を生まれつき感じない英国の女性が持つ遺伝子の変異を、同国などの研究グループが発見したことが話題になった。ゲノム編集で、恐怖や痛みを感じない「最強の兵士」を作れるのではないかとの懸念があるためだ。

     北海道大の石井哲也教授(51)(生命倫理)は「ゲノムが個人の人生を大きく左右しかねない時代だが、技術の進歩に倫理や生命観が追いついていない。生命とは何か、我々はどこへ行くのか、今こそ見つめ直すことが必要ではないか」と指摘する。

     より強く、より賢くなりたいという欲望は果てしない。技術的に可能になった時、人類はどのような選択をするのだろうか。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20210925-OYT8T50042/

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    1. [サイエンス Focus]ゲノム最前線<下>絶滅生物や生態系の復元も
      2021/10/17 05:00

      種の保全へ 遺伝情報の「箱舟」計画

       生命の設計図であるゲノムを手に入れれば、絶滅動物を復活させることも理論的には可能だ。人の手によって乱れた生態系を元に戻す試みも始まっている。

      ◆マンモス

       マンモスの特徴を持つゾウを誕生させる――。米新興企業「コロッサル」が9月中旬、大々的に発表した。遺伝子を自在に操るゲノム編集技術を使って、寒さに耐える厚い脂肪や密集した毛などマンモスの特徴を生み出す遺伝子を、現代のゾウに加える試みだ。

       しかも、この「マンモスもどき」の群れを、いずれ永久凍土の広がる北極圏のツンドラ地帯に放つという。この大胆な事業に、1500万ドル(約17億円)の資金が集まった。

       日本でもマンモス復活計画が進む。近畿大などは2019年、2万8000年前のマンモスの筋肉組織から取り出した細胞核をマウスの卵子に注入したところ、生命活動の兆候を示したと発表した。実際に細胞が増えるところまでは実現していないが、三谷 匡たすく ・近大教授(生殖生物学)は「マンモスのゲノム配列を解析していけば、マンモスの細胞を作り出すことも夢ではない」と語る。

      ◆外来魚駆除

       ゲノム編集で、生態系を乱す外来魚を駆逐する計画を進めるのは、水産研究・教育機構水産技術研究所だ。

       各地で問題化している外来魚ブルーギルのオスの生殖能力に関わる遺伝子を一部壊す。このオスを自然界に放ち、野生のメスと交配すると、その子どものメスが不妊となる。これを繰り返すことで、不妊のメスの割合が徐々に増し、最終的に根絶するという算段だ。

       5~10年以内に野外のため池で実証実験を行うという。岡本裕之・育種基盤グループ長は「ブラックバスなど他の外来魚にも使える技術を確立したい」と話す。

       海外では、ゲノム編集技術でマラリアなどの病気を媒介する蚊を根絶する研究も進んでいる。人間にとって不都合な生物をバイオ技術で駆逐できる時代が近づいているのだ。

      ◆生命の結晶

       一方、バイオ技術を活用して、絶滅が心配されている種の保全につなげる努力も進んでいる。

       自治医科大の本多新教授(発生生物学)らは17年、鹿児島県・奄美大島の固有種で絶滅危惧種のアマミトゲネズミのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、精子や卵子のもとになる細胞を作製したと発表した。iPS細胞は、わなに残っていた尻尾の細胞から作ったという。

       九州大の林克彦教授(生殖生物学)は、同様にiPS細胞を使った絶滅危惧種キタシロサイの繁殖計画を進めている。アフリカに生息するキタシロサイは密猟などで激減し、今はメス2頭しか残っていない。

       近年、人間活動や温暖化に伴い生物の種が激減し、地球の歴史上6度目の生物大量絶滅期が迫っているとされる。生物多様性が失われる恐れが高まっており、国際的な研究者グループは18年、約150万種のゲノム配列を解析する壮大な「地球バイオゲノム計画」を発足させた。

       計画には約10年の期間と、47億ドル(約5300億円)が必要という。グループは「ゲノムデータに基づけば、絶滅危惧種でも、病気に強い個体を繁殖できる可能性がある」と説明する。日本からは理化学研究所などが参画している。

       また、動物の精子や卵子などを、零下196度の液体窒素で保存する「フローズンズー(冷凍動物園)」も各地に登場している。米サンディエゴ動物園には遺伝学者が所属し、絶滅危惧種のゲノム解析にも同時に取り組んでいる。

       本多教授は「遺伝情報は生命の結晶。現代の『ノアの箱舟』を今のうちから整備しておく意義は大きい」と話す。

        ◆生物多様性 =多種多様な生物が共存する状態で、環境の変化に強い生態系につながると考えられている。特に生物種そのものが多いことを「種の多様性」、同じ生物種の中でも個体ごとに遺伝情報の特徴が異なる状態を「遺伝的多様性」と呼ぶ。生息地など物理的な条件を指す「生態系の多様性」の意味を含む場合もある。



       この連載は、大山博之、渡辺洋介、中村直人、松田俊輔が担当しました。
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20211016-OYT8T50081/

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    2. 本多教授「遺伝情報は生命の結晶。現代の『ノアの箱舟』を今のうちから整備しておく意義は大きい」

      本気でやってるなら正気を疑ってかからねばならないなあ…

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    3. 「ゲノム(遺伝子)」連中は、よく言って「手品師」、悪く言えば詐欺師ペテン師のたぐいだな。

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  3. ラットのES細胞から「始原生殖細胞」マウス以外では世界初
    2022年4月8日 5時30分

    ラットの細胞から作った「ES細胞」を使って、正常に機能する精子や卵子のもととなる細胞を作り出すことに成功したと、東京大学などのグループが発表しました。
    マウス以外の動物で成功するのは世界で初めてで、将来的に生殖医療などへの応用につながると注目されています。

    この研究は、東京大学医科学研究所の小林俊寛特任准教授などのグループが科学雑誌の「サイエンス」で発表しました。

    グループでは、マウスよりも生理学的な特徴がヒトに近いとされるラットを使い、このラットのES細胞を液体に浮かべた状態で培養しました。

    そして特殊なたんぱく質を加えたところ、精子や卵子のもととなる「始原生殖細胞」という細胞に変化させることに成功したということです。

    さらに、この細胞を精子を作ることができないようにしたラットに移植したところ、精子が作られるようになり、そこから子どものラットが生まれることなども確認したということです。

    グループによりますと、ES細胞から正しく機能する始原生殖細胞を作り出すことは、これまでマウスでしか実現しておらず、ラットで成功したのは世界で初めてだということです。

    小林特任准教授は「マウス以外の動物で受精する能力のある生殖細胞を作ることに成功したのは大きな意味がある。将来的にはヒトの生殖医療などへの応用につながっていくと考えている」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220408/k10013572131000.html

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    1. >精子を作ることができないようにしたラットに移植

      ニヤニヤと、ES科学風手品とみておけば間違いがない、だまされなくて済む。

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  4. 「慢性疼痛」和らげる働き マウスの免疫細胞で確認 九州大学
    2022年4月12日 5時15分

    帯状ほう疹などの病気やけがで、神経が傷ついたあとに長く続く痛み「慢性疼痛」について、九州大学などのグループがマウスの免疫細胞の一部に、この痛みを和らげる働きがあることをつきとめたと発表しました。

    この研究は、九州大学の津田誠主幹教授らのグループが、科学雑誌の「サイエンス」で発表しました。

    「慢性疼痛」のうち、帯状ほう疹などの病気やけがで神経が傷ついたあとに痛みが続く「神経障害性疼痛」は鎮痛薬が効かないケースもあり、治療が難しいとされています。

    グループでは、マウスは神経が傷ついたままでも痛みが自然に弱まっていくことに注目し、詳しく調べたところ、痛みが和らぐ時期に神経の周りに一部が変化した「ミクログリア細胞」という免疫細胞が増えていることをつきとめました。

    ミクログリア細胞は、これまで痛みの原因の1つと考えられていたということですが、グループでは、この変化した細胞で作られた特殊なたんぱく質に痛みを和らげる働きがあることを確認したということです。

    研究を行った津田主幹教授は、「痛みが和らぐしくみに神経の周りの細胞が関わっていることがわかった。将来的にはモルヒネが効かない痛みにも有効な治療薬の開発につなげたい」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220412/k10013577911000.html

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  5. 乳がんリスクの遺伝子変異 胃がんリスク高める 理研など発見
    2022年4月15日 7時09分

    乳がんなどの発症リスクを高めることで知られる遺伝子の変異があると、胃がんなどのリスクも高くなることが理化学研究所などが行った大規模な解析で分かり、今後、早期の診断や新たな治療法の開発につながると期待されています。

    がんの中には、遺伝子の変異によってなりやすさが決まるものがあり、「BRCA」と呼ばれる遺伝子に特定の変異があると乳がんは10倍以上発症しやすく、卵巣がんや前立腺がん、すい臓がんのリスクも高くなることが知られています。

    理化学研究所の桃沢幸秀チームリーダーらのグループは、国内の「バイオバンク」に保管されている10万人以上の遺伝情報を解析し、変異とがんのリスクとの関連を調べました。

    その結果、「BRCA」遺伝子のうち、「BRCA1」に変異がある人は、変異がない人に比べて、胃がんになるリスクは5.2倍、胆道がんでは17.4倍となったほか、「BRCA2」に変異がある人は、食道がんになるリスクは5.6倍、胆道がんでは4.7倍だったことが分かりました。

    これらのがんは日本など東アジアで患者が多く、初めて「BRCA」遺伝子の変異が関わっていることが分かったということで、早期の診断や治療法の開発につながると期待されるとしています。

    桃沢チームリーダーは「この遺伝子の変異がある場合に効果が示されている治療薬はすでにあり、臨床試験で効果が確認されれば薬の活用も期待できる」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220415/k10013582771000.html

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  6. 新型コロナワクチン開発に貢献 ビオンテックのカリコ博士 来日
    2022年4月15日 6時43分

    新型コロナウイルスワクチンの開発に大きな貢献をしたドイツのバイオ企業、ビオンテックのカタリン・カリコ博士が来日し、14日、NHKの単独インタビューに応じました。
    カリコ博士はウイルスの感染拡大が続く中、今後はさまざまな変異ウイルスに対応できるワクチンが重要になるとして、次世代のワクチン開発を進めていることを明らかにしました。

    カリコ博士は人工的に作り出した遺伝物質、mRNAの医療への応用の道をひらき、ファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの開発に大きな貢献をしたことで世界的に知られる研究者です。

    優れた業績をあげた研究者に贈られる「日本国際賞」の授賞式のため来日していて14日、NHKのインタビューに応じました。

    この中でカリコ博士は、新型コロナウイルスのパンデミックについて、まだ終息の見通しはたっていないという認識を示したうえで「変異ウイルスが出現することでワクチンを接種しても再び感染してしまう。一生にわたって保護されるわけではないということがわかってきた」と述べ、これからはウイルスとどのように共存するかが大切になると指摘しました。
    またそのためには、次々と出現する変異ウイルスに対応できるワクチンの開発が重要になると指摘し「私たちは、さまざまなコロナウイルスに共通する部分を標的にしたワクチンの開発を試みており、いま動物実験を進めている。科学者として実現可能だと信じている」と述べ次世代のワクチン開発を進めていると明らかにしました。

    そして最後に、日本で科学者を目指す若い人たちにエールを送りたいと話し「自分の科学に集中すること。すべての時間を科学に費やし楽しんだとき、人々を助ける何かを作り、貢献することを目標にするべきだと気付く。私は40年間、何の賞ももらわなかったがそれでも幸せだった」と述べました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220415/k10013583001000.html

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    1. 「日本国際賞」受賞のカタリン・カリコ博士ら3人が会見
      2022年4月15日 18時32分

      科学技術の分野で優れた業績を挙げた研究者に贈られる「日本国際賞」の、ことしの受賞者の会見が15日行われ、新型コロナウイルスワクチンの開発に貢献したカタリン・カリコ博士ら3人が出席しました。

      「日本国際賞」は、国際科学技術財団が科学技術の分野で、人類の平和と繁栄に貢献する優れた業績を挙げた研究者に毎年贈っている賞で、13日授賞式が行われたのに続き、15日、ことしの3人の受賞者の会見が開かれました。

      このうち、遺伝物質のメッセンジャーRNAを医療に応用する道を開き、新型コロナワクチンの開発にも大きく貢献したドイツのバイオ企業「ビオンテック」の上級副社長、カタリン・カリコ博士は「もともとはワクチンを作ろうとしていたのではなく、メッセンジャーRNAを医薬品に使いたくて研究を続けてきた。新型コロナウイルスのワクチン開発は利益のためではなく、倫理的な義務感からだった」と話しました。

      また、カリコ博士と共同で研究を行い、ともに受賞したアメリカ、ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授は「現在、さまざまな変異ウイルスに効果のあるワクチンの開発を進めている。数年後には完成しているだろう。未来はとても明るいと考えている」と述べました。
      植物による二酸化炭素の吸収と、気候変動への影響に関する研究で受賞したアメリカ、スタンフォード大学のクリストファー・フィールド教授は「気候変動の対策には、温室効果ガスの排出削減だけでなく、自然の保護も重要だ。日本などの先進国は、国際的なリーダーとして世界の森林保全に協力してほしい」と述べました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220415/k10013584411000.html

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  7. 先人の医科様の上に医科様を積みに積んで、多重多層構造の医科様の上で、たまたまスポットライトを浴びてしまう不運か幸運か…

    やがてその医科様テックは闇に消えるか、それともスキャンダルとしてその名前を歴史にとどめるのか…

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  8. オスのマウス 子育てにホルモン「オキシトシン」が重要な役割
    2022年4月24日 10時30分

    オスのマウスは、子どもが生まれると子育てを始めますが、この際に、脳の中で分泌される「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが重要な役割を果たしていることが理化学研究所などの研究で分かりました。

    この研究は、理化学研究所生命機能科学研究センターの宮道和成チームリーダーなどのグループが海外の科学雑誌で発表しました。

    グループでは、交尾を経験していないオスのマウスは幼いマウスに対して攻撃的な行動をとる一方で、子どもが生まれて父親になると子どもを巣に連れ戻したり、温めたりする子育て行動を始めることに注目し、この際の脳の働きを詳しく調べました。

    その結果、父親になったマウスでは脳の神経回路の一部が変化し「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが多く分泌されるようになることをつきとめたということです。

    さらに父親のマウスで「オキシトシン」の分泌を人工的に抑えたところ子育てをせずに子どもを無視することが多くなり、逆に交尾の経験がないオスのマウスで「オキシトシン」を分泌させると子育て行動をとることも確認されたということです。

    宮道チームリーダーは「オキシトシンがオスのマウスの子育て行動に必要不可欠であることがさまざまな角度から検証できた。ヒトでも同じような仕組みが関連している可能性があると考えている」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220424/k10013596291000.html

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  9. 「“暗黒の細胞死” ハエの腸で発見」理化学研究所が発表
    2022年4月26日 6時26分

    理化学研究所などのグループは、ショウジョウバエの腸で、これまで全く知られていなかった新しいタイプの「細胞死」が起きていることを発見したと発表しました。細胞が黒くなって死んでいくように見えることから「暗黒の細胞死」を意味する「エレボーシス」と名付けたということです。

    これは、理化学研究所生命機能科学研究センターのユ・サガンチームリーダーなどのグループが発表しました。

    グループでは、ショウジョウバエの腸で、一部の細胞に特殊なたんぱく質が現れ、内部から徐々に壊れて死んでいく現象が起こっているのを見つけました。

    これまで動物の腸では細胞がみずから死んでいく「アポトーシス」と呼ばれる仕組みで古い細胞から新しい細胞に入れ代わると考えられていましたが、グループが詳しく調べたところ、ショウジョウバエの腸ではこの「アポトーシス」とは異なる仕組みで細胞が死んでいて、これまで知られていない新しいタイプの細胞死であることが確認されたということです。

    細胞が黒くなって死んでいくように見えることからグループではこの現象を「暗黒の細胞死」を意味する「エレボーシス」と名付けたということです。

    ユ チームリーダーは「今後、研究が進んでショウジョウバエ以外の動物でも『エレボーシス』が確認されれば、これまでの細胞死の概念が広がる可能性がある」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220426/k10013598651000.html

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  10. そういえば、かつて、カッシーナ上田として一世を風靡したやつは、今どこで何をやっているのだろう…
    https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%8A+%E4%B8%8A%E7%94%B0+%E7%90%86%E7%A0%94

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  11. [サイエンス Human]コロナ研究 若手を結集…東京大学医科学研究所教授 佐藤佳さん 40
    2022/05/01 05:00

    社会の不安、疑問に対し迅速に応えるのが我々の使命

    「パンデミックが起きたら、立ち向かうつもりだった」と語る佐藤教授。高校生の頃にあこがれた研究者になった(東京都港区で)=佐藤俊和撮影

    「G2P―Japan」のロゴ(佐藤教授提供)

     次々と姿を変え、人類を危機に陥れるやっかいな「敵」――。新型コロナウイルスに立ち向かうため、仲間たちと手を組むウイルス学者だ。2021年1月、共同研究によって作業の迅速化を目指す日本の若手研究者らのチーム「G2P―Japan」を設立。論文を相次いで発表し、コロナ対策に貢献している。

     ウイルス学、生物学、獣医学……。参加メンバーは多様な専門分野を持つ。新たな変異株が出る度に役割分担し、各国の感染者数のデータからコンピューターで感染力を推定。動物実験で裏付けを取るなどし、論文にまとめ上げる。

     こうした手法を「システムウイルス学」と呼び、目に見えないウイルスの姿をマクロからミクロの世界までいち早く捉えようと努める。「チーム力を結集して研究に取り組むスピードは圧倒的。新たなパンデミック(世界的大流行)が起きてもすぐに対応できる仕組みは整った。社会の不安、疑問に対し迅速に応えるのが我々研究者の使命だ」

    □■■

     1995年制作の米映画「アウトブレイク」は、致死性の高いウイルスが感染爆発を起こした世界が舞台だ。見たのは高校時代。物語の中で研究者は謎を解明し、世界の人々を救うヒーローとして描かれている。当時はヒトゲノムを構成する約30億個の塩基配列を解読する試み「ヒトゲノム計画」も佳境を迎えており、大きなニュースになっていた。「生命科学や遺伝子工学に強く 惹ひ かれ、ウイルスを相手にする研究者にあこがれた」。遺伝子工学で最先端の研究をしていた東北大への進学を決め、研究者になる道を選んだ。

     ウイルス研究に取り組んだのはその後の京都大大学院時代。テーマはエイズウイルス(HIV)だ。変異させたHIVをヒトの免疫細胞を持つマウスに入れ、エイズ発症の仕組みを調べる研究に没頭。研究室のメンバーらとウイルスの世界への理解を深めるうち、「ウイルスは病気を引き起こすイメージが強いが、人に害だけでなく益ももたらす存在なのでは」と考えるようになった。

    ■□■

    東京大への異動前に京都大研究室メンバーと撮った記念写真。担がれているのが本人(2018年3月撮影、佐藤教授提供)

     近年の研究によりヒトや動物の遺伝情報からウイルス由来のものが発見され、ウイルスが生物の進化や多様性に関与してきたことが明らかになりつつあった。「ウイルスはどう生まれ、どう進化し、人間とどう共存していくのか」。好奇心をかき立てられた。

     生態系におけるウイルスの存在意義を解き明かす学問は「ネオウイルス学」と呼ばれる。この分野を開拓するため2018年、東京大准教授に着任した。健常なヒトの場合、少なくとも39種のウイルスが脳や心臓などの臓器に常在し、中でも胃のヘルペスウイルスは消化酵素の合成などの機能に関わっている可能性がある、との研究成果を得た。

     その頃、突如姿を現したのが新型コロナだった。「新型コロナの出現前は人間とウイルスが共存していく牧歌的な未来像を描いていた。しかしひとたび人間の脅威となるウイルスとなれば『敵』となり、克服すべき課題だ。コロナは門外漢だったが、ウイルス学者としては挑戦したかった」

    ■■□

    国際学会に参加した佐藤教授(左)。毎年参加して海外の研究者らと交流を深めていたが、現在はコロナ禍でオンラインになっているという(2014年撮影、佐藤教授提供)

     当初は単独で研究に乗り出したが、新型コロナは変異と流行を繰り返し、研究をさらに発展させる必要性を痛感した。「知恵を結集するしかない」と東海大、熊本大、宮崎大、北海道大などの旧知の仲間や若手研究者に声をかけ、G2P―Japanを設立した。

     チームの目的は新型コロナの性質解明だ。参加メンバーは日頃からネットワークで緊密に連携。通常の共同研究よりも作業が早く、テーマ決めから論文にまとめるまで最短で1か月程度しかかからない。21年6月以降、10本のコロナ関連の論文を発表し、このうち4本は英科学誌ネイチャーに掲載された。

     今年2月に掲載されたオミクロン株に関する論文では「重症化しにくいが、人に感染しやすく進化した」と結論づけた。チームで動物実験や細胞実験、コンピューター解析などを行い、多角的にアプローチした成果だ。

     「新型コロナはウイルス学的にわかっていないに等しく、今後も変異株が出てくる恐れがある。社会の混乱を防ぎ、悲劇を繰り返さないためやることは多い」

     闘いはしばらく続きそうだ。(渡辺洋介)

    研究余録…趣味は論文 ホテルに缶詰め

     「自分の好きなことを仕事にし、人生を楽しもうと思った」。将来を迷っていた高校時代、平日を含め1週間全てを楽しもうと研究者になることを決めた。

     当時から理科の実験や文章を書くのが好きだった。夢をかなえた今、「実験をしたり、論文を書いたりと好きなことを全部できている」。充実した日々を過ごす。

     「趣味は論文執筆」と言い切り、論文をまとめる際は約3日間ホテルなどで缶詰めになって一気に書き上げる。執筆後に5歳の娘と遊ぶのが息抜きだ。後進の育成にも力を入れ始め、ウイルス学者を目指す大学生や大学院生向けのオンライン進学説明会を5月8日に初めて企画している。

      さとう・けい  1982年山形県生まれ。東北大農学部卒。2010年京都大で博士(医学)取得。同大ウイルス研究所助教、講師などを経て18年から東京大准教授。今年4月に同大教授に昇進。21年に「G2P―Japan」を作り、研究を続けている。



     サイエンス・ヒューマンは、科学や技術に関わる人間の魅力に迫ります。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20220430-OYT8T50077/

    https://koibito2.blogspot.com/2022/04/413.html?showComment=1651370325789#c3799220489873981444

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  12. 統合失調症 “原因の1つは自身の抗体が関わっている可能性”
    2022年5月6日 10時29分

    統合失調症を発症する原因の1つとして、自身の抗体が関わっている可能性があることをマウスを使った実験でつきとめたと東京医科歯科大学のグループが発表しました。

    この研究成果は、東京医科歯科大学の塩飽裕紀 助教などのグループが発表しました。

    統合失調症は、幻覚や妄想などの症状が出る病気で、およそ100人に1人が発症するとされます。

    グループでは、統合失調症の患者220人余りを対象に血液などを詳しく調べたところ、およそ5%の患者に脳の神経細胞のシナプスにある「NCAM1」と呼ばれるたんぱく質に対する抗体が見つかり、この抗体が脳の情報伝達を妨げている可能性があることをつきとめました。

    さらに、この抗体をマウスに投与すると脳のシナプスが減少したり、大きな音に過敏に反応したりするなど統合失調症のような症状が出ることを確認したということです。

    グループによりますと、統合失調症の発症にはさまざまな仕組みが関わっているとみられるものの、一部の患者では、この抗体が原因の1つとなっている可能性があるとしています。

    塩飽 助教は「抗体によって統合失調症を発症する可能性はこれまで知られておらず、今後、病態の解明や新たな治療戦略の創出につながると期待している」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220506/k10013613201000.html

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  13. ニホンオオカミ 起源に迫る有力な成果 山梨大などがDNA分析
    2022年5月11日 5時15分

    100年以上前に絶滅したとされるニホンオオカミは、大陸から日本列島に渡った大型のオオカミと、これまで知られていなかったオオカミが交雑して誕生したことがDNAの分析からわかったと山梨大学などの研究グループが発表し、謎の多いニホンオオカミの起源に迫る有力な成果として注目されます。

    ニホンオオカミは、かつて日本列島に広く生息していましたが、100年以上前に絶滅したとされています。

    日本列島には化石などから、ニホンオオカミとは別に2万年以上前に世界最大級の大型のオオカミが生息していたことがわかっていて、ニホンオオカミに進化したとする説もありますが、詳しいことはわかっていませんでした。

    山梨大学や国立科学博物館などの研究グループは、いずれも栃木県で発見されたニホンオオカミの化石と大型のオオカミの化石からDNAを抽出して分析を行うことに成功しました。

    その結果、日本列島には3万5000年前までに大陸から大型のオオカミが渡ってきて、その後、さらに1万4000年前までに再びオオカミが大陸から渡ってきて交雑し、ニホンオオカミが誕生したという結論に達したということです。

    1万4000年前までに再び渡ってきたのは、これまで知られていないオオカミだということで、謎の多いニホンオオカミの起源に迫る有力な成果として注目されます。

    “これまでの仮説を覆す結果”

    山梨大学の瀬川高弘講師は「これまでの仮説を今回、覆す結果となった。ニホンオオカミは2つのオオカミの交雑によって誕生したということと、それらが日本列島で起きたということが明らかになった」と研究の意義を語りました。

    そのうえで、大昔のオオカミのDNAを分析できたことについて「とても古い化石でDNAの量も少ない上、カビや微生物も混ざっていて分析は困難を極めたが、技術の進歩や共同研究者に助けられた。結果が判明した時は『やったぞ』という感じで本当にうれしかったです」と振り返りました。

    今後の展開について瀬川さんは「ニホンオオカミは古くから日本人の信仰の対象にもなっているがまだまだ、わからないことが多い。人間や犬との関わりや誕生から絶滅までの歴史を明らかにするとともに、今回、用いた手法を使って日本列島にかつて生息していたナウマンゾウやオオツノジカなどの進化の歴史も明らかにしていきたい」と抱負を語りました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220511/k10013620171000.html

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  14. “ネコは同居ネコの名前をわかっている” 研究グループが発表
    2022年5月17日 5時43分

    ネコは家庭で一緒に住むネコの名前をわかっていることが実験で示されたと、京都大学などの研究グループが発表し、ネコが人のことばをどの程度学習しているか探った初めての成果だとしています。

    ネコが人のことばを理解しているか探るため、京都大学と麻布大学などの研究グループは、音声でことばを聞かせて画像を見せると、関連性が理解できない時に画像を見つめる時間が長くなるという、人の赤ちゃんで使われる心理学の研究手法を応用して、ネコが別のネコの名前をどの程度わかっているか実験を行いました。

    実験は、3匹以上で飼育されている家庭のネコ19匹を集めて行われ、音声で聞かせた一緒に住むネコの名前とは、別のネコの画像をモニターで見せると、一致する画像の時に比べて見つめる時間が平均で1秒余り長くなり、一緒に住むネコの名前をわかっていることが示されたということです。
    また、同じ方法で飼い主の名前をわかっているか調べたところ、明確な差はでなかったものの、同居する家族の人数が多く、飼育期間も長いほど、飼い主の名前を覚えている傾向がみられたということです。

    麻布大学の高木佐保特別研究員は「自分がネコ好きなこともあり実験を行った。ネコがことばをどの程度、学習しているか探った初めての成果で、ふだんはそっけないそぶりだが、実は注意深くことばを聞いているようだ」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220517/k10013629351000.html

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  15. 国産パイナップルのゲノム解読に初めて成功 品種改良など寄与
    2022年5月31日 12時05分

    国内で開発されたパイナップルとしては初めて、すべてのDNA配列を読み解くことに成功したと、かずさDNA研究所などの研究グループが発表し、今後の品種改良に役立つ成果だとしています。

    ゲノム解読されたのは沖縄県で開発されたパイナップルの品種「ゆがふ」で、果肉の色が白く、葉にとげがないほか、味がおいしいのが特徴で、さらなる品種改良のために利用されています。

    かずさDNA研究所の主任研究員の白澤健太さんや、沖縄県農業研究センターなどの研究グループは「ゆがふ」の染色体50本にある、9億のDNAの塩基配列をすべて読み解くことに成功したということです。

    国内で開発された8品種のパイナップルのうち、ゲノム解読が行われたのは初めてだとしています。
    この解読で果肉の色を白くしている遺伝子や、葉にとげができないようにしている遺伝子を特定することができたということで、長い時間がかかる新品種の開発をより早く進められる可能性があるとしています。

    白澤さんは「生産者の作業性を向上させることや、消費者の好みにあった品種を短い期間で開発できるようになるのではないか」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220531/k10013650871000.html

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  16. 大腸がん再発の仕組み解明 慶応大グループ 治療の開発に期待
    2022年7月17日 5時37分

    抗がん剤の治療を受けたあとで大腸がんが再発する仕組みを解明したと慶応大学の研究グループが発表しました。

    新たながん細胞を生み出す「がん幹細胞」が抗がん剤を受けている間、眠った状態となって攻撃を逃れていたということで、この仕組みをもとに再発を防ぐ治療の開発が進むのではないかと期待されています。

    この研究は、慶応大学の佐藤俊朗教授のグループが科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

    研究グループは、大腸がん患者のがん組織をもとにかたまりとなった「ミニ大腸がん」を人工的に作ってマウスの背中に移植しました。

    そして、がん幹細胞だけが光るようにして観察したところ、抗がん剤を投与しても、一部のがん幹細胞は大腸の表面にある「基底膜」に結び付いて眠った状態となって抗がん剤の攻撃を逃れ死滅しませんでした。

    そして抗がん剤の投与が終わると、がん幹細胞は「基底膜」から離れて再び増殖を始めたということです。

    研究グループはこのときに「YAP」という分子が引き金になっていることも突き止めたということで、この分子を働かなくすることで患者数が最も多い大腸がんの再発を防ぐ治療法の開発につながるのではないかと期待されています。

    佐藤教授は「大腸がん以外も同様の仕組みで再発していると考えられる。薬の開発につなげるために研究を進めたい」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220717/k10013721791000.html

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  17. 新型コロナ 重症化に関わるたんぱく質を研究グループが確認
    2022年8月9日 5時43分

    新型コロナウイルスに感染し、重症になった人では、免疫の制御に関わる遺伝子が作るたんぱく質の量が少なくなっていたとする分析結果を、慶応大学などの研究グループが発表しました。このたんぱく質を活性化する薬剤が見つかれば、新たな治療法になる可能性があるとしています。

    この研究は、慶応大学の福永興壱教授や大阪大学の岡田随象教授らのグループが科学雑誌の「ネイチャー」に発表しました。

    グループは、ゲノムワイド関連解析という手法で新型コロナの感染者などの遺伝子のデータを分析した結果、免疫の制御に関わる「DOCK2」と呼ばれる遺伝子の領域に変異があると重症化のリスクが高いことを確認しました。

    実際に、重症の患者では重症化しなかった患者に比べてこの遺伝子の発現が低下していたことがわかりました。

    また、重症化して亡くなった人の肺の組織を調べたところ、この遺伝子が作るたんぱく質の量が少なかったということです。

    そのうえで、新型コロナに感染したハムスターでこのたんぱく質の働きを抑える実験を行った結果、体重が減少したり、重い肺炎にかかったりして重症化したということです。

    研究グループは、このたんぱく質の働きの低下が重症化に関わっていることが確認できたとしています。

    福永教授は、「このたんぱく質を活性化させる薬剤が、新たな治療薬となる可能性がある」と述べました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220809/k10013760711000.html

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    1. >新型コロナに感染したハムスターでこのたんぱく質の働きを抑える実験

      ずいぶんなアラワザの腕(ゴッドハンド)を有しているらしい…

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  18. クローンマウス、9か月凍結乾燥の体細胞から…絶滅危惧種の「保存」に道
    2022/07/06 00:00

     山梨大の研究チームは、凍結乾燥させたマウスの体細胞を使って同じ遺伝情報を持つクローンマウスを作製することに成功したと、発表した。チームは「絶滅の恐れのある種を救う新たな手段につながる」としており、論文が6日、国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載される。

    凍結乾燥させた体細胞を使って産まれたクローンマウス(山梨大提供)

     チームは、マウスの尻尾などから採取した体細胞を凍結乾燥させ、零下30度で最長9か月間保存した。その後、体細胞から取り出した「核」をもとに、様々な細胞に変化する胚性幹細胞(ES細胞)を作製。ES細胞の核を卵子に移植した。この卵子をメスの体内に移したところ、赤ちゃんマウスが誕生したという。

     チームは、クローンの赤ちゃんマウス計75匹の作製に成功。このうち、メスは妊娠能力も正常で、健康な子どもを産んだ。チームは既に凍結乾燥させたマウスの精子から子どもを作ることに成功している。

     絶滅が心配される動物をめぐっては、卵子や精子を保存する試みが始まっているが、採取条件に制約がある。これに対し、体細胞は、年齢や健康状態に関係なく採取できる。チームの若山照彦・山梨大教授(繁殖生物学)は「体細胞の凍結乾燥で、オスしか残っていない絶滅危惧種からメスを作り出す技術を実現させたい」と話す。

      斎藤通紀・京都大教授(発生生物学)の話 「遺伝情報を従来より容易に保存できる可能性を開く成果だ」
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20220705-OYT1T50214/

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    1. >凍結乾燥させたマウスの体細胞を使って同じ遺伝情報を持つクローンマウスを作製することに成功した

      >チームは既に凍結乾燥させたマウスの精子から子どもを作ることに成功している

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  19. ことしのノーベル生理学・医学賞に「人類の進化」の研究者
    2022年10月3日 20時40分

    ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に、絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、人類の進化に関する研究で大きな貢献をした、ドイツの研究機関の研究者で、沖縄科学技術大学院大学にも在籍するスバンテ・ペーボ博士が選ばれました。

    【ノーベル賞2022 特設サイト】ことしの注目やこれまでの受賞者など 詳しくはこちら
    スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の3日午後6時半すぎ、ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者を発表しました。

    受賞が決まったのは、スウェーデン出身で、ドイツのマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ博士です。ペーボ博士はOIST=沖縄科学技術大学院大学の客員教授も務めています。

    ペーボ博士は絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていた遺伝情報を詳しく調べて、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較しました。その結果、ホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝情報の一部を受け継いでいることを突き止め、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性を明らかにしました。

    さらに、絶滅した人類の遺伝情報は▼標高の高い土地での生存を有利にしたり、▼ウイルスに対する免疫の反応の仕方に影響したりするなど、いまの私たちの体の仕組みをより深く理解するのにつながっています。

    またペーボ博士はそれまで知られていなかった、絶滅した別の系統の人類、「デニソワ人」を発見したほか、「古ゲノム学」という新しい学問分野を切り開くなど、人類の進化の過程を理解する上で大きな貢献を果たしたとしています。
    “ペーボ博士 とても喜んでいた”
    選考委員会の担当者によりますと受賞の知らせはペーボ博士に電話で伝えたということです。

    このときのようすについて「彼は圧倒され、ことばを失いそしてとても喜んでいた。妻に話してもいいかと聞かれたので、私は大丈夫だと答えた」と述べ、博士が受賞について感激していたことを明らかにしました。
    沖縄科学技術大学院大学でも研究
    スバンテ・ペーボ博士は、2020年から沖縄科学技術大学院大学の客員教授を務めています。

    大学によりますと、ペーボ博士は沖縄科学技術大学院大学ではネアンデルタール人やデニソワ人から私たちホモ・サピエンスに受け継がれたDNAや、現代人にしか見られないDNAの機能を解明する研究を行っているということです。

    ペーボ博士は古代人の骨からDNAの断片を抽出して解析する遺伝学的手法を取り入れて世界で初めてネアンデルタール人のゲノム解読に成功したことなど、今の人類の誕生や進化の解明に新たな光を当てたとして、2020年の「日本国際賞」に選ばれ、ことし4月に東京で開かれた授賞式に出席しています。
    新型コロナ重症化リスクと遺伝子の関係も研究
    ペーボ博士は、ネアンデルタール人から受け継がれた遺伝子が、新型コロナウイルスの重症化リスクにも関わっていることを国際的な科学雑誌「ネイチャー」や「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しています。

    沖縄科学技術大学院大学によりますと、ペーボ博士の研究チームは、おととし9月、新型コロナの患者3000人以上を対象に分析した結果、重症化リスクを増加させることが確認された遺伝子が、ネアンデルタール人から引き継がれたもので、この遺伝子を持つ人ではリスクが倍増すると、「ネイチャー」に発表しました。

    また、去年2月には新型コロナに感染して重症化した患者2200人余りの分析で、同じくネアンデルタール人から引き継がれた、別の遺伝子がある人では、逆に重症化が22%抑えられることを明らかにしたと「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しました。

    大学のウェブサイトでペーボ博士は「およそ4万年前に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の私たちに良い意味でも悪い意味でも影響を与えているのは驚くべきことです」とコメントしています。
    親子2代にわたってノーベル賞受賞
    ペーボ博士が所属する研究所を傘下に収めるドイツのマックス・プランク協会は受賞が決まったあとに声明を発表し「彼の研究は現代人の進化の歴史に関するわれわれの理解に革命をもたらした」として功績をたたえています。

    マックス・プランク協会によりますと、ペーボ博士の父親は1982年に同じくノーベル生理学・医学賞を受賞したスネ・ベリストローム氏だということです。

    ノーベル賞の公式ホームページによりますと、これまでに親子2代にわたってノーベル賞を受賞したのは「キュリー夫人」としてその名を知られたマリー・キュリーさん親子など合わせて7組います。
    専門家 “人類の進化 注目の機会に”
    ノーベル生理学・医学賞の受賞者にスバンテ・ペーボ博士が選ばれたことについて、人類の進化の研究が専門で、国立遺伝学研究所の斎藤成也 特任教授は「絶滅してしまったネアンデルタール人の目や肌の色などは骨からではわからないが、ゲノムを調べればいろいろなことがわかる。10万年前、20万年前に私たちとは分かれていったネアンデルタール人のDNAをつかむことができたことがペーボ博士の大きな業績で、非常にロマンを感じる」と話しています。

    また「進化学の分野ではノーベル賞はとれないと言われてきたので、受賞が決まったことは非常にうれしいことだ。新型コロナウイルスのワクチン開発など現実的なことに目が向くことが多いが、人類や生物の進化に注目してもらえるいい機会になるといい」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221003/k10013846801000.html

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    1. ことしのノーベル生理学・医学賞に「人類の進化」の研究者
      2022年10月4日 4時35分

      ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に、絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、人類の進化に関する研究で大きな貢献をした、ドイツの研究機関の研究者で、沖縄科学技術大学院大学にも在籍するスバンテ・ペーボ博士が選ばれました。

      【ノーベル賞2022 特設サイト】ことしの注目やこれまでの受賞者など 詳しくはこちら

      スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の3日午後6時半すぎ、ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者を発表しました。

      受賞が決まったのは、スウェーデン出身で、ドイツのマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ博士です。ペーボ博士はOIST=沖縄科学技術大学院大学の客員教授も務めています。
      ペーボ博士は絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていた遺伝情報を詳しく調べて、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較しました。その結果、ホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝情報の一部を受け継いでいることを突き止め、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性を明らかにしました。

      さらに、絶滅した人類の遺伝情報は▼標高の高い土地での生存を有利にしたり、▼ウイルスに対する免疫の反応の仕方に影響したりするなど、いまの私たちの体の仕組みをより深く理解するのにつながっています。

      またペーボ博士はそれまで知られていなかった、絶滅した別の系統の人類、「デニソワ人」を発見したほか、「古ゲノム学」という新しい学問分野を切り開くなど、人類の進化の過程を理解する上で大きな貢献を果たしたとしています。

      “ペーボ博士 とても喜んでいた”

      選考委員会の担当者によりますと受賞の知らせはペーボ博士に電話で伝えたということです。

      このときのようすについて「彼は圧倒され、ことばを失いそしてとても喜んでいた。妻に話してもいいかと聞かれたので、私は大丈夫だと答えた」と述べ、博士が受賞について感激していたことを明らかにしました。

      ペーボ博士が記者会見「研究を突き動かすのは好奇心」

      ペーボ博士は3日、所属するドイツのマックス・プランク研究所で記者会見し「最初は、同僚による洗練された冗談だと思ったが、説得力がありすぎたので真実だと受け入れた」と喜びを語りました。

      そのうえで「研究を突き動かすのは好奇心だ。過去を知るために考古学的な発掘をするように、私たちはヒトゲノムの発掘を行っているようなものだ」と述べました。

      また、ペーボ博士は、記者から「受賞で何が変わると思うか」と質問されると「何も変わらないことを願う。多くの記者に邪魔されずに静かに研究を続けられるといい」と応じ、会場の笑いを誘っていました。

      沖縄科学技術大学院大学でも研究

      スバンテ・ペーボ博士は、2020年から沖縄科学技術大学院大学(=OIST)の客員教授を務めています。

      大学によりますと、ペーボ博士は沖縄科学技術大学院大学ではネアンデルタール人やデニソワ人から私たちホモ・サピエンスに受け継がれたDNAや、現代人にしか見られないDNAの機能を解明する研究を行っているということです。

      ペーボ博士は古代人の骨からDNAの断片を抽出して解析する遺伝学的手法を取り入れて世界で初めてネアンデルタール人のゲノム解読に成功したことなど、今の人類の誕生や進化の解明に新たな光を当てたとして、2020年の「日本国際賞」に選ばれ、ことし4月に東京で開かれた授賞式に出席しています。

      沖縄科学技術大学院大学のピーター・グルース学長は、3日午後10時すぎ、OISTのホームページでコメントを発表し「教員一同、心よりお祝いを申し上げます。スバンテ氏は今後、OISTでネアンデルタール人とホモ・サピエンスのゲノムの比較解析に取り組むことを希望しており、本学としても大変喜ばしく思っています。この研究を通して何が私たちを人間たらしめるのかという問いに、重要な知見がもたらされることでしょう」としています。

      新型コロナ重症化リスクと遺伝子の関係も研究

      ペーボ博士は、ネアンデルタール人から受け継がれた遺伝子が、新型コロナウイルスの重症化リスクにも関わっていることを国際的な科学雑誌「ネイチャー」や「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しています。

      沖縄科学技術大学院大学によりますと、ペーボ博士の研究チームは、おととし9月、新型コロナの患者3000人以上を対象に分析した結果、重症化リスクを増加させることが確認された遺伝子が、ネアンデルタール人から引き継がれたもので、この遺伝子を持つ人ではリスクが倍増すると、「ネイチャー」に発表しました。

      また、去年2月には新型コロナに感染して重症化した患者2200人余りの分析で、同じくネアンデルタール人から引き継がれた、別の遺伝子がある人では、逆に重症化が22%抑えられることを明らかにしたと「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しました。

      大学のウェブサイトでペーボ博士は「およそ4万年前に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の私たちに良い意味でも悪い意味でも影響を与えているのは驚くべきことです」とコメントしています。

      親子2代にわたってノーベル賞受賞

      ペーボ博士が所属する研究所を傘下に収めるドイツのマックス・プランク協会は受賞が決まったあとに声明を発表し「彼の研究は現代人の進化の歴史に関するわれわれの理解に革命をもたらした」として功績をたたえています。

      マックス・プランク協会によりますと、ペーボ博士の父親は1982年に同じくノーベル生理学・医学賞を受賞したスネ・ベリストローム氏だということです。

      ノーベル賞の公式ホームページによりますと、これまでに親子2代にわたってノーベル賞を受賞したのは「キュリー夫人」としてその名を知られたマリー・キュリーさん親子など合わせて7組います。

      専門家 “人類の進化 注目の機会に”

      ノーベル生理学・医学賞の受賞者にスバンテ・ペーボ博士が選ばれたことについて、人類の進化の研究が専門で、国立遺伝学研究所の斎藤成也 特任教授は「絶滅してしまったネアンデルタール人の目や肌の色などは骨からではわからないが、ゲノムを調べればいろいろなことがわかる。10万年前、20万年前に私たちとは分かれていったネアンデルタール人のDNAをつかむことができたことがペーボ博士の大きな業績で、非常にロマンを感じる」と話しています。

      また「進化学の分野ではノーベル賞はとれないと言われてきたので、受賞が決まったことは非常にうれしいことだ。新型コロナウイルスのワクチン開発など現実的なことに目が向くことが多いが、人類や生物の進化に注目してもらえるいい機会になるといい」と話していました。

      “ノーベル生理学・医学賞 評価の範囲を広げてくれた”

      ペーボ博士と同じ分野の研究をしていて25年以上の知り合いだという国立遺伝学研究所の五條堀孝 名誉教授(70)は「すばらしいことで、本当にうれしく思う。彼の研究は人類の起源を化石や人骨から調べて病気への耐性やかかりやすさを解明したもので、新型コロナウイルスの研究にも寄与した。人類の進化やゲノム学の分野までノーベル生理学・医学賞が評価の範囲を広げてくれたことは、私を含めて同じ分野の研究者を勇気づけてくれた」と喜びをあらわにしました。

      また、ペーボ博士の人柄について「多くの人が無理ではないかと思うようなことにも、挑戦していくタイプで、高い目標を立てて徹底的に取り組む野心のある人だ。多くの研究者の模範となるような人で私も彼の人柄や姿勢をとても尊敬している」と話していました。
      https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221003/k10013846801000.html

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  20. 類まれなお話をつくる能力が評価の対象…

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  21. 社説
    ノーベル賞 基礎研究の立て直しが必要だ
    2022/10/08 05:00

     ノーベル賞の自然科学3賞が発表され、日本人の2年連続受賞はならなかった。近年は、日本の研究力の低下が懸念されている。基礎科学への継続的な支援が必要だ。

     昨年は、地球温暖化を予測する先駆的な研究で、米プリンストン大の真鍋淑郎氏が物理学賞を受賞した。日本は2000年以降、米国籍の真鍋氏らを含む計20人が科学分野で受賞しており、受賞ラッシュの状況になっていた。

     ただし、これは過去の研究成果が今になって評価された結果だ。ノーベル賞では、40歳前後に行った研究が、20~30年後の受賞につながる例が多い。日本人の平均受賞年齢も65歳となっている。

     各国の学者によく引用される論文の数では、日本の地盤沈下が目立っている。今後、若手研究者の層が薄くなれば、ノーベル賞の受賞ペースは鈍る可能性がある。

     科学の進展に伴い、ノーベル賞の選考対象も変化してきた。真鍋氏が受賞した気候科学は、これまで物理学賞の対象と考えられていなかった。今年、古人類研究のスバンテ・ペーボ氏が生理学・医学賞を受賞したのも異例だ。

     新しい研究分野の開拓が盛んになっているが、日本は分野横断的な取り組みが弱いとされる。古い枠組みにとらわれず、挑戦していく姿勢が大切だ。

     世界を見れば、一流の科学者は国籍に関係なく、各国のトップ研究機関を渡り歩く。海外経験が少なく内向きな研究者が多い日本が、世界的な潮流から取り残されてしまわないか心配だ。

     スウェーデン人のペーボ氏はドイツの研究所の所属だが、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の客員教授も務めている。国が設立したOISTについて「時間がかかる研究にも研究資金を長期的に投じている」と評価している。

     しかし、政府は04年の国立大学法人化以降、全体として経営の基盤となる運営費交付金を削減してきた。人件費が減り、不安定な任期付き雇用が増えた結果、若手研究者にしわ寄せがいっている。

     研究環境の悪化を打開するため政府は10兆円規模の大学ファンドを設け、今後、数校に対して支援を始める。「これが復活の最後のチャンスだ」という声は多い。

     ファンドへの応募を目指し、東京工業大と東京医科歯科大が統合に向けた協議を始めるなど、早くも影響が表れている。政府や大学執行部は、資金の有効な使い方を考え、研究力を底上げするための戦略を練ってもらいたい。
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20221008-OYT1T50019/

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    1. 独創性とか新規の先進的な発想力とかというのは、既存の前例踏襲的な「教育」ではどうにもならんだろ。そんなものにカネをいくら注いだところで、新たなものが生まれる可能性はほとんど期待できない。

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  22. ヤンバルクイナ・ライチョウなど絶滅危惧種の鳥類4種のiPS細胞作製に成功
    10/31(月) 20:46配信 読売新聞オンライン

    ヤンバルクイナ(国立環境研究所提供)

     絶滅危惧種のヤンバルクイナとライチョウ、シマフクロウ、ニホンイヌワシの4種の鳥類について、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製することに成功したと、国立環境研究所や岩手大などのチームが発表した。絶滅を防ぐための研究への応用が期待される。論文が専門誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。

    ライチョウ(国立環境研究所提供)

     4種の鳥類の死体や抜け落ちた羽の軸から細胞を取り出し、特殊な遺伝子を加えることで、iPS細胞を作製したという。

    シマフクロウ(国立環境研究所提供)

     iPS細胞は体のあらゆる細胞に変化させることができ、無限に増やせる。種を絶滅させる可能性のある感染症や汚染物質について、希少な動物そのものを使わずに、iPS細胞で影響を評価する実験が可能になる。

    ニホンイヌワシ(国立環境研究所提供)

     同研究所の片山雅史研究員(動物分子生物学)は「生息地域での保護と組み合わせて、種を守るための有用な手法になりうる」と話す。

     自治医科大の本多新教授(幹細胞生物学)の話「研究が盛んなヒトやマウスと比べて、鳥類などのiPS細胞作製は非常に難しいとされる。今回、複数の絶滅危惧種の鳥について作製方法を確立したことは、価値が高い」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/38294b32b362835cd3e74dd786a3e6b591f1587b

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    1. >4種の鳥類の死体や抜け落ちた羽の軸から細胞を取り出し、特殊な遺伝子を加えることで、iPS細胞を作製

      死体から「生きた細胞」を作製できるのかね? 「iPS細胞」ってえのは、まるでリアルゾンビみたいな生き物だな。

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  23. 「老化細胞」をがん免疫療法の手法で除去 マウス実験で成功
    2022年11月12日 5時39分

    年齢を重ねるごとにたまり、体の機能の低下に関わるとされる「老化細胞」をがんの免疫療法と同じ方法で取り除くことに、マウスの実験で成功したと東京大学などの研究グループが発表し、老化に伴う病気の治療の研究につながるのではないかと期待されています。

    研究結果は東京大学医科学研究所の中西真教授らのグループが、科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

    老化細胞は年齢を重ねる中で、分裂しなくなった細胞で、通常は免疫によって取り除かれます。

    ただ、一部は免疫を逃れて蓄積することが知られていて、研究グループはマウスの老化細胞では、免疫の攻撃にブレーキをかける役割を果たす「PD-L1」というたんぱく質が、およそ10%の細胞でみられることを突き止めました。

    そして、年老いたマウスにこのたんぱく質の働きを止める抗体を投与すると、免疫が活性化され、老化細胞がおよそ3分の1に減ったほか、握力が1.5倍程度になるなど、老化に伴う症状の改善も確認できたということです。

    この抗体は、4年前にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授の研究を元に、がん免疫療法の薬「オプジーボ」として実用化されています。

    研究グループは老化に伴う病気の治療の研究にもつながる成果だとしていて、中西教授は「今後、人での効果も調べられるよう検討していきたい」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221112/k10013888761000.html

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  24. 子育て負担受け入れる脳の部位 サルで解明と発表 理化学研究所
    2022年12月3日 9時50分

    サルの一種が生まれたばかりの子どもをおんぶし続けるといった子育てに伴う負担を受け入れられるのは、脳の特定の神経細胞の活性化と関係があるとする研究成果を理化学研究所などのグループが発表しました。ヒトの子育ての理解にもつながる成果だとしています。

    これは、理化学研究所の黒田公美チームリーダーなどの研究グループが生物学の専門誌「コミュニケーション・バイオロジー」で発表しました。

    グループはサルの一種「コモン・マーモセット」を使って、子育てに伴う負担を受け入れるのに必要な脳の部位を特定する実験を行いました。

    その結果、子どもをおんぶしたり、抱いたりして子育てをしているサルでは、脳の「内側視索前野中央部」という部位の特定の神経細胞が活性化していることがわかりました。

    そして、薬でこの部位の機能を抑えると、親は、子どもが鳴いていてもおんぶやだっこを拒むようになり、おんぶなどをする時間も少なくなったということです。

    研究グループは、この部位の神経細胞の活性化が子育てに伴う負担の受け入れに関連していることが明らかになったとしています。

    黒田チームリーダーは「子育ての負担を受け入れるメカニズムの解明につながる成果だ。児童虐待やネグレクトといった行動の科学的な理解が進むことも期待できる」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221203/k10013911651000.html

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    1. 「児童虐待やネグレクトといった行動」は、脳機能障害、いわば「脳(アタマ)の病気」であって、将来的には医学的に治療可能な病気になるとでも言うのかな?

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  25. 世界で2頭「キタシロサイ」 卵子などのもとになる細胞作製成功
    2022年12月10日 4時36分

    世界で2頭しかいないサイのiPS細胞から、卵子や精子のもとになる細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと大阪大学などの研究グループが発表しました。
    グループは新たな子どもを生み出す技術を開発し、種の保存につなげたいとしています。

    アフリカに生息する「キタシロサイ」は野生では絶滅し、飼育された状態のみで生存していて、現在はケニアの自然保護区にいるメスの親子2頭を残すだけです。

    大阪大学などのグループは、マウスのiPS細胞などから卵子や精子の細胞を作る技術をサイに応用するため、培養に適した条件などを検討しました。

    手に入りやすい別の種類のサイの細胞を使って、培養する際に入れる物質の種類や時間などを変えて実験を繰り返したところ、培養の時間を短くすると卵子や精子のもとになる細胞ができることを発見しました。

    グループでは、この方法を使って世界で初めてキタシロサイのiPS細胞から卵子などのもとになる細胞を作り出すことに成功したということです。

    ケニアの自然保護区にはキタシロサイの精子が凍結保存されているということで、グループでは今後、今回作り出した細胞から卵子そのものを作製し、精子と体外受精させたいとしています。

    大阪大学大学院医学系研究科の林将文特任研究員は「新たな子どもを生み出す技術の開発につなげ、ほかの動物への応用も目指したい」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221210/k10013918671000.html

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    1. 世界でメス2頭だけ残る「キタシロサイ」、iPS細胞から繁殖目指す…大阪大チーム
      2022/12/10 23:12

       アフリカでメス2頭だけが残る絶滅危惧種キタシロサイの皮膚からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り、卵子や精子のもとになる細胞に変化させることに成功したと、大阪大などの国際研究チームが発表した。今後、この細胞からできた卵子を、凍結保存した精子と受精させて出産させることを目指す。論文が10日の米科学誌に掲載された。

      世界にメス2頭しかいないとされるキタシロサイ(オルペジェタ自然保護区で)=大阪大提供

       キタシロサイは1960年代にはウガンダやスーダンなどに約2300頭が生息していたが、漢方薬や装飾品として高値で取引される角などを狙った密猟や環境破壊などで激減した。2000年代に野生では絶滅し、ケニアのオルペジェタ自然保護区に母子のメス2頭が残るだけだ。凍結保存した精子はあるが、2頭とも高齢や病気で妊娠や出産は難しいという。

       大阪大の林克彦教授(生殖遺伝学)は、ドイツなどのチームと協力し、iPS細胞を使った繁殖を計画。今回、キタシロサイの皮膚からiPS細胞を作り、卵子や精子のもとになる細胞にすることができた。

       計画では今後5年程度で今回作った細胞を卵子に変化させ、凍結保存した精子と体外受精させて受精卵とする。この受精卵を近縁種のミナミシロサイの子宮に移して出産させる。

       絶滅の恐れがある野生動物からiPS細胞を作る取り組みは各地で行われているが、卵子や精子のもとになる細胞まで作ったのは世界初という。林教授は「ほかの哺乳類にも応用できる可能性があり、絶滅を防ぐ一手にしたい」と話す。

        山県一夫・近畿大教授(発生工学)の話 「今回できた細胞が実際に卵子になるのかや、ミナミシロサイに移した受精卵が成長するのかなどさらに研究を進める必要があるが、iPS細胞で絶滅危惧種を救うアイデアの実現に向けて近づいたといえる」
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20221210-OYT1T50043/

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  26. 体毛作製 マウスで成功…横国大チーム「人への応用には10年」
    2022/12/18 05:00

     マウスの皮膚から取り出した細胞を培養し、体毛を人工的に作り出すことに成功したと横浜国立大の研究チームが発表した。この体毛を含む組織をマウスの皮膚に移植すると定着し、さらに同じ場所で毛が生え替わることも確認したという。毛髪の再生医療につながる成果で、論文が科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。

    試験管内で培養後、マウスに移植して定着した体毛=横浜国立大提供

     チームは、マウスの胎児の皮膚から細胞を採取し、細胞分裂を促す化学物質を加えて培養した。すると、表皮を形成する細胞と、真皮を形成し、細胞同士のつなぎ役となる細胞が増え、体毛を作る細長い筒状の組織「毛包」が高効率でできたという。培養開始から6~10日目には体毛が伸び出し、23日目には長さ約3ミリに成長した。

     また、培養6日目の毛包をマウスの皮膚に移植したところ、3週間後には体毛が伸長した。その後、同じ場所から体毛が生え替わる様子も見られ、少なくとも1年間、生え替わりは継続したという。

     一方、培養途中に色素細胞を活性化させる薬剤を加えて10日間培養すると、伸びた体毛の根元で色素合成に関わる遺伝子が働き、体毛が黒色になったという。

     チームの福田淳二・同大教授(生体材料学)は「細胞の特徴が異なるため、人への応用には、まだ10年必要。将来的には脱毛症などの治療法につなげたい」と話す。

     西村栄美・東京大医科学研究所教授(細胞生物学)の話「人に使えるかはさらなる検証が必要だが、有色の毛を生やす技術が大きく進化した」
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20221217-OYT8T50044/

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  27. 「Muse細胞」大手化学メーカーが治療法の開発中止を発表
    2023年2月14日 20時25分

    体のさまざまな組織の細胞に変化するとされる「Muse細胞」と呼ばれる特殊な細胞を使って心筋梗塞などの治療を目指す治験を進めていた大手化学メーカーが、治療法の開発を中止したと発表しました。この細胞を発見した東北大学などのグループは、別の企業に治験への参加を呼びかけるなどして、実用化を目指したいとしています。

    「Muse細胞」は、東北大学の出澤真理教授らが発見した体のさまざまな組織の細胞に変化する能力があるとされる特殊な細胞で、点滴で投与することで傷ついた組織に集まり、修復する働きがあるとされています。

    「Muse細胞」を心筋梗塞や脳梗塞などの患者に投与する治療法について、大手化学メーカー「三菱ケミカルグループ」の関連会社は2018年から治験を進めてきましたが、会社は14日事業化するのに時間がかかるなどとして開発を中止し、治療法としての承認申請を断念すると発表しました。

    一方で承認申請はしないものの、現在進めている治験については最後まで実施して、データを解析した結果を公表するとしています。

    出澤教授は14日、東京都内で開いた記者会見で、「開発中止を突然知らされとても困惑している。きちんと対応できるパートナーを見つけたい」と述べ、別の企業に治験への参加を呼びかけるなどして、実用化を目指す考えを示しました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230214/k10013980641000.html

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    1. 臓器修復に期待のMuse細胞 開発会社にライセンス解除を求める 細胞を発見した東北大学大学院の出澤真理教授
      2/14(火) 19:02配信 khb東日本放送

       さまざまな細胞に分化し、臓器の修復が期待されているMuse細胞についてです。研究グループの記録と医薬品開発会社が行った治験の報告書の内容がかけ離れているとして、Muse細胞を発見した東北大学大学院の出澤真理教授が開発会社に対し独占ライセンスの契約解除を求めたことを明らかにしました。

       東京都内で開かれた会見では、Muse細胞を発見した東北大学の出澤真理教授や、治験に協力した医師らが出席しました。

       東北大学大学院出澤真理教授「(開発会社が行った治験に対して)複数の医師から会社が出してきた解析データは違うのではないか、あるいは自分たちが担当した患者のデータとかけ離れているのではないか、こういった疑義が持ち上がってまいりました」

       Muse細胞は私たちの体の中に存在する万能細胞で、血中に投与すると体内の損傷部分から出されるSOSシグナルに反応して血管を通じて損傷部位に向かい、たどり着くと損傷部分の細胞に分化し修復することができます。

       研究チームによりますと、心筋梗塞の患者に対しMuse細胞を投与したところ、梗塞のサイズが半分に縮小したということですが、医薬品の開発会社三菱ケミカルグループの報告書では心臓のポンプ機能にほとんど変化は無かったとされていたということです。

       岐阜大学湊口信也名誉教授「これだけ梗塞サイズが小さくなれば、心臓のポンプ力が改善するのが医学的常識でございます。つまり会社の提示してきた心筋シンチと心エコーのデータは矛盾があることになります」

       出澤教授によりますと今後、三菱ケミカルグループとの共同開発は難しいことから1月31日に独占ライセンスの契約解除を求めたということです。

       東北大学大学院出澤真理教授「我々はミューズ細胞を再生治療として、修復治療として患者に少しでも希望を持っていただける、届けたいという気持ちの一心でここにいる。誰しもが開発している。そういう意思が合うところにライセンスを渡してほしい。あるいは私に返してほしい」

       一方、三菱ケミカルグループは14日、事業化までのタイムラインや今後の事業戦略などを検討した結果、ミューズ細胞を用いた製品の開発を中止すると発表しました。
      https://news.yahoo.co.jp/articles/a411f02c2852bf3307d067957419146c150adf11

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    2. まるで「賊喊捉賊」(ぞくかんそくぞく)にしかみえんぞな。

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  28. 科学の研究開発を装った……のようなもの。

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  29. 福岡 NEWS WEB
    大腸がん再発引き起こす がん幹細胞発見 九大研究グループ
    03月08日 08時07分

    九州大学生体防御医学研究所の研究グループが大腸がんの再発を引き起こすがん幹細胞を発見したと、発表しました。
    この幹細胞を取り除く薬を開発することで新たな治療法につながると期待しています。
    大腸がんについては近年、国内でも患者が増加傾向にあります。
    九州大学生体防御医学研究所によりますと、大腸がんは、初期の場合でも病変部の切除を受けた患者の2割近くが再発していて、治療上の課題の1つとなっています。
    研究にあたった中山敬一主幹教授らのグループは大腸がんの細胞を詳しく解析し、がんの増殖や再発の原因となるがん幹細胞が2種類あることを明らかにしました。
    このうちの1種類は増殖が遅い休眠状態にあり、こうした状態にする特定の分子を持っていることがわかったということです。
    研究グループがこの分子を取り除いたマウスに抗がん剤を投与したところ、分子を持つマウスに比べてがんの再発が5分の1以下に抑えられたということです。
    現在、大腸がんの治療は病変部の切除や抗がん剤の投与が主ですが、研究グループは、大腸がんの再発を引き起こしているがん幹細胞を取り除く薬の開発をすることで新たな治療法につながると、期待しています。
    この研究の成果はアメリカの医学誌に、8日、掲載されました。
    https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20230308/5010019493.html

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  30. アルコール分解しにくい人 飲酒で遺伝子変異 一部胃がん関連か
    2023年3月14日 15時29分

    スキルス胃がんなど治療が難しい「びまん型胃がん」について、世界各国およそ1500人の胃がん患者の遺伝情報を解析した結果、アルコールを体内で分解しにくい体質の人が飲酒をすることで起きる遺伝子の変異が、このタイプのがんの発症リスクを高める可能性がわかったと国立がん研究センターなどの研究チームが発表しました。
    飲酒と「びまん型胃がん」の関連が遺伝情報の解析で示されたのは世界で初めてだということです。

    「びまん型胃がん」は胃がん全体の3割を占めますが、スキルス胃がんなど腫瘍が散らばるように広がっていくため、治療が難しいことが知られています。

    国立がん研究センター研究所の柴田龍弘分野長らのグループは、世界各国およそ1500人の胃がん患者を対象に大規模な遺伝情報の解析を行い、胃がんと関連のある遺伝子の変異を探しました。

    その結果、アルコールを体内で分解しにくい体質の人が飲酒をすることで起きる「SBS16」という遺伝子の変異が、びまん型胃がんの発症リスクを高める別の遺伝子の変異と関連していることがわかりました。

    グループは飲酒をすることで起きる遺伝子の変異が発症リスクを高める遺伝子の変異を誘発し、びまん型胃がんにつながる可能性が示されたとしています。

    びまん型胃がんと飲酒との関連が遺伝情報の解析で示されたのは世界で初めてだということで、今後、予防法や新たな治療法の開発につながることが期待されるとしています。

    柴田分野長は「予防に生かすためにはどれくらい飲酒をすると危険なのかなどを明らかにする必要がある。詳しい解析や研究をさらに進めたい」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230314/k10014007821000.html

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  31. ベートーベン、飲酒が命取りに? 肝臓弱く、髪の毛をゲノム解読
    3/23(木) 0:00配信 共同通信

     【ワシントン共同】作曲家ベートーベン(1770~1827年)の髪の毛からゲノム(全遺伝情報)を解読したと、ドイツなどの国際チームが22日、米科学誌カレントバイオロジーに発表した。肝臓病のリスクを高める遺伝子変異やB型肝炎ウイルス感染の形跡を発見。大量飲酒の言い伝えもあり、これらが肝硬変での死亡につながったと推定した。

     ベートーベンは20代から聴力低下や腹痛、下痢に悩まされ、50代に入ると肝臓病の兆候の黄疸も出た。56歳で死去した際、懇意の医師に自分の病状の記録を作ってもらうよう弟たちに頼む遺書が見つかり、後年の伝記作家らは日記や医療記録の精査、遺体の発掘調査などを通じ病気の特定を試みてきた。

     チームはベートーベンの知人らの手に渡っていた毛髪を、近年発展した古代人のDNA分析の手法を応用して解読。肝臓病に関連する変異を見つけた。晩年には「毎日、昼食時にワインを1リットル以上飲んでいた」との証言もあり、同様の体質で大量飲酒した場合のリスクを医療データベースで調べると肝硬変が一般の40倍にもなることが分かった。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/33e678e6ed6568c5e23827a55759719f3c9fcce3

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  32. うつ病の治療法開発に期待、「ストレスへの適応」は脳の特定部位が関与…京大などマウスで確認
    2023/04/07 14:28

     ストレスへの適応に脳内の特定部位の活動が関わっていることをマウスの実験で確かめたと、京都大などの研究チームが発表した。人にも同様の仕組みがあるとみられ、うつ病などの治療法の開発につながる可能性がある。論文が、国際科学誌に掲載された。

     チームの内田周作・京大特定准教授(分子神経科学)らは、生まれつきストレスに強い系統と弱い系統のマウスを十数匹ずつ用意。かみつくなど攻撃性が高く、体格も大きいマウスと同じ飼育箱に1匹ずつ入れ、5日間ストレスを与え続けた。

     その後、攻撃性が高いマウスと再び対面させたところ、ストレスに強いマウスは積極的にコミュニケーションを取ろうとしたが、ストレスに弱いマウスは接触を嫌がり、飼育箱の端にとどまる傾向がみられた。

     ストレスに弱いマウスの脳を調べると、遺伝子の働きを調節する「Fos」と呼ばれるたんぱく質が著しく減り、社会的認知に関わる部位の活動が低下していることがわかった。

     そこで脳のFosを人為的に増やすと、ストレスを受けても社交性が低下しなくなった。一方、元々ストレスに強いマウスも、Fosを減らすとストレスに弱くなった。

     うつ病患者の脳でもFosが減少していることが知られており、内田特定准教授は「ストレスが引き金となるうつ病などの原因解明や治療につながるかもしれない」と話している。

      熊本大の竹林実教授(精神医学)の話 「Fosはマウスと人に共通するたんぱく質で、ストレスとの関係性を明らかにした意義は大きい。ただ、精神疾患は複数の脳内ネットワークが関与することから、脳の他の部位も調べる必要がある」
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20230407-OYT1T50087/

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  33. インフルエンザ重症化抑制に腸内細菌関係か 東京大学など発表
    2023年7月17日 4時36分

    インフルエンザの重症化と腸内細菌の働きの関係について、東京大学などのグループがマウスを使って実験をしたところ、基礎体温が高いほど腸内細菌が活性化し、重症化しにくくなったとする研究結果を発表しました。

    この研究は、東京大学医科学研究所の一戸猛志准教授らのグループが行い、イギリスの科学雑誌に発表しました。

    グループでは、基礎体温の高いマウスはインフルエンザウイルスに感染しても重症化しにくいことに注目し、マウスの血液に含まれる物質を詳しく調べました。

    その結果、基礎体温が通常よりも1度高い38度より高くなるよう飼育したマウスでは、炎症を抑える働きのある「二次胆汁酸」という物質が血液中で大幅に増加していることが分かったということです。

    「二次胆汁酸」は腸内細菌が作り出す物質で、基礎体温が高いマウスでも人工的に腸内細菌の働きを抑えると、感染によって死ぬマウスが増えることも確認できたということです。

    グループでは、新型コロナウイルスなどほかの感染症でも腸内細菌の働きが重症化の抑制につながる可能性があるとしていて、研究を行った一戸准教授は「今回は動物での研究だが、今後、ヒトでも腸内細菌と重症化の関係を解明し、新たな治療法の開発につなげたい」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230717/k10014133091000.html

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  34. 「腸内細菌」ねぇ…

    低俗なネタにしか思えん。

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  35. 4万年の眠りから覚醒 シベリア永久凍土の線虫 再び動き出す
    2023年7月28日 10時05分

    ロシアのシベリアにある永久凍土から掘り出された細長い生物、線虫の一種が、凍った状態からとけたところ再び動き出し、研究チームは休眠状態となる生物としては最長の、4万年以上の間、休眠した状態で生き延びたのではないかと分析しています。

    この研究はロシアやドイツなどの研究チームが27日、アメリカのオンライン科学雑誌「プロス・ジェネティックス」に発表しました。

    研究チームはシベリアの永久凍土から掘り出した細長い生物、線虫の一種を凍った状態からとかして観察したところ、再び動き出しました。

    詳しく調べたところ、この生物はおよそ4万6000年もの間、「クリプトビオシス」と呼ばれる休眠状態だったとみられることがわかったということです。

    低温や乾燥といった厳しい環境になると同じように長期間にわたり休眠する生物としてはクマムシなどが知られていますが、研究チームは、こうした生物の中で最も長い期間、生き延びたのではないかと分析しています。

    研究チームによりますと、動き出した線虫の一種は繁殖を繰り返し、数千匹に増えたということで、DNAの解析から新種だということも判明しました。

    研究チームは「こうした研究は生物がどのようにして厳しい環境に適応してきたかを解明するのに役立つ可能性がある」としています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230728/k10014144961000.html

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  36. 凍った細胞を蘇生させる「手品師」がいて…

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    1. 魚の寄生虫も凍らせても完全には死なないらしい。

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  37. 線虫が静電気使い空中にジャンプ、虫や鳥にくっつき移動か…北大など研究チーム
    2023/07/30 21:12

     北海道大と広島大の研究チームは、体長1ミリほどの線虫が静電気を使って空中に飛び上がり、昆虫に乗る行動をすることを発見したと発表した。線虫は世界中にいるが、どのようにして広まったかは謎とされている。チームの代表で、生物の動きを物理学の視点で研究する佐藤勝彦・北大電子科学研究所准教授は「自然界に生じる静電気を巧みに利用して移動を続け、広がった可能性がある」と話す。

    静電気を使って飛び上がる線虫(1秒間に2万コマの高速度カメラで撮影)=北大・広島大提供

     線虫は土壌や水中に生息しており、種類によっては人間に有害な細菌を食べたり、根に寄生して農作物を弱らせたりする。周囲の環境が汚れると、2か月間餌を食べずに生きられる幼虫に変態し、尻尾で立ち上がれるようになる。幼虫の期間に良好な環境へ移動できるかが、生存にとって重要とされる。

     チームは、幼虫となった線虫がシャーレ内で一瞬で蓋に移動したことに注目。蓋は静電気を帯びており、人為的に静電気を生じさせると線虫が飛び移る様子が確認できた。さらに花びらで体をこすって帯電させたハチを線虫の集団に近づけたところ、約80匹が柱状の束になってハチに飛び移った。跳躍時の速度は秒速1メートルで、普段 這は って移動する時の1000倍に上る。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20230730-OYT1T50144/

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    1.  静電気を使う生物では、クモが嵐の前に空中と地面との間に生じる電圧を利用し、糸を吐き出して飛び上がることが知られている。佐藤准教授は「線虫はより良い環境を求め、静電気を駆使して虫や鳥に乗って移動しているかもしれない」と推測する。

       論文は米科学誌「カレントバイオロジー」に掲載された。

       東北大大学院医工学研究科の石川拓司教授(生体流体力学)の話「研究は、線虫が静電気を巧妙に使って他者にくっつく独特の手法を取ることを示している。ほかにも同様の手法を使う生物がいる可能性があり、興味深い」
      https://www.yomiuri.co.jp/science/20230730-OYT1T50144/2/

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  38. [あすへの考]【情報の洪水】多すぎる論文 誰も読み切れず…国立遺伝学研究所教授 有田正規氏 51
    2023/09/03 05:00

    国立遺伝学研究所の図書室には、印刷物で購入していた時代の学術誌がずらりと並ぶ。「今は電子化が進み、論文を載せる紙面の制約は減った。でも、人が読める量には制約がある。紙面を考慮して専門家が厳選していた知識には重みがある」と語る(静岡県三島市で)=鈴木竜三撮影

     科学研究の成果は、専門家同士などの審査を経た「論文」という形で学術誌に発表される。研究者らは論文を読んで最新成果を知り、それを踏まえて新たな発見を目指す。長年、科学の基盤を成してきたシステムだ。論文数を成果の量と考え、日本の伸び悩みを懸念する声も聞かれる。

     一方で、このシステムは世界の研究活動の拡大に伴って肥大化し、巨額の公費を吸い込み続けている面がある。学術出版の歴史に詳しい国立遺伝学研究所の有田正規教授(生命情報学)は「論文はもはや多すぎる。大事な情報を研究者らが効率的に共有できるよう、別の形での成果発表も考えるべきだ」と説く。論文出版というシステムの限界と、これに日本がどう向き合うべきかを聞いた。(編集委員 増満浩志)

    作成や出版に多大な手間と費用。見合った価値得られてない

    ありた・まさのり 東京都生まれ。東京大理学部卒。博士(理学)。産業技術総合研究所研究員、東大准教授などを経て、2013年から現職。理化学研究所環境資源科学研究センターにも所属。生命現象をコンピューターで解析する研究に取り組む。著書に「学術出版の来た道」など

     世界で生産される論文は増え続け、多くなりすぎました。研究者らは自分の分野の論文さえ、著名誌以外はとても読み切れない。論文の洪水の中から、重要な情報を選び取るのは大変なことです。論文の作成や出版には多大な手間と費用がかかりますが、それに見合った価値を社会が得られているとは思えません。

     なぜ、こんな事態に至ったのか、まず学術出版の歴史をひもといて考えましょう。

     世界初の学術誌は、フランスで1665年1月に発刊された「ジュルナル・デ・サヴァン」です。ロンドン王立協会(英国)の月刊誌も2か月後に始まります。それまでは学者同士の書簡によっていた学術情報の通信が、成果を誌上で公開し、多数の学者が共有できる形へ発展したわけです。

     17~18世紀の欧州諸国では、学者の団体「アカデミー」が多数設立されました。ロンドン王立協会もその一つです。1960年頃までの学術誌は、こうしたアカデミーや学会による出版が主流で、寄付や学会費などの収入でまかなえる規模に収まっていました。

     ところが第2次世界大戦後、西側諸国が科学技術に国費をつぎ込む時代となり、商業出版社による学術誌が発展しました。論文を出すことは研究者の評価につながるので、発表の受け皿となる新たな学術誌が、研究者らの要望に応えて次々と発刊される。それを研究者が「必要だ」と言えば、大学の図書館が購入する。安定した顧客に支えられ、拡大に歯止めがかからなくなりました。

     購読料の増大に耐えられず購読を縮小する大学図書館も世界で相次ぎましたが、今度はインターネットで無料閲覧できる「オープンアクセス」(OA)の論文が増えています。この場合は論文を投稿した研究者が「掲載料」を払います。購読料にせよ掲載料にせよ、そこに各国から多額の公費が流れ込んで出版経費をまかなうから、論文は増大し続けられる。誰も読み切れない数になっても、です。

     今はまず、論文の出版にどれくらいお金がかかるのかという実態を、研究者一人ひとりや国民に正しく知ってもらいたい。「研究者が知らないの?」と思われるかもしれませんが、商業誌はもともと購読料でまかなう形が主流で、その価格は出版社と大学の個別交渉で決まり、公表されないことが多い。長年見えにくかったのです。

     最近増えてきたOAの場合、研究者が払う掲載料は学術誌によって相当違いますが、数十万円の例が多く、有名なネイチャー誌は1万1690ドル(約170万円)です。論文1本を載せるための料金ですよ。「高すぎない?」と思うのが常識的な感覚でしょう。

     この料金には論文自体の校正や編集だけでなく、論文への注目を集めるための解説記事などの費用も総合的に反映されているとみられます。優秀なスタッフを雇うのにも高い人件費がかかる。論文や学術誌の注目度などを示す指標が作り出され、それを研究の評価に偏重する風潮が根付いてしまったので、学術誌の評判を上げるためにお金をかける構造があります。

     大手の学術出版社は寡占状態で利益率が高いことが批判されていますが、たとえ利益率を減らしても、購読料や掲載料が劇的に下がるとは思えません。

    研究評価のやり方見直す必要。科学や人類への恩恵重視へ

     世の中と距離を置いてやる基礎研究の世界で成立し、発展したのが、元来の学術出版でした。いつ役に立つかは分からないが重要だと信じる成果を、しっかり残すための仕組みといえる。それが科学の本流のように見えて、いわば格好良いので、現実社会に関係しやすい内容の科学・技術まで、何でもかんでも同じ形式で出版し始めてしまった面があります。

     各研究コミュニティーの中で、世の中に広く伝える価値が本当にあるのは何なのかを考え、学術論文という形で残すものを絞り込むべきだと思います。「残す」というよりもっと速く流れていく情報は、それぞれの国や業界の中で情報交換するとか、単にインターネット上で公開するなど、別の手段もありえます。整理した数値データが、文章より大きな価値を持つことも少なくないでしょう。

     今は「年に1本ぐらい書かないとサボっているように見られる」みたいな理由で、ノルマとして書く論文が多い。国の制度としても、研究プロジェクトの評価で国際誌への掲載数が加味され、たくさん書くことが奨励される。この状況では、私だって率先して論文を減らすことはできません。

     研究評価のやり方を見直す必要があります。個人やグループの業績として論文を求めているシステムを、科学全体や人類への恩恵を重視するシステムへ、いかに変えていくかが問われます。

     日本は最近、論文数の順位が下がっていることが問題になっていますが、島国らしい発想に思えます。欧州は国境をまたいだ研究者の流動が多く、国ごとに比べる意味があまりない。米国も政策として論文を増やすなんてことはしない。世界と論文数で競うなんて、メリットが考えられません。

     今年、先進7か国(G7)科学技術相会合で「オープンサイエンス」が主題の一つになりました。先端科学の知識や活動を専門家の世界にとどめず、多くの市民に開放していくという考え方です。

     これを進めるには、科学者が自分の研究を市民に分かりやすく伝えたり、中高生に教えたりする作業を、もっと評価しないといけない。高校の授業の中へ、どんどん研究者が入っていってよいと思う。英語で論文を書けば評価されるけど、それを日本語で発表しても大して評価されない今の仕組みは間違っている。社会の側からも「こんなにお金をかけて、大半の日本人に分からない文章しか書かないなんて、何のための研究ですか?」と、声を上げてほしい。

     大学の図書館に一般の人がもっと気軽に入れるようにする施策も重要だと思います。そうすれば、日本語の情報を増やそうということに自然となるでしょう。研究者ばかりが利用して購読誌を決めていると、そこに商業出版社が付け込む隙も生まれます。

     オープンサイエンスの中核は人材の育成です。先端科学にかかわる人々のすそ野を広げることで、優秀な研究人材を獲得していこうという明確な戦略を、欧米諸国は描いています。広げる対象は、まずは各地域内であり、さらに欧州はアフリカ、米国は中南米が主眼です。日本も人口が減り、研究人材が先細るのは間違いないのですから、国内とアジアを見据えてしっかり取り組まねばなりません。

     アジアへの発信に力を入れる必要があります。日本語の論文を各国語へ自動翻訳するといった仕組みを作るのも一案です。翻訳しやすい、論旨の明快な日本語で書く技術も重要でしょう。西洋で作り出されてきた学術出版の仕組みに適応するだけでなく、日本の発展に必要な情報発信の仕組みを自ら考え、作り出すべき時です。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20230902-OYT1T50163/

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  39. [サイエンス Human]研究とは、データを解釈し、新たなストーリーを作るようなもの…東京医科歯科大教授 武部貴則さん 36
    2023/09/10 05:00

    複数臓器 同時作製し脚光

     再生医学で成果を上げ、31歳で横浜市立大教授に就任。現在、東京医科歯科大や大阪大、米シンシナティ小児病院など日米5拠点でチームを率いる。間違いなく、生命科学分野で最も注目されている研究者の一人だ。

    「新しい現象を発見し、役に立つ技術につなげたい」と多彩な研究を進める武部貴則さん(東京都文京区の東京医科歯科大で)=後藤嘉信撮影

     2011年に研究者になって間もなく、様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた立体的な「ミニ肝臓」を作製した。以来、肝臓など複数の臓器を同時につくる技術で世界をリードする。

     華々しい成果の数々は、実験データに 真摯しんし に向き合う姿勢がもとにある。「一番の恐怖」は、当初の想定と外れたデータが出た際、失敗だったと捨ててしまうこと、と断言する。「研究とは、データを解釈し、新たなストーリーを作るようなもの」と、柔らかい口調で語る。

    □■■

     小学3年生の時、父親が脳卒中で倒れた。入院したが詳しい病状は知らされず、病院へ行った母親はその後数か月間帰らなかった。半年ほど後、病院を訪れ、面会謝絶の札のかかった病室のわずかな隙間から見えた父親は、やせこけてひげが伸び放題だった。

     死の淵をさまよったが、幸い1年ほどで社会復帰できた。この体験をきっかけに、「命を救うすごい人」である医師にあこがれた。

     横浜市立大医学部進学後、目指したのは外科医。特に、死に面した重い病状でも臓器移植で見事に回復する患者の姿を見て移植医を志し、米コロンビア大の移植外科の研修を受けた。

     一方、大学2年後半から再生医学の第一人者である谷口英樹教授(現・東京大教授)の下で研究を始めた。医学部卒業時、研究か臨床か進路に迷ったが、「自分の頭を100%研究に使えるのは今。臨床を始めたら研究に触れることはないかも」と、研究の道に飛び込んだ。

    ■□■

     ただ、研究は3年間の挑戦と決めていた。「誰も考えたことのないことに時間を使おう」と研究室の中心テーマから外れた実験を進めた。11年初夏、肝臓などの3種類の細胞を培養すると、自然に立体構造を作り始めることに気づいた。実は誤って別の実験のプレートを使っていた。失敗だったが、「狙い通りの結果からは、本当に新しい現象は見つからない。こういう変なものこそ面白い」と様々な実験条件を試し、ミニ肝臓の作製方法を突き止めた。

     喜び勇んで英科学誌ネイチャーに論文を投稿したが、無名の投稿者に論文の審査者は容赦なかった。膨大な補足資料を求められ、多くの追加実験が必要となった。「論文5本分の研究を一度にこなす」事態。危機に陥ったが、谷口教授の差配で自分より年上の研究室メンバー10人ほどが加わり、わずか1年ほどでネイチャーに論文を載せた。

    人間のiPS細胞から作製した、肝臓と胆管、膵臓の組み合わさったミニ多臓器。肝臓を赤、胆管を赤と水色、膵臓を黄、腸を緑に着色している=武部さん提供

     細胞を立体的に培養して人の臓器や組織の機能を再現したミニ臓器は「オルガノイド」と呼ばれ、現在、世界中で活発に研究が進む。19年には肝臓と胆管、 膵臓すいぞう がつながった状態で作製する技術も開発。体外で臓器を作り、難病患者を治療する次世代の移植医療の実現に向けて歩み続ける。

    ■■□

     最先端研究にいそしむ一方、医療技術の実用化などを手がける6社以上の起業にも関わった。中には、呼吸器の患者に腸から酸素を送り込む「腸呼吸」の新興企業もある。

     さらには、デザインの力を借りて無理なく健康を実現する「ストリート・メディカル」にも取り組む。階段に鮮やかな絵を描いた「上りたくなる階段」や運動すると色が変わる「動き出したくなる服」をデザインし、運動を促す試みだ。

     多彩な活動は、物理学やIT、デザイナーなど異分野のプロとの偶然の出会いがもとになった。「異分野交流が新たな成果につながることは多い」。強い好奇心と、人と人をつなぐ力が新たな道を切り開く原動力となっている。(服部牧夫)

    研究余録…異分野交流の場 提供

    武部さんがセンター長を務める横浜市立大コミュニケーション・デザイン・センターが考案した「上りたくなる階段」。2015年2月に京浜急行線・金沢八景駅(横浜市)に一時的に設置された=同センター提供

     優れた研究者を発掘し、創造性の高い研究に打ち込める環境づくりにも力を注ぐ。2021年12月には、一般社団法人「ステラ・サイエンス・ファウンデーション(SS―F)」を設立し、代表理事を務めている。

     日米両国で研究する中、日本の研究者は自ら研究成果の実用化まで期待され、苦しむ姿をたくさん目にした。一方、米国では仲間とつながったり支援を受けたりする機会が自然にあると感じた。

     SS―Fでは、異分野の研究者や投資家、産業界の人が交流し、対話を重ねる場を提供する。今年4月には支援第1号研究者として、東北大助教の佐々木晴香さんを選んだ。SS―Fに参画するトップ科学者がアドバイスをしたり、専門家が論文執筆などを支援したりする。「将来は、この取り組みを発展させて新しい研究組織のあり方を創出したい」と意欲を燃やす。

      たけべ・たかのり  1986年、横浜市生まれ。2011年横浜市立大医学部卒業。同大助手、准教授、教授を経て19年から特別教授。17年から米シンシナティ小児病院オルガノイドセンター副センター長、18年から東京医科歯科大教授、23年から大阪大教授を務める。専門分野は再生医学、幹細胞生物学、移植外科学、コミュニケーションデザイン学。著書に「治療では遅すぎる。」(日本経済新聞出版)。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20230909-OYT8T50046/

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  40. ベンチャラ・サイエンスで世渡りするエロい人…

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    1. 「臓器移植」ナンチャッテ医療のうらおもてを、あるいはその闇を、外科医としてしっかり見て、何かを思い知らされてしまったのではないのかな。

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  41. 世界初 クローン羊「ドリー」 誕生させたイギリスの博士死去
    2023年9月12日 15時59分

    世界で初めてクローンの羊「ドリー」を誕生させたことで知られる、イギリスの発生学などの研究者、イアン・ウィルムット博士が亡くなりました。79歳でした。

    ウィルムット博士は、発生学や再生医療の研究者で、1996年、羊の体細胞から世界で初めてクローンの羊「ドリー」を誕生させました。

    当時「ドリー」の誕生は、難病の治療などへの応用が期待される一方で、クローン人間の開発にもつながるのではないかとして倫理的な問題性も指摘され、大きな反響を呼びました。

    ウィルムット博士は、その後も同じクローン技術を活用してヒトの難病治療の研究を続けていましたが、京都大学で山中伸弥教授のグループが進めていたiPS細胞の研究のほうが将来性があり倫理的にも社会に受け入れられやすいとして、2007年、その研究を断念しました。

    ウィルムット博士がかつて教授を務めていたエディンバラ大学は11日、博士が79歳で亡くなったと発表しました。

    死因や亡くなった日時は明らかにされていませんが、大学によりますと、博士は5年前、パーキンソン病と診断されていたということです。

    イギリスの公共放送BBCは「振り返ればドリーの誕生は多くの人が期待し、または恐れたほど大きな変化をもたらすものではなかった。しかし、ドリーはウィルムット博士とそのチームのすばらしい業績で医療研究に革命をもたらした」と伝えています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230912/k10014192951000.html

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  42. “宇宙でマウス受精卵の育成に成功”山梨大学などの研究チーム
    2023年10月28日 7時47分

    ほぼ無重力の国際宇宙ステーションで行った実験で、マウスの受精卵を正常に育てることに世界で初めて成功したと山梨大学などの研究チームが発表しました。

    この実験は山梨大学の若山照彦教授とJAXA=宇宙航空研究開発機構などのチームが行いました。

    研究チームはおととし8月、国際宇宙ステーションへの補給物資を運ぶロケットで凍結したマウスの受精卵を打ち上げ、宇宙飛行士が4日間培養して受精卵が細胞分裂して胎盤の細胞と胎児の細胞に分かれる「胚盤胞」に育つかどうか調べました。

    その結果、ほぼ無重力の環境で育てた受精卵72個のうち17個、23.6%が胚盤胞まで育ったということです。

    一方、地球上と同じ重力を人工的に発生させた環境では、61個のうち19個、31.1%が胚盤胞に育ったということで、研究チームは今回の実験では重力の有無による影響はほぼ無かったと評価しています。

    また、ほぼ無重力の環境で育てた胚盤胞と、地上や、人工的に重力を発生させた環境で育てた胚盤胞ではDNAや遺伝子などの状態に差はなかったということです。

    哺乳類の受精卵をほぼ無重力の宇宙の環境で正常に育てることに成功したのは世界で初めてだということです。

    研究チームによりますと、過去に地上で無重力環境を再現して行った実験では、受精卵が成長しても胎盤ができにくくなり出産率も低下したことから、若山教授は「重力の有無は受精卵の成長に影響すると考えていたが、宇宙での実験結果では、ほぼ差が無く予想外の結果だった。今後、宇宙で育てた胚盤胞をマウスに移植し、出産にどう影響するかなどさらに検証を進める」と話しています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231028/k10014240101000.html

    https://koibito2.blogspot.com/2019/08/150.html?showComment=1698456654551#c8401890589763796582

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    1. >凍結したマウスの受精卵

      卵とはいえども本当に生きた細胞が凍結に耐えられるだろうか?

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  43. あなたの知らない研究グレーの世界
    榎木英介 編著 / 田中智之 編著
    http://chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=4362

    >健全な研究活動とQRP、不正は地続きである?!
    >研究不正の事件が起きるたびに多くの方がこう思うはずです.「とんでもない極悪人がいた」と.はたしてそれは真実でしょうか? 本書では「研究不正ではないけれども好ましくない行為(研究グレー)」に焦点を当てています.「自分が犯罪なんか起こすはずがない」と思っていても,研究グレーの心配がまったくない方はどのくらいいるでしょうか.研究不正につながっている研究グレーを犯す(または巻き込まれる)可能性は誰にでもあります.本書で紹介されている多くの研究グレーの事例を知ることは,その可能性を大きく減らし,適正な研究行為を見つめ直すきっかけになるはずです.

    https://koibito2.blogspot.com/2013/09/blog-post_1948.html?showComment=1698457649789#c2542771533313107908

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  44. [サイエンス Report]縄文直系の子孫 いない…ゲノム解析プロジェクト
    2023/11/26 05:00

    弥生人 驚きの遺伝的多様性

    「古代のDNAを精度良く解読できるようになり、進化を探る有力な手段になった」と語る篠田館長(東京・上野の国立科学博物館で)

     縄文人や弥生人のことは小学校でも習う。私たちの祖先として、親しみを感じる人もいるかもしれない。しかし、彼らがどんな人たちだったのか、実はまだよくわかっていない。今年3月末まで5年間にわたった国の大型プロジェクト「ヤポネシアゲノム」で、国立科学博物館の篠田謙一館長は、遺伝情報(ゲノム)から縄文や弥生の人々に迫った。篠田さんが研究の過程で感じた「三つの驚き」を通して、新たに浮かび上がった彼らの姿を見てみよう。(編集委員 三井誠)

    かけ離れた存在

     約1万6000年前から、弥生時代が始まる約3000年前まで続いたとされる縄文時代。この時代に日本列島に生きていたのが、縄文人だ。「彫りの深い顔立ち」が特徴とされる。

     プロジェクトでは69体の縄文人のゲノムを解読した。ゲノムの特徴から近縁関係を分析すると、縄文人は、中国など北東アジアから東南アジアにかけての大陸の現代人とは、かけ離れた存在であることがわかった。北海道・礼文島北部の 船泊ふなどまり 遺跡(縄文後期)で見つかった約3800年前の縄文人のゲノムを、アジア各地の約50集団と比較しても、近縁な集団はなかった。

     「東南アジアなど、どこかに縄文人の子孫がいると考えていたが、ゲノム研究で完全に否定された。縄文人はもう現代には生き残っていない。予想外の結果だった」と篠田さんは驚く。

     現代で最も縄文人に近い人々は、ゲノムの約7割を引き継いでいるアイヌ民族とみられている。

     最初に日本列島へ人間が来たのは、石器などの証拠から約4万年前とされる。その後も、大陸から複数のルートで人々が来て、縄文人になったと考えられている。そして、彼らの直系の子孫は現代には、もういないのだ。縄文人のような狩猟採集民が、人口の増加スピードが速い農耕民の影響で姿を消してしまった例はヨーロッパなどでもわかってきているという。

    異なる集団共存

     次に弥生人を見ていこう。九州北部で稲作が始まったとされる約3000年前から古墳時代(3~7世紀)が始まるまでの弥生時代に住んでいた人たちだ。縄文時代から引き続き住んでいた人たちや、大陸から稲作文化を持ち込んだ渡来人たちがいた。

     彼らのゲノムを分析して浮かび上がったのが、現代の本州などの日本人をしのぐ、驚くべき多様性だ。篠田さんは「現代よりもはるかに少ない人口だった弥生時代だが、遺伝的に由来の異なる集団が共存し、混血のなかで多様性が生まれたのだろう」と分析する。

     個別の遺跡の研究も興味深い。鳥取市の 青谷上寺地あおやかみじち 遺跡で見つかった約1850年前の13体のゲノムを分析したところ、現代の本州などの日本人に匹敵する多様性がわかった。「この遺跡は、各地から人がやってきて多様な人が暮らす古代都市のようだったのかもしれない」と篠田さんは指摘する。

    単純ではなかった

     現代の日本人は、縄文人と、弥生時代に渡来してきた人が混血し、生まれたと考えられてきた。「二重構造説」と呼ばれる仮説で、渡来人の影響が強い本州などに比べ、北海道のアイヌ民族と沖縄の人たちは比較的、縄文の要素を残すとされる。ヤポネシアゲノムの代表を務めた国立遺伝学研究所の斎藤成也・特任教授は「今回の研究でも、二重構造説がほぼ正しいことが確認できた」と話す。

     一方、二重構造が出来る過程は、「従来よりも複雑だったようだ」と篠田さんは話す。韓国・ 釜山プサン 郊外の ●項ジャンハン 遺跡から出土した約6000年前の人骨2体のゲノムを分析した結果、現代の大陸の人たちよりも縄文系のゲノムを持っていた。そのような人たちが、弥生時代の少し前の朝鮮半島に住んでいた可能性がある。(●は「けものへん」に「章」)

     77体の弥生人を分析した結果でも、現代の大陸に近いゲノムは確認できず、いずれも縄文系のゲノムを持っていた。「弥生時代の渡来人は、現代の大陸の人たちに近いとの説もあったが、そうではないようだ。想定よりも縄文系のゲノムを持っていた可能性が高い」と篠田さんは指摘する。

     もともと縄文系のゲノムを持った渡来人が、当時の日本列島にいた縄文系の人たちと混血したのであれば、現代日本人はより多くの縄文系のゲノムを持つはずだ。篠田さんは「古墳時代に大陸から縄文系のゲノムを持たない人たちが来て、現代日本人につながっているのではないか」と話す。

     そうした仮説の検証には、古墳時代の人たちや、弥生時代と同時期以降の朝鮮半島の人たちのゲノム解析などが必要だという。

     「プロジェクトを始める前は、5年でおおむねの結論に近づけるかと思ったが、そんなに単純ではなかった」。篠田さんは、最後にそう三つ目の驚きを語った。

    ヤポネシアゲノム ヤポネシアはラテン語で日本列島を意味する造語。50人を超える研究者が参加した研究プロジェクトでは、現代人に加え、縄文人ら日本列島の古代人たちのゲノムも解析。遺伝情報の微妙な違いから、近縁関係を調べた。そのほか、考古学や方言解析などから日本人の起源に迫った。
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20231125-OYT8T50045/

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  45. 「起源」論てやつは、検証確認のしようがないのだから、どこまでいっても「仮説」の域を出ない。しょせんは「お話」づくりの寓話でしかない。

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  46. 老化を遅らせる作用を発見、たんぱく質と亜鉛が結合で…京都産業大・永田和宏名誉教授ら
    2024/02/09 18:55

     細胞内にある特殊なたんぱく質と亜鉛が結合すると老化を遅らせる作用を持つことを、線虫を使った実験で突き止めたと、京都産業大の永田和宏・名誉教授らのチームが発表した。老化に伴うアルツハイマー病などの予防研究につながる可能性がある。論文が8日、科学誌「セル・リポーツ」に掲載された。

    京都産業大の永田和宏名誉教授

     このたんぱく質は、細胞の中で様々なたんぱく質を作り出す小胞体という小器官にのみ存在する「ERp18」で、機能は不明だった。

     チームは、ERp18が亜鉛と結合しやすい構造をしていることに着目。実際に結合させたところ、老化を引き起こす活性酸素を分解することがわかった。長さ約1ミリの線虫の体内でERp18を働かせなくすると、細胞の老化が進み、人に換算すると11・4歳寿命が短くなった。

     アルツハイマー病や動脈硬化、心不全、腎障害などは活性酸素の増加が一因とされ、線虫の実験で示された老化への影響は、人にもつながると考えられる。

     チームの 潮田亮うしおだりょう 准教授は「小胞体の中は元々亜鉛が少なく、食事で亜鉛を取るだけでは効果がない。小胞体の中の亜鉛を増やしてERp18と反応させることができれば、病気の予防や治療に役立つのではないか」と話す。

     永田名誉教授は、宮中歌会始の選者を務める歌人としても知られる。

      本橋ほづみ・東北大教授(生化学)の話 「活性酸素は細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアに多いが、小胞体が活性酸素の増減に関わっていることを示唆する結果で、興味深い。幅広い生物の健康や老化と関わっている可能性がある」
    https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240209-OYT1T50148/

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    1. 歌人で京産大名誉教授の永田和宏さんら、老化遅らせる作用発見
      2024/02/19 11:30

      機能不明だったたんぱく質、亜鉛と結合で

       細胞の中で亜鉛と結びつき、老化を遅らせる作用を持つたんぱく質を発見したと、京都産業大の永田和宏・名誉教授らのチームが発表した。アルツハイマー病など、老化に伴う様々な病気の治療や予防の研究につながる可能性がある。論文が科学誌「セル・リポーツ」に掲載された。

       このたんぱく質は、細胞内で様々なたんぱく質を作り出す小胞体という小器官だけにある「ERp18」。人を含む多くの生物に存在するが機能は不明だった。

       チームは、ERp18が亜鉛と結合しやすい構造をしていることに着目した。実際に結合させると、細胞を老化させてアルツハイマー病や動脈硬化、腎障害などの一因となる活性酸素を分解することがわかった。

       長さ約1ミリの線虫の体内でERp18を働かせなくすると、細胞の老化が進み、人に換算すると11.4歳、寿命が短くなった。

       ただ、食事で亜鉛を取るだけでは老化を抑える効果は乏しいという。チームの 潮田亮うしおだりょう 准教授は「小胞体の中の亜鉛を増やす方法がわかれば、病気の予防や治療に役立つのでは」と話す。

       永田名誉教授は、宮中歌会始の選者を務める歌人としても知られる。

       本橋ほづみ・東北大教授(生化学)の話「活性酸素は細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアに多いが、小胞体も活性酸素の増減に関わっていることを示唆する結果で、興味深い。幅広い生物の健康や老化と関わっている可能性がある」
      https://www.yomiuri.co.jp/local/hashtag-kyoto/20240219-OYO1T50010/

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  47. “精神疾患と関連の遺伝子 脳神経細胞の発達に影響”研究発表
    2024年2月11日 6時11分

    さまざまな精神疾患などに関連しているとされ、これまで詳しい働きが分かっていなかった遺伝子が脳の神経細胞の発達に影響を与える仕組みをマウスを使った実験でつきとめたと国立精神・神経医療研究センターなどのグループが発表しました。

    この研究は、国立精神・神経医療研究センターの星野幹雄部長などのグループが国際的な科学雑誌に発表しました。

    グループでは、ダウン症との関連や統合失調症などの精神疾患との関連が指摘され、これまで詳しい働きが分かっていなかった「DSCAM」という遺伝子に注目し、この遺伝子を人工的に働かなくさせたマウスにどのような影響が出るかを調べました。

    その結果、遺伝子が働かないマウスでは、小脳の神経細胞で、シナプスから放出された余分な神経伝達物質が効率よく吸収されず、過剰に残ってしまうことでシナプスの発達が妨げられていることが分かったということです。

    グループによりますと、この遺伝子は特殊なたんぱく質に働きかけて神経伝達物質の吸収を促す働きをしていたということで、研究を行った星野部長は「この遺伝子の機能が失われれば、結果的に神経の機能に悪影響が起きることがわかった。今後さらに研究を進め、人に適用できるような治療法の開発につなげていきたい」と話していました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240211/k10014354781000.html

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    1. 「疾患」の根本原因は「遺伝子」というステロタイプな思い込みを一旦身に着けてしまうと、それから脱することはなかなかできないらしい。

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  48. 脳に機器埋め込んだ患者“考えるだけでマウス操作を”マスク氏
    2024年2月21日 9時22分

    アメリカの起業家、イーロン・マスク氏は、自身のベンチャー企業が開発した小型の機器を脳に埋め込んだ患者が、考えるだけでマウスを動かせるようになったと明らかにしました。

    マスク氏は1月、自身が立ち上げたベンチャー企業「ニューラリンク」が開発した小型の機器を、患者の脳に埋め込んでコンピューターに直接つなぐ臨床試験を開始したと発表していました。

    これについてマスク氏は19日、オンラインのイベントで、患者は回復しているとした上で「考えるだけでマウスを動かせるようになった」と明らかにしました。

    そして「現在はできるだけ多くのボタンを押すことに挑戦している」と話していました。

    この発表について、アメリカの一部のメディアは、映像など客観的に事実を示すものがなく、学術論文などの形で第三者の確認も行われていないと指摘しています。

    脳とコンピューターを直接、つなぐ技術をめぐっては体の不自由な人が、考えるだけでコンピューターを操作できることを目指し、大学や企業で研究が進められています。

    アメリカではほかにも医療ベンチャーが、脳内の血管にワイヤーを通して信号を読み取る装置の臨床試験を行い、1年にわたって問題なく意思疎通ができたとする結果を、去年、学術論文で公表していて、技術の開発に関心が高まっています。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240221/k10014365811000.html

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  49. PTSD発症メカニズムを解明、治療薬に道筋…東大などチームが関係遺伝子を特定
    2024/03/03 21:16

     つらい体験を突然思い出すなどの症状がある「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」に関係する遺伝子を特定し、発症メカニズムを解明したと東京大などの研究チームが発表した。新たな診断方法や治療薬の開発につながる可能性がある。成果が科学誌モレキュラー・サイカイアトリーに掲載された。

     PTSDは精神疾患の一つで、事故や災害などのつらい体験を繰り返し思い出したり、精神的苦痛を抱いたりする。

     喜田聡・東大教授(神経科学)らのチームは、PTSD患者などの血液を解析し、遺伝子「PDE4B」の働きが弱まっていることを見いだした。この遺伝子の働きが弱まると、記憶などに関わる脳の回路が過剰に活性化し、PTSDにつながるとみられる。マウス実験で人為的にこの回路を活性化すると、PTSDの重症度が増すこともわかった。

     一方、この回路は開発中の慢性 疼とう 痛治療薬で不活性化することもわかり、治療法につながる可能性があるという。

      富山大の井ノ口馨・卓越教授(脳神経科学)の話 「PTSDの原因となる特定の部位をターゲットとした治療法の確立に、かなり近づいたと言えるだろう」
    https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240303-OYT1T50050/

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    1. PTSD関連遺伝子特定、PTSD発症メカニズム解明…

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  50. 気管支ぜんそくの診断、血中の分泌物質検査で高精度に…阪大などのチームが実用化目指す
    2024/04/08 13:30

     血液に含まれる分泌物質内の「ガレクチン10」と呼ばれるたんぱく質が気管支ぜんそくの診断や進行の予測に活用できることを確認したと、大阪大などのチームが発表した。従来の診断方法より精度が高まるといい、数年後の実用化を目指すとしている。論文が国際医学誌に掲載された。

     気管支ぜんそくは空気の通り道である気管支が慢性的に炎症を繰り返すことで狭くなり、呼吸困難などの発作が生じる病気。世界保健機関(WHO)などによると、世界の患者数は2億6200万人、国内では推定で1000万人とされる。血中の白血球の一部「好酸球」の量などで診断しているが、肺の機能が低下する「慢性 閉塞へいそく 性肺疾患(COPD)」との区別が難しいなどの課題があった。

     阪大の武田吉人准教授らは、採血で得る血液中の分泌物質「エクソソーム(細胞外小胞)」が体内の情報を伝達している役割に着目。エクソソームを解析し、含まれる約3000種類のたんぱく質とぜんそくとの関連を調べた。

     その結果、炎症などに関わるたんぱく質のガレクチン10の量が増えると、ぜんそくの傾向が強いことを確認。診断の精度を調べると好酸球の73%に対して80%に高まったという。

     気管支ぜんそくに詳しい佐野博幸・近畿大教授の話「重要な研究だ。ガレクチン10の量に応じて適切な薬が選べるようになれば、治療の効率化につながる」
    https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240408-OYT1T50070/

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  51. 花びら散る 「オートファジー」で…奈良先端大など ホルモン関与の仕組み解明
    2024/04/11 15:00

     花びらが散る仕組みを明らかにしたと、奈良先端科学技術大学院大(奈良県)などのチームが発表した。大隅良典・東京工業大栄誉教授が発見し2016年にノーベル賞を受賞した「オートファジー(自食作用)」という現象が関わっており、花が長持ちする品種の開発につながる可能性がある。論文が科学誌に掲載された。

     山口 暢俊のぶとし ・奈良先端大准教授らはシロイヌナズナという植物で、咲いてから時間がたつと、花びらの根元に植物ホルモンの一種「ジャスモン酸」が蓄積するのを確認。そこで、遺伝子の働き方を解析し、開花から散るまでの変化を調べた。

     その結果、花が咲く頃からジャスモン酸が盛んに作られ始め、一定量を超えると細胞内の不要物を分解するオートファジーが働き、古い細胞が一掃されると判明。花の根元でこの現象を起こさせると花びらが散った。

     この仕組みは桜をはじめ多くの被子植物に共通すると考えられ、遺伝子制御で散るまでの時間を操れる可能性があるという。

     平野博之・東京大名誉教授(植物発生遺伝学)の話「植物の一生を探る重要な成果で、今後の園芸や農業にも生かせるだろう。オートファジーに着目した点も独創的で、生命現象への理解も深まる」
    https://www.yomiuri.co.jp/science/20240411-OYT1T50107/

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